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救えた?…気のせいか

朝、目を覚ましたとき。


 ルミナは、ほんの一瞬だけ――

 「うまくいっている気がした」。


 窓から差し込む光は柔らかく、

 部屋の色も落ち着いている。


 (あれ……?)


 いつもなら起き抜けに

 壁が派手になっていたり、

 カーテンが妙に情熱的な色になっているのに。


 「……珍confirm」


 ベッドから起き上がり、

 そっと後ろを振り返る。


 ――いる。


 無色の少女は、そこにいた。


 でも。


 昨日より、少しだけ……

 “薄い”。


 「……え?」


 ルミナの喉が、きゅっと鳴る。


 「ちょ、待って。

 昨日より薄くなってない?」


 少女は答えない。

 揺れもしない。


 ただ、そこに“あるだけ”。


 「……いや、違うか」


 ルミナは自分に言い聞かせる。


 「昨日はたまたま濃く見えただけ。

 そう、気のせい」


 そうであってほしかった。


 朝食をとり、

 宿を出る。


 歩く。

 市場に出る。


 昨日と同じ道。

 同じ人。

 同じ声。


 なのに。


 「……あれ?」


 足元に落ちる色が、少ない。


 パンに触れても、

 色づきが弱い。


 (私の能力、落ちてる?)


 胸がざわつく。


 「……ねえ」


 無色の少女に声をかける。


 「昨日より、ちょっと元気ない?」


 返事はない。


 それでも、

 ほんの一瞬。


 少女の輪郭が、揺れた。


 ――否定でも肯定でもない。


 「……そっか」


 ルミナは、無理やり笑った。


 「一晩で全部うまくいくわけないよね」


 自分に言い聞かせる言葉。


 昼頃、

 小さな事件が起きた。


 路地で、泣いている子ども。


 「迷子?」


 声をかけると、

 子どもは頷いた。


 手を引く。


 光が落ちる。


 色が、世界に広がる。


 子どもはすぐに親と再会し、

 笑顔で去っていった。


 ――救えた。


 間違いなく。


 「……ほら」


 ルミナは、少し得意げに振り返る。


 「ちゃんと、救えるときもあるんだよ?」


 無色の少女は、

 それを見ていた。


 でも。


 その輪郭は、

 さらに薄くなっていた。


 「…………」


 胸が、冷たくなる。


 (……なんで)


 人を救ったはずなのに。

 世界に色を増やしたはずなのに。


 「……もしかして」


 小さな仮説が、

 頭をよぎる。


 ――この子は、

 “誰かが救われるほど、消える”。


 「……気のせい、だよね」


 声が、少し震える。


 無色の少女は、

 何も言わない。


 ただ、

 昨日より確実に――

 世界に馴染み始めていた。


 それは救いではなく、

 消失に近い形で。


 その日、ルミナは初めて思った。


 「……救うって、

 こんなに怖かったっけ」


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