~Sleeping Princess...~7
続きです。
このまま階段を下へ降りていけば、私だとは相手にわからないだろう。
でもそうしたらノートが取りにいけない。
考えている間にも、教室の中からこちらへ近づいてくる音は止まらない。
ごめん、みゆきっ。
声に出さずみゆきに力強く謝ると、私はその場から走って逃げた。
その途中、勢いのあまり階段から落ちそうになったり、手すりに手をぶつけてしまった。
とは言っても、その痛みに気付いたのはわたしが学校の外に出てからのことだ。
そして今までの行動を思い返し、ドアを開けた時点で誰かがいたことに気付かれていただろうと、わたしは気がついた。
そう思った途端、廊下に隠れて安心していた自分が、ちょっと馬鹿に思えてしまった。
その日の夜。
家に帰っても、夕ご飯を食べた後も、わたしはずっと学校で見てしまったことばかりを考えていた。
「くまちぃー」
むんずと、くまのぬいぐるみの頭を掴んで抱き寄せる。
これは、わたしだけの誰にも言えない秘密。
自分でも気付かないうちに、悩みがあるときはぬいぐるみを抱きながらというクセがあった。
理由はわからないけれど、抱いていればそれだけで落ち着くからだと思う。
「・・・・・・」
教室にいたのは違う人、だった・・・・・・よね。
むぎゅ。
「んー」
いや、でも教室がそうだから優一かも。
むぎゅ。
ダメだ。
頭からはなれない。
なんで優一のことが、こんなに気になるんだろう。
別にあいつとは特別な関係じゃないっていうのに。
「はぁ」
一体、わたしはどうしたいの。
むぎゅ。
むぎゅぅ。
見れば腕の中には、ヘビに締め付けられたかの如く無残な姿のぬいぐるみが一体。
茶色のプリティーなくまが無残な形へと変形していた。
皮肉なカンジに笑った口元と、つぶらな瞳がミスマッチでお世辞にも可愛くないのがチャームポイントのぬいぐるみ。
ただその見た目も今となっては見てるだけで、
「――ああっ、もう!」
くまちの所為じゃないけど、余計にイライラしてきた。
どうしてわたしがこれだけ悩まなきゃいけないの! ただ教室にノートを取りに行っただけなのに、中ではあんなコトしているし。




