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私の能力、地味にめんどくさい

 結論から言うと。


 ルミナは、自分の能力が好きじゃない。


 「……またか」


 朝起きた瞬間、天井がうっすら虹色だった。

 別におしゃれとかじゃない。

 ただ単に、寝返りを打ったときに手が触れただけでこうなる。


 「隠密? 無理。

 忍者? 論外。

 夜這い? 自殺行為」


 小声でぶつぶつ言いながら、ベッドから降りる。


 床もカーテンも、靴下も、

 なぜかテンション高めの配色。


 「誰がどう見ても“私ここにいます!”って感じだよね……」


 能力説明をするとこうだ。


 ・感情や存在が強いものほど、色が出やすい

 ・無色のものほど、触れたときの反動がでかい

 ・自分の意思では完全に制御できない


 要するに、

 厄介。


 しかも昨日の森の件があるせいで、

 今日はやたら感覚が過敏だった。


 「……視線、多くない?」


 市場を歩いていると、

 時々、妙な間が生まれる。


 誰もいないはずの路地。

 でも、確実に“何か”がいる。


 「……ついてきてる?」


 試しに立ち止まる。


 誰もいない。


 歩く。


 また、視線。


 「ストーカーなら出てきてほしいんだけど。

 幽霊ならせめてルール守って?」


 心臓が、少しだけ早くなる。


 あの感覚だ。

 昨日、森で触れた――


 (……無色の、)


 ふと、足元に違和感。


 影が、ひとつ多い。


 「…………」


 しゃがみ込む。


 影に、そっと手を伸ばす。


 「……大丈夫」


 誰に言うでもなく。


 触れた瞬間、

 影が、ほんのわずかに震えた。


 色は、ほとんど出ない。

 それでも、完全な無ではなかった。


 「……ね」


 ルミナは、苦笑する。


 「見てるだけなら、まだマシだよ」


 影は答えない。


 けれど――逃げもしない。


 それが、少しだけ嬉しかった。


 「能力、めんどくさいけどさ」


 立ち上がりながら、ルミナは言った。


 「こういうときは、役に立つみたい」


 足元に、淡い色が落ちる。


 誰にも気づかれないほどの、

 でも確かに“存在した”証。


 無色の少女は、まだ名を持たない。

 まだ、声も出せない。


 それでも。


 この世界で初めて、

 誰かに“見つけられた”日だった。


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