31話 全部、俺たちのもの
全部、俺たちのもの
――あれから、少し経った。
「……増えたっすね」
俺は、牧場の入口で呟いた。
人。
とにかく、人。
「並んでるな」
マルタが笑う。
長い列。
端が見えないくらい。
「昨日の三倍っす」
「まだ増えるぞ」
グレインが言う。
「完全に“解禁”されたからな」
「っすね」
頷く。
あの戦いの後。
全部が変わった。
◇
「本日は、順番にご案内します!」
声が響く。
商人たちが、仕切っている。
しかも――
「……ちゃんとしてるっすね」
「教育したからな」
グレインが言う。
「勝手にやらせると崩れる」
「なるほどっす」
ちゃんと回っている。
完全に。
流通が。
◇
「ペーター様!」
声。
振り向く。
誰だっけ、と思うくらい――
丁寧な態度の男。
「……どちら様っすか」
「以前、失礼な態度を……!」
ああ。
思い出した。
あの時、怒鳴ってきたやつだ。
「……あー」
「本当に申し訳ありませんでした!」
頭を下げる。
勢いよく。
「いや、別に」
「どうか、今後ともお取引を……!」
「条件守るならいいっすよ」
即答した。
「もちろんです!」
顔が明るくなる。
……わかりやすい。
「完全に手のひら返しだな」
マルタが笑う。
「っすね」
苦笑する。
でも――
「いいっす」
小さく言う。
「使えるなら」
それでいい。
◇
「……落ち着いたね」
ハナが、土に触れながら言う。
「っすね」
周囲を見る。
魔物たちも、増えている。
しかも――
安定している。
『ここ、いい』
『安心』
『強い』
声が、柔らかい。
もう、“恐れ”はない。
「……完全に定着したな」
グレインが言う。
「国だな、これ」
「まだっす」
首を振る。
「ただの牧場っす」
「どの口が言う」
マルタが笑う。
◇
「ペーター」
声がした。
振り向く。
アルヴェルトだ。
「……来たんすね」
「約束だからな」
軽く言う。
「視察だ」
「どうっすか」
「見事だ」
即答だった。
少しだけ、笑う。
「完全に負けたよ」
「っすね」
あっさり認める。
沈黙。
そして――
「提案がある」
「なんすか」
「敵対はしない」
はっきり言う。
「むしろ――」
一拍置く。
「協力したい」
来た。
「……条件は?」
「対等だ」
即答だった。
「干渉しない。奪わない」
「……」
「ただし」
少しだけ笑う。
「流通は共有させてほしい」
グレインが、横で笑う。
「いい条件だ」
「っすね」
頷く。
そして――
「いいっすよ」
シンプルに答える。
「ただし」
「わかっている」
先に言う。
「ルールはそちらだろ」
「っす」
握手する。
これで――
“敵”は、一つ減った。
◇
夕方。
「……疲れたっす」
俺は、地面に座り込んだ。
「だろうな」
マルタが笑う。
「でも」
空を見る。
「悪くないっす」
「だな」
ハナが、隣に座る。
「いい場所」
「っすね」
グレインも、少し離れて座る。
「流れも安定した」
風が吹く。
暖かい。
静かだ。
「……これからどうするっすか」
俺は、ぽつりと聞いた。
マルタが笑う。
「決まってんだろ」
「何っすか」
「広げる」
即答だった。
「もっとな」
ハナが頷く。
「応えるよ」
グレインが言う。
「市場も作る」
俺は、少しだけ笑う。
「……いいっすね」
牧場を見る。
広がる土地。
動く魔物。
人。
流れ。
全部が――
ここにある。
「……ここで」
静かに言う。
「やっていくっす」
風が吹く。
優しい。
そして――
物語は、続く。




