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追放された無能農家、魔物と“理の農業”を始めたら世界の流通を支配してしまった件  作者: 慈架太子


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9話 村との対立

9話:村はもう、味方じゃない


 ――翌日。


「……なんか、多くないっすか」


 俺は、牧場の入口を見て呟いた。


 人がいる。


 昨日より、明らかに多い。


 商人、冒険者、旅人。


 そして――


「……村の連中も来てるな」


 マルタが目を細める。


 見覚えのある顔。


 俺を「役立たず」と呼んでいたやつら。


「……来たか」


 胸の奥が、少しだけざわつく。


「どうする?」


「……普通に対応するっす」


 逃げる理由はない。


 俺は、前に出た。


「どうぞ、順番に――」


「ペーター!」


 声を遮られる。


 振り向く。


 そこにいたのは――


 村長だった。


 その後ろに、数人の村人。


 全員、険しい顔をしている。


「……どうしたんすか」


「どうした、じゃない」


 低い声だった。


「お前、何をしている」


 その一言で、空気が変わる。


 周囲の客たちも、様子を伺っている。


「……牧場っすけど」


「とぼけるな!」


 怒鳴り声。


「魔物を飼っていると聞いた!」


「はい」


「危険だ!」


 即座に否定される。


「村の近くでそんなことをするな!」


 ……ああ。


 そう来るか。


「危険じゃないっすよ」


「何を根拠に言う!」


「見ての通りっす」


 周囲を見る。


 魔物たちは、落ち着いて作業している。


 争いも、暴走もない。


「統制されてるっす」


「そんなもの、いつ崩れるかわからん!」


 村人の一人が叫ぶ。


「昨日だって、盗賊が来たんだろう!?」


 ざわめきが広がる。


「……すぐ追い返したっす」


「だから危険だと言っている!」


 論点がずれている。


 いや――


 ずらしている。


「それに――」


 別の男が、前に出る。


 見覚えがある。


 昔、よく畑で一緒だったやつだ。


「……儲けてるらしいな」


 その目にあるのは――


 嫉妬。


「金貨だってな」


 空気が、少しだけ冷える。


「……商売してるんで」


「村を通さずにか?」


 村長が言う。


「この土地は、村の管理下だ」


「……は?」


 思わず声が出た。


「違うっすよ」


「違わん」


 即答だった。


「村の外とはいえ、我々の影響圏だ」


 理屈を作っている。


 無理やり。


「つまり――」


 村長が言い切る。


「利益の一部は、村に納めるべきだ」


 沈黙。


 周囲がざわつく。


 商人たちも、興味深そうに見ている。


「……どれくらいっすか」


 静かに聞く。


「半分だ」


「……」


 思わず、笑いそうになった。


「無理っす」


 即答。


「なんだと!?」


「無理っす」


 繰り返す。


「理由は?」


「俺が作ってるからっす」


 シンプルに言う。


「土地も、魔物も、全部こっちのもんっす」


「生意気な……!」


 村人が一歩出る。


 その瞬間。


 ――ざわり。


 魔物たちが、動いた。


 静かに。


 でも確実に。


 前に出る。


『……敵か』

『排除するか』

『守る』


 空気が変わる。


 村人たちの顔が引きつる。


「ひっ……!」


 後ずさる。


 当然だ。


 目の前にいるのは、魔物だ。


 しかも――


 従っている。


 俺に。


「……やめてください」


 俺は、軽く手を上げる。


 それだけで。


 魔物たちは、止まる。


 完全に。


 村人たちの顔が、さらに青くなる。


「……見たっすよね」


 静かに言う。


「危険じゃないっす」


 マルタが、一歩前に出る。


「それでも文句あるなら――」


 にやりと笑う。


「力で来るか?」


 完全に脅しだ。


 でも――


 効果は絶大だった。


「……くっ」


 村長が歯を食いしばる。


「覚えていろ」


 それだけ言って、背を向ける。


「このままで済むと思うな」


 去っていく。


 村人たちも、慌てて続く。


 静寂が戻る。


「……終わったっすね」


 息を吐く。


「いや、始まりだな」


 グレインが言う。


「どういうことっすか?」


「今のは“警告”だ」


 目を細める。


「次は、もっと大きい形で来る」


「……めんどくさいっすね」


「そういうもんだ」


 マルタが笑う。


「強くなるってのはな」


 ハナが、土に触れる。


「……ざわついてる」


「土が?」


「うん」


 目を閉じる。


「人の感情も、伝わるんだよ」


 ゆっくりと開ける。


「嫉妬。恐れ。欲」


 静かに言う。


「全部、こっちに向いてる」


 ぞくり、とした。


 でも――


「……関係ないっす」


 俺は、ミルクを見る。


 そして、牧場を見る。


 魔物たちを見る。


「ここ、守るんで」


 それだけだ。


 シンプルに。


 マルタが笑う。


「いいねぇ」


「いいよ」


 ハナも頷く。


 グレインは、少しだけ考えて。


 そして、言った。


「……そろそろだな」


「何がっすか?」


「“選ばれる”」


「は?」


「敵か、味方か」


 静かに言う。


「世界が、お前たちをどう扱うか決める」


 風が吹く。


 牧場が揺れる。


 その向こう。


 遠くの道に――


 また、新しい影が見えた。

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