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追放された無能農家、魔物と“理の農業”を始めたら世界の流通を支配してしまった件  作者: 慈架太子


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19話 上には上がいる

19話:噛み合わない歯車


 ――静かすぎる。


「……来ないっすね」


 俺は、牧場の端で呟いた。


 あの冒険者たちの襲撃から、二日。


 何も来ない。


 商人も減った。

 客も減った。


 明らかに――


 流れが変わっている。


「嵐の前ってやつだな」


 マルタが笑う。


「嫌いじゃねぇ」


「……っすね」


 でも。


 どこか、引っかかる。


「……グレイン」


「わかってる」


 即答だった。


「止められてる」


「止められてる?」


「流通だ」


 目を細める。


「街に出てない」


 ぞくり、とした。


「誰が?」


「複数だ」


 短く言う。


「ギルド、貴族、商人連合」


「全部っすか」


「全部だ」


 最悪だ。


「……どうするっすか」


「簡単じゃない」


 グレインは首を振る。


「力で来るなら楽だった」


「っすね」


 今回は違う。


 “見えない圧”だ。


 その時。


「……ねぇ」


 ハナが、ぽつりと呟いた。


 土に触れたまま。


「流れ、変わってる」


「土っすか?」


「うん」


 目を閉じる。


「外が、固くなってる」


「……固い?」


「閉じてる」


 ぞくり、とした。


 つまり――


「囲われてるっすね」


「そういうことだ」


 グレインが頷く。


 完全に。


 “締められている”。


 沈黙。


「……なら」


 マルタが笑う。


「ぶっ壊すか?」


「それができれば楽っすね」


 でも――


 今回は違う。


 相手は“ルール”だ。


「……考えるっす」


 そう言った、その時だった。


『……来る』


 灰狼が、低く言う。


「……何っすか」


『強い』


 一言だった。


 でも、それで十分だった。


「……どこ」


『正面』


 全員が、そちらを見る。


 そして――


 現れた。


 一人。


 たった一人。


 だが――


「……やばいっすね」


 直感でわかる。


 今までで、一番強い。


「……お前か」


 男が言う。


 静かに。


 でも、重い。


「この牧場の主は」


「ペーターっす」


 前に出る。


「何の用っすか」


「確認だ」


 短く言う。


「価値と、限界の」


 来た。


 “テスト”だ。


「……名前は?」


「いらない」


 即答だった。


「どうせ、すぐ終わる」


 その一言で。


 空気が、凍る。


「……やるか?」


 マルタが笑う。


「待ってください」


 俺は言った。


「俺がやるっす」


「またか」


「はい」


 頷く。


 でも――


 今回は違う。


 わかる。


 “普通じゃない”。


「……行くぞ」


 男が、歩く。


 ゆっくりと。


 でも――


 重い。


 空気ごと、押してくる。


「……囲め」


 俺は言う。


『了解』


 魔物たちが動く。


 完璧に。


 いつも通りに。


 でも――


「……遅い」


 男が、消えた。


「っ!?」


 視界から消える。


 次の瞬間。


 ――ドン。


 衝撃。


 魔物が、吹き飛ぶ。


「なっ……!」


 初めてだった。


 連携が、崩された。


「……弱いな」


 男が言う。


 淡々と。


「こんなものか」


 空気が、変わる。


 魔物たちが、ざわつく。


『……強い』

『やばい』

『怖い』


 初めてだ。


 “恐れ”が出てる。


「……落ち着け」


 俺は言う。


 繋ぐ。


 意識を。


「大丈夫っす」


 でも――


 完全じゃない。


 揺れている。


「……やばいっすね」


 ぽつりと呟く。


「だろ?」


 マルタが笑う。


「出るか?」


「……いや」


 俺は首を振る。


「まだっす」


 でも――


 内心、焦っている。


 崩される。


 このままじゃ。


「……なら」


 ハナが、静かに言った。


「地面、使うよ」


「……お願いするっす」


 次の瞬間。


 地面が、動く。


 ――ドン。


 男の足元が、沈む。


 でも。


「……遅い」


 軽く跳ぶ。


 回避。


 完全に。


「……読まれてる」


 グレインが呟く。


「最適解で動いてる」


 つまり――


「俺たちの“上”っすね」


「その通りだ」


 男が言う。


 淡々と。


「お前たちは、完成している」


 一歩、踏み出す。


「だが――」


 目が、俺を捉える。


「上がある」


 その一言で。


 全部、理解した。


 これは――


 負けじゃない。


 “確認”だ。


「……十分だ」


 男が、止まる。


「価値はある」


「……取らないんすか」


「今はな」


 振り返る。


「だが」


 一言。


「次は、集団で来る」


 ぞくり、とした。


「覚えておけ」


 それだけ言って。


 消えた。


 静寂。


「……やばいっすね」


 思わず言う。


「やばいな」


 マルタが笑う。


「楽しくなってきた」


「楽しくないっす」


 素直に言う。


 その時。


 ハナが、ぽつりと呟いた。


「……ズレてる」


「何がっすか?」


「みんな」


 土に触れる。


「少しずつ」


 沈黙。


 グレインが言う。


「……焦りだな」


「焦り?」


「流通が止まってる」


 目を細める。


「圧が来てる」


「っすね」


「その中で、強敵」


 一拍置く。


「余裕が削れてる」


 なるほど。


「……どうするっすか」


 静かに聞く。


 マルタが笑う。


「簡単だ」


「何っすか」


「もっと強くなる」


 シンプルすぎる。


 でも――


「……っすね」


 頷く。


 それしかない。


 ハナも、静かに言う。


「整えるよ」


 グレインが言う。


「流れを戻す」


 俺は、牧場を見る。


 魔物を見る。


 そして――


「……やるっす」


 静かに言う。


 ヒビは入った。


 でも――


 まだ、壊れてない。

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