おわりのはじまり
面白そうなストーリーを思いついたので書いてみました
よろしくお願いします。
彼の日常はどこまでも平凡だった。
成績はダメダメ、運動神経も中の下。
避けることしか能がなく、外野に飛ばされた暁には
そこで試合終了の笛を待つのみになってしまうような、
そのくらい。
中学デビューの一環として一念発起し入ったサッカー部でも、
今更鍛えた脚が才能に敵うわけもなかった。
試合でたいした活躍もせず、腕前は入ってくる若者に抜かれては、
ただベンチでひっそりと練習の成果を発揮する日を
待ち続けるだけだった。
交友関係も狭く浅くの救いなし。来る者拒む去る者追わずで
身の回りに人なんている方が珍しかった。孤独だった。
勉強なんて全くできなかった。お前の好きなゲーム感覚でやればいいと言われるが、そもそも「勉強」が嫌いなのだから
そんなこと無理に決まっている。
高校も世間ではFランと呼ばれ、少し努力すれば受かる所を受験し、
ボーダーラインギリギリで合格した。
華々しい高校生活なんてかけ離れた話で、
目立った役も係もなにもなかった。
大学には行かず、そのままフリーターとして
ダラダラと一日をドブに捨てるかのように過ごしていた。
そんな彼にも特技があった。ゲームの最速攻略である。
彼は小さい頃からゲームと共に生きた。
暇さえあればゲームゲームと喚き散らすクソガキだった。
青い光を放つ液晶を眺めた時間は、累計すると親の顔を見ている
時間より長いのではないか。とんだ親不孝者だ。
そんな彼を両親は叱るどころか褒め讃え、
好きなことがあるのは良いことだと大いに受け入れてくれた。
確かに、腕は見事なものだった。
攻略本が出る前に攻略をしてしまうものだから、
彼が住んでいた町では攻略本があまり売れなかったとか。
話題になっているゲームの発売日周辺は彼を取り囲むように人だかりができたが、同級生との交流はそれ以上もそれ以下もなかった。
同級生に彼の印象を聞けば、
十中八九「ゲームが上手い」と答えるだろう。
逆転の発想、それしか取り柄がないのだ。
でもそれでよかった。
行っても特に意味の無い学校を休みがちだった彼は、
新作のゲームが発売されては片っ端から喰らい尽くし、
いつの間にか界隈で呼ばれるようになった
『食いつくしゲーマー』の異名の下、
大手ゲーム攻略サイトの攻略班として働き始めた。
彼は、多くの人間がそれを目指し、嘆き、願う
『好きなことを仕事にする』を具現化した。
彼の暴食を防ぐためなのか、
最近のゲーム市場では比較的作り込まれた『神ゲー』が増えつつある。
そう、彼は彼の知らないところで社会を進歩させているのだ。
彼の名前は『羽田凌介』、23歳。今日、事故で死亡した。




