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prologue:博士の愛した人形

「零号、壱号。此方へおいで。」


(シャガ)れた声を発する(ヌシ)は、私達の製造者。


点滴やら何やらが大量に付いた腕を上げ、手招きをした。

皺の沢山ある顔は、健康だった頃の彼の面影すらない。



「私はもう直に死ぬだろう。それは医者によって科学的に証明されているし、私も薄々感じてきている。」



歳を取ろうが、死にかけようが良く滑るその饒舌さに圧巻である。


「零号、壱号。私はこの世の科学の発展に大いに献上した。それは心を持たぬお前達でも、その出来すぎた人工知能で分かることだろう?」



確かにこの老いぼれは‘自立式二足歩行型機械人形’。通称、機械人形(KILLING DOLL)の開発を独自で行い、それを世に知らしめた人物だ。


人の脳と同じ機能を持ち、忘れることを知らない人工知能。

人を優に上回る科学的に向上された身体能力。


その様なものを開発したこの老いぼれは人間にとって、かなりの偉人なのだろう。



しかし、機械人形(KILLING DOLL)のその実態は、生きた人間を意図的に脳死させた状態で行われる改造手術の成功例でしかない。



「私が死ねば、お前たちは何としてでも壊されるだろう。只でさえ危険な人形の、しかもお前たちは試作品(プロトタイプ)。そして、唯一の成功例で、失敗作。」



私達、試作品零号、壱号は他の機械人形と違い、壊れなかった人形だ。


どんなに扱き使われようと、どんなに凄惨な戦場に駆り出されようと、私達は特に酷い壊れようもなく、終わらしてきた。


それは、ある程度で壊れる機械としての本質を凌駕していた。


だから、老いぼれは成功例で、失敗作。と言うのだ。



「私とて、鬼ではない。だから、お前たちには異世界というものにいってもらう。」



ガシャ

そう言って、博士は私達に銃口を2つ向けた。


バンッ

その気になれば避けられたのかもしれない。だけど、私も壱号も避けようとしなかった。


私達は手を繋ぎ、そして目を瞑った。



嗚呼、私達は又、彼の研究に使われるのか。

嗚呼、これが彼の最期の我が儘なのか。



悲しいという感情は分からない。

だけど、これが悲しいなのかもしれないと、人工知能の奥底でバチッと思った。






目を瞑る前の博士は、泣いて、そして笑っていた。


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