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暗闇ヲ駆ケル花嫁  作者: 喜多見一哉
話之序 〈暗闇ノ世界 (クラヤミノセカイ)〉
1/35

side:Girl 其の壱

 ここはどこだろう。

目の前に広がるのは、漆黒の闇。

足下も何かふわふわしていて、まるで空中に浮かんでいる感じ。

 あたしは、どうしてここに?

上手く考えがまとまらない。頭の中に、(もや)がかかったかのよう。

目を閉じてゆっくりと、今日あったことを思い出そうとしてみる。

 たしか、朝に自宅から学校へ向かって、親友と他愛もないことを喋って、まるっと1日大っ嫌いな勉強をして、そして部活--陸上部で軽いランニングと100メートルダッシュを10本ほどこなし、夕方5時頃には学校を出た…。

 ここまでは、何とか思い出せる。

 だけど、その後は?

いつものように、最寄りの駅に向かって、モノレールに乗った?

いつものように、途中の中央通り駅で降りて、親友とウィンドゥショッピングを楽しんだ?

いつものように、親友と別れた後、徒歩でのんびりと帰宅した?

 わからない。

 そもそも、本当にここは一体どこなんだろう。

 見渡す限り、闇が続いている空間なんて、超常現象(オカルト)もいいところだ。夜であっても、街中では近代科学よろしく、ネオンや街灯、車のライトが光っていて、その全てが消える事なんてない。大気汚染によって夜空の星などは、既に見えなくなって久しいけれど、必ず何かしらの光源がある。例え街全てが停電でも、月明かりによってビルなどのシルエットは目視できるものだ。

 それに、なんだろう、この孤独感。

 あたしは、街中か、自宅の中にいる…んだと思う。街ならば、夜中だろうと雑踏がひしめき合ってるだろうし、自宅であるならば、優しい両親と姉がいる。

 でも、今、この空間には、あたししかいないように感じてならない。

 背筋が凍るような感覚がして、あたしはぶるっと身震いをした。

 …超常現象(オカルト)の世界この上ない。

 あたしは、オカルトは大嫌い…というか、信用していない。

 近代、科学が無闇やたらと発達して、ぶっちゃけるならば、幽霊やポルターガイストなどの現象も、科学力で(怪しいけれど)解明できるほどになっている。大霊界?極楽浄土や地獄?そんなのはクソくらえ。今やこの国の神社やお寺なども廃れてきていて、世界は科学一色になりつつあるのに。

 でも、今あたしのいるこの場所は…。

 

 ゆっくりと足を踏み出そうとしてみるけれど、重くて、まるで自分の足じゃないみたい。足首に、鉄の輪でもはまっているような感触。腕も同様。手を大きく上に挙げてみるけれど、スローモーションになったかのようにしか動かない。

 それでも、頑張って一歩、また一歩と歩みを進める。

 声を出してみるが、口からは何も出てこない。重度の花粉症のように、喉の奥がイガイガしていて、不快。

 気がつくと、背中にびっしょりと冷や汗をかいている。

 流れ落ちる汗が、どうにも止まらない。

 あたしの奥の何か得体の知れないものが、けたたましく警鐘を鳴らしている。

…ココハキケンダ。

…ハヤクニゲナケレバ。

 気持ちだけはどんどんと逸るのに、身体がついていかない。

 これが夢であるならば、ベッドから飛び起きて、安堵の一息を漏らして終わるのに。

でも、夢から故意に覚めるのって、どうやるんだろう。

 頭の中が、あたしの思考が、ぐるぐると回り始める。

…ココハドコ?

…マックラデ、キミガワルイ

…コレハユメ?

…コワイ、ユメ。

…アタシハナニヲシテイルノ?

…カラダガ、ジユウニウゴカナイ。

…ハヤクニゲナケレバ。

…ドコニ、ニゲルノ?

…ドコカニハヤク。

…ココデハナイドコカヘ。

…ハヤク…ハヤク…ハヤク……。


 そのとき、急にあたしは"何か"に躓いて膝から転がった(ように感じた)。なんとか腕を前に出して手をつく。

 掌に、何かぬるりとしたものがまとわりついた。

 ゆっくりと、自分の掌に視線を下ろす。

 なぜかくっきりと鮮明に、自分の掌が見える。周りは、漆黒の闇のみなのに、どうして?

 

 

 そこにあったのは、真っ赤な液体に染まった……。



 鉄臭い、血に染まった、あたしの掌だった……。


 

初めまして、喜多見一哉と申します。

仕事の合間を縫って、のんびりと執筆していきますので、よろしくお願い致します。

神仏伝承については、自分の持てるすべての知識と、書物等からの引用で記載していきますが、書物それぞれにより翻訳や名称違い等の細部の相違がありますので、もし大きく伝承話からはずれた引用がございましたら、是非ともご指摘をお願い致します。

末永く、お付き合いできたらいいと思っております。

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