~Sleeping Princess...~3
続きです。
などと考えている内に少しずつだが、眠気は消えかけていた。
「んんー」
ぐぐっと曲がっていた背中をまっすぐに伸ばす。
もうこうなったら、起きていよう。
それでみゆきを驚かせるのも面白そうだ。
七月二日の月曜日。
窓の外は青く澄んだ広い空で、白い絵の具を落としたような雲がいくつも浮いている。
吹き付ける風は気持ちよくて、わたしの前髪をさらさら揺らす。
今日の放課後も変わりなく、習慣化しつつあるやり取りだった。
わたしが寝ていて、授業内容をとっていない教科のノートをみゆきから借りる。
そう、結局のところ、起きていられたのは午前中だけだったのだ。
「いつもゴメンね」
えへへ、なんて笑いながらわたしは今日の分を受け取った。
「そんな。佳奈なんだからしょうがないって」
「ちょ、ちょっとどう意味よ!」
「そのままの意味だけど」
「なっ」
返す言葉が見つからず、口をぱくぱくさせてしまう。
こうして何度もしたやり取りだが、いつもみゆきに口では勝てない。
文句をたったひとこと言うだけで、反撃のしようが無い完璧な攻撃が来る。
何度か負かしてやろうと反抗を考えたこともあるけれど、いざという時に用意した言葉を忘れてしまうのだ。
傍から見た人いわく、まるで大人と子供の口喧嘩だとか。
まあ、その通りなんだけど。
みゆきが大人っぽいのは見た目通りだし、中身もそうだと思う。
ふわふわした栗色の髪に大人びた振る舞い。
言葉使いもちゃんとしている。
だけど、わたしが子供だというのには納得がいかない。
彼女と比べれば見劣るだろうが、負けずに見た目も中身も伴って大人っぽくなったはず。
「ちゃんと写してよね。やってないは無しだから」
「わかってるって」
彼女との付き合いは、入学したての頃に初めて会ったのだから一年ちょっと、だろうか。
すでに長年の友人のように、私のことは全部見透かされている感じがする。
最初の出会いはというと、こんなにも大人びた子がいるんだという興味からだった。
でも見た目とは反対に、話しかけてみれば意外にかわいいところが有るのだ。
もうそこからは興味が大きくなっていって、友達になろうと毎日話しかけたのを覚えている。
自分でもさすがに邪魔過ぎた気がするけれど。
「頑張りなさいよ」
それじゃあね、と手を振ってみゆきは教室から出て行った。
「よし、部活がんばろうっと」
わたしは退屈な時間がようやく終わったとばかりに荷物を手に取って、意気揚々と待ち遠しかったテニス部へ向かった。




