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最終幕 帰還直後の間もない昇天

「シネ七」のラストです。くどくて長くてごめんなさい。読み終えましたら、評価の方、宜しくお願いします。m(_ _)m


 ユニフォーム姿の風画にパスが回った。

 赤く燃える火球を手中に収め、風画は力強く大地を蹴って虚空に躍り出た。

「おりゃあ!」

 風画は熱く燃える火球をリングに叩き込んだ。 ファイヤーダンクは見事に成功した。

「すげえ……」

 進矢は言葉を失う。

 試合は後半へと突入した。

 状況は二四対二二で風画チームがリードしている。

 後半戦にも派手なプレーのシーンをちょくちょく混ぜつつ、着実にラストへと向かっていった。

 試合は第四コーターを迎えた。

 第三コーターでは一進一退の攻防が繰り広げられ、状況は四五対四二だった。

 そして、後半残り三分四二秒。

「来た。俺の出番だ。ながかった」

 客席の進矢が口を開いた。直後、周りのお客さんからの冷たい視線。

「んもう、ばかばっかり」

 美奈は片手をおでこにつけて、大きくうなだれた。

 ボコッ。

 ホールに嫌な音が響く。

 進矢の放ったダンクシュートが、相手選手の脳天を仕留めたのだ。

「てめえこの野郎」

 相手チームのプレーヤーが進矢に殴りかかった。

 それを皮切りに他の選手が乱闘を始め、控えの選手も参戦し、観客も加わり(よく見ると、プレーヤー役の人)、審判やオフィシャルが暴れ出し、遂には監督までもが出陣し、何故か野球部の生徒も混じる。

 体育館中に響き渡る怒号と叫喚。

 画面はちょくちょく切り替わり、国会での与党と野党の乱闘、甲子園球場での阪神と巨人の乱闘、佐々木健介対大仁田厚、、神風特攻隊が米軍の戦艦に突っ込む記録フィルムの一部、シベリアの平原での狼の狩りの様子等の映像がローテーションで映し出された。

 乱闘のシーンでも、風画のこだわりは炸裂していた。

 誰かが投げたボールは体育館の壁を突き破り、キック一発で数メートルは吹っ飛ぶ。

 乱闘乱闘また乱闘。極めつけと言わんばかりに、スペインの牛追い祭りの映像も映し出される。

 乱闘は激しさを増し、武器を持つ者まで現れる始末。

 そして、何故か体育館が爆発する。

 紅蓮の炎が体育館を吹き飛ばし、爆発の残火が瓦礫の山で炎々と燃える。

 場面は切り替わり、スクリーンには小高い丘が映し出される。

 その丘のてっぺんで対峙する二人の人物。

 焼け焦げたユニフォーム姿の風画と、曲曲しい戦闘服姿の槍牙だ。

 無言で睨み合う二人の間に流れる沈黙を最初に破ったのは槍牙だった。

「言葉など要らん。来るが良い」

 槍牙がそう言った直後、風画は雄叫びを上げて走り出した。

 二人の距離がある程度近づくと、激しい格闘が始まった。

 風画が殴り、槍牙が避ける。

 槍牙が蹴り、風画がかわす。

 互いが相手の隙を突き、その一撃によって生じた隙に抉るような追撃を加える。

 両者の実力は全くの互角。それ故に、一瞬の駆け引きが鍵を握る。

 壮絶な拳の応酬にピリオドを打ったのは、風画の一撃だった。

 風画の拳を急所に受けた槍牙は、その場で膝から崩れ落ちうずくまる。

「まさか、これ程までの漢に成るとはな……。見事なり、それでこそ我が息子!」

 衝撃のカミングアウトに風画は驚きを隠せず、目を見開いたまま口籠もる。

「俺の……オヤジ……」

 風画がなんとか言葉を紡ぐと、槍牙が口を開いた。

「そうだ。貴様は我が息子。我を越える漢だ」

「アンタを越える……?」

 風画は戸惑いを隠せずにいた。

「そうだ。あの試合は、貴様を試す為のもの。我を越えられる漢たるやを試す為のもの」

 槍牙は直立し微動だにしない。

「そして、貴様の強さは立証された。貴様は我を越えた」

 槍牙はくるりと振り返り、風画に背を向けた。

「去らばだ。我が親愛なる息子、風画よ」

 槍牙はそう言って、崖に身を投げた。

「!?」

 風画は急いで崖に駆け寄る。

 崖の下は大波のうねる入江(合成)で、救出は不可能に等しかった。

 絶壁の真下の入江に見入り、風画は泣き崩れた。

 風画は顔を上げ、夕日に向かって声を引き絞った。

「オヤジィィィィ!!」

 夕日が風画の影を長く引き伸ばし、画面がフェードアウトする。

 画面が真っ白になり、『完』の一文字。

 スタッフロールの最後に『監督 羽村直哉』と表示され、映画は終わった。

「まあ、素人にしてはなかなかの出来だったかな?」

 進矢は適当な拍手を送った。

 美奈は投げやりな進矢の態度に憤慨しそうだったが、他の観客が進矢と同じような拍手を送ってるのと、奇妙な疲労感に苛まれたので、人一倍大きな拍手を送るだけにした。

            

 ロビーに戻ると、風画と槍牙が死人の様に倒れていた。

 周囲には散々暴れ回った跡。

「もう。本当にばかなんだから」

 美奈は悪態をつきながらも、風画と槍牙を起こした。

「ほら、行くよ」

 美奈がそう言って振り向くと、目の前に大磯の姿があった。

「あれ、大磯先生?」

 風画がそう言うと、大磯は無言で風画に歩み寄り、直後、熱い抱擁をした。

「白狼! 俺は感動したぞ! くう!」

 大磯に抱きつかれた風画は、その余りにも強い圧力に昏倒し意識を失った。

 大磯は次に槍牙に抱きついた。

「うおおお! 感動したぞおお!」

 大磯に抱きつかれた槍牙は、奇妙な薄ら笑いと涙を同時に出した。

「槍クン。どこか痛いの?」

 美奈は槍牙を気遣い、声を掛ける。

「へぇ〜、槍牙ってそっちの気があったのか」

 進矢は槍牙を冷やかした。

「ははは。別にどこも痛くない。眠気で何も感じない位だ。俺が泣いているのは、やっと楽になれるという事にだ。笑いもそのせいだ。俺は決して同性愛者では……ない……」

 槍牙はそう言った直後、何かの使命を果たした様な顔をし、深く長い眠りについた。

 ドサッ。

「キャー。二人とも、しっかりして」

 慌てふためく美奈を横目に、進矢は119番をプッシュした。

「あー、もしもし。救急車二台、大至急。場所? ああ駅前の映画館っす。状態? うーん、極度の疲労と睡眠不足と外部性ショックですかね。死にかけなんで急いでね」


 かくして、風画達の波乱に満ちた七日間は幕を閉じた。

最後まで読んでくれてありがとう(^o^)/ 本当は七話で完結するつもりだったんだけど、思い付きで書いてたから上手くいかず、11話までいってしまいました。長い割には適当な内容でごめんなさいm(_ _)m あと、評価の方宜しくお願いします。

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