表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

それでも…

扉は、静かだった。


《記憶だけを残す》


世界も救う。

彼女も“完全には”救わない。

そして、俺も救われないわけじゃない。


——一番ずるくて、一番誠実な選択肢。


「……本当に、それでいいのか」


相棒が問いかける。


珍しく、答えを持っていない顔だった。


「これを選べば、彼女は“存在しなかった人”になります」


「はい」


「名前も、声も、姿も——」


「世界からは消えます」


少女は、もう何も言わなかった。


ただ、少しだけ微笑っている。


「怖くない?」


そう聞くと、彼女は首を振った。


「だって」


「最初から、ここは“続きもの”だったでしょ」


意味が、すぐに分かった。


前作も。

今作も。

彼女は、ずっと“物語のための存在”だった。


「ねえ」


彼女は、最後に言う。


「あなたが誰かを助けようとして、

 迷って、苦しんで、

 それでも進んだこと」


「それが残るなら、わたしは消えてもいい」


胸が、どうしようもなく痛い。


「……ありがとう」


その一言に、彼女は少し困った顔をした。


「それ、ずるい」


「最後まで、ずるい主人公だね」


「なろう系だからな」


そう言うと、彼女は小さく笑った。


「じゃあ」


「これで、おしまい」


扉に、手を伸ばす。


触れた瞬間、

世界が、やさしく崩れた。


———


目を覚ます。


いつもの朝。

平和な世界。


名前を呼ぼうとして、

呼ぶ名前が出てこない。


胸が、少しだけ痛む。


理由は分からない。


でも、ポケットの中に、

折り紙の星が一つだけ残っていた。


「……なんだ、これ」


分からないのに、

大事なものだと分かる。


相棒が、いつもの調子で言う。


「おはようございます」


「……なあ」


「はい」


「俺、何か忘れてないか」


相棒は、一瞬だけ黙ってから答えた。


「さあ?」


「でも」


「あなたは、前よりちゃんと前を向いていますよ」


空は青い。

世界は続く。


誰も覚えていない少女の物語は、

誰かの中に“理由の分からない痛み”としてだけ残った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ