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追放された無能農家、魔物と“理の農業”を始めたら世界の流通を支配してしまった件  作者: 慈架太子


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18話 奪う者たち

18話:奪う者、試される者


 ――来たのは、夜だった。


「……静かすぎるっすね」


 俺は、牧場の端で呟いた。


 風もない。

 魔物の声も、少ない。


 嫌な静けさだ。


『……いる』


 灰狼が低く言う。


「どこっすか」


『周囲』


 一つじゃない。


 複数。


 しかも――


「……気配、消してる」


 普通の連中じゃない。


「来たな」


 マルタが笑う。


「今度は何だ?」


「……冒険者っすね」


 確信だった。


 動きが違う。


 殺し慣れてる。


「数は?」


「……八」


「多いな」


「全員、強いっす」


 空気が、張り詰める。


「やるか?」


 マルタが拳を鳴らす。


「……いや」


 俺は、首を振った。


「また“やらない”っす」


「好きだねぇ」


 笑う。


「でも今回は、相手もプロだぞ?」


「だからっす」


 深呼吸する。


 そして――


「試すっす」


 ◇


 次の瞬間。


 ――ヒュン。


 矢が飛んできた。


「っ!」


 体を捻る。


 ギリギリで避ける。


「始まったっすね」


「容赦ねぇな」


 マルタが笑う。


「出るか?」


「まだっす」


 そのまま、前に出る。


 暗闇の中。


「出てきていいっすよ」


 静かに言う。


「見えてるんで」


 沈黙。


 そして――


 影が動く。


 一人。


 二人。


 次々と現れる。


 全部で八人。


 装備も、動きも、無駄がない。


「……気づいてたか」


 先頭の男が言う。


「まあな」


「何の用っすか?」


「依頼だ」


 シンプルだった。


「そのミルク」


 剣を軽く構える。


「全部、もらう」


 やっぱりだ。


「断るっす」


「だろうな」


 男は、少しだけ笑った。


「じゃあ――」


 一歩、踏み出す。


「力で取る」


 その瞬間。


 空気が、切り裂かれる。


「動くな」


 俺は言った。


 静かに。


 でも――


 はっきりと。


 魔物に向けて。


『了解』


 即答。


 でも、今回は違う。


 相手も速い。


 一人が、消える。


「っ!?」


 背後。


 気配。


 速い。


 ――来る。


「……そこ」


 振り返らずに言う。


 次の瞬間。


 地面が、盛り上がる。


 ――ドン。


「ぐっ!?」


 背後の男が、弾かれる。


「なに!?」


 別のやつが動く。


 横から。


 低く。


 速い。


「……遅いっす」


 ぽつりと呟く。


 狼が、足を払う。


 鳥が、視界を潰す。


 蔓が、腕を縛る。


 ――連携。


 でも、相手もただじゃない。


「ちっ!」


 一人が、強引に突破する。


 強い。


 普通の魔物じゃ止められない。


「……いいっすね」


 俺は、少しだけ笑った。


 試す価値がある。


「囲め」


 静かに言う。


『了解』


 次の瞬間。


 動きが変わる。


 バラバラじゃない。


 “組織”として動く。


 前を止める。

 後ろを断つ。

 逃げ道を消す。


「くっ……!」


 冒険者たちの動きが、鈍る。


「なんだこの連携!?」


「あり得ねぇ!」


 焦りが見える。


 でも――


 まだ終わらない。


「……やるな」


 リーダーが言う。


「だが――」


 剣を構える。


「これで終わりだ」


 踏み込む。


 速い。


 今までで一番。


 たぶん――


 “本気”。


 でも。


「……終わりっすね」


 俺は、静かに言った。


「なに?」


「もう、囲ってるんで」


 その瞬間。


 地面が、完全に閉じた。


 蔓が絡む。

 足が沈む。

 動けない。


「なっ!?」


 全員が、止まる。


 完全に。


「……終わりっす」


 静かに言う。


 戦闘時間。


 数十秒。


 沈黙。


 冒険者たちが、息を荒げる。


「……なんだ、これ」


 リーダーが呟く。


「戦って……ない」


「はい」


 頷く。


「戦ってないっす」


「なのに……負けてる」


「そうっすね」


 シンプルに答える。


 しばらく沈黙して。


 そして――


 リーダーは、笑った。


「……なるほど」


「何がっすか?」


「噂通りだ」


 目を細める。


「ここは、“取れない”」


 その一言で。


 価値が、確定した。


「帰る」


 あっさりと言う。


「いいんすか?」


「無理だ」


 即答だった。


「割に合わない」


 他のメンバーも頷く。


 戦意は、完全に消えている。


「……解くっす」


 俺は言った。


 蔓が、ほどける。


 地面が、戻る。


「助かる」


 リーダーが言う。


「忠告だ」


「なんすか?」


「ここ、もっと来るぞ」


 振り返る。


「俺たちより強いやつが」


「っすね」


 頷く。


「わかってるっす」


 リーダーは、少しだけ笑って。


 そして――


 去っていった。


 静寂。


「……どうだった?」


 マルタが聞く。


「十分っす」


 俺は、息を吐いた。


「いけるっす」


「だな」


 グレインが頷く。


「完全に“守れる”」


 ハナが、土に触れる。


「まだ伸びるよ」


「いいっすね」


 俺は、牧場を見る。


 魔物を見る。


 そして――


 ミルクを見る。


 確信する。


 これは、もう止まらない。


 そして同時に。


 “試されている”。


 どこまで持つか。


 どこまで守れるか。


 でも――


「……やるっす」


 静かに言う。


 ここは、俺たちの場所だ。

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