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先に開いた


——選んでいないのに。


扉が、音を立てて開いた。


「……は?」


三つのうち、

俺がまだ触れてもいない——二つ目の扉。


《彼女を完全に救う》


「待て待て待て待て」


「想定外ですね」


相棒が珍しく眉をひそめた。


「想定外って言葉、軽く使うなよ」


扉の向こうから、

懐かしい空気が流れてくる。


——色が、ある。


この世界にはないはずの、

過剰なくらい鮮やかな色。


「なんで開いた?」


「……おそらく」


相棒は、静かに言った。


「彼女が、あなたを選びました」


「……は?」


足が、勝手に動いた。


扉をくぐる。


そこは、前作の世界だった。


崩れかけた街。

歪んだ空。

救えなかったはずの時間。


「——あ」


声が、漏れた。


瓦礫の上に、少女が立っていた。


前作の少女。


無色だったはずの彼女は、

今は、ほんのりと色を帯びている。


「……やっぱり、来た」


笑った。


ちゃんと、俺を見て。


「来ちゃダメだった?」


喉が詰まる。


「なんで……ここに」


「わたしね」


少女は、ゆっくり話す。


「全部、見てたよ」


「前も、今回も」


「あなたが、世界と天秤にかけて悩むところ」


胸が、ぎゅっと締まる。


「だからね」


彼女は、首を振った。


「完全救済、いらない」


「……は?」


「世界も、あなたも、どっちも壊れるもん」


軽く言うな。


「でも」


少女は、一歩近づいた。


「少しだけでいい」


「わたしが“いた”ってことを、

 あなたが覚えててくれれば」


「それだけで、十分」


視界が滲む。


「そんなの……」


「ずるい?」


少女は苦笑する。


「でも、あなたもずるいよ」


「全部救おうとするくせに、

 自分だけは後回しにするんだもん」


言い返せない。


「ねえ」


彼女は、指を差した。


背後。


そこに、四つ目の扉が現れていた。


《記憶だけを残す》


「……増えた?」


「増やした」


少女は、少し得意げだった。


「これは、あなたとわたしが作った選択肢」


相棒の声が、背後から聞こえる。


「その扉を選ぶと」


「彼女は存在しません」


「でも」


「あなたの中に、

 “誰かを救えなかった記憶”だけが残ります」


「……地獄じゃん」


「はい」


相棒は、でも、と続けた。


「それでも進める人だけが、

 選べるルートです」


少女が、微笑む。


「わたし、全部は救われなくていい」


「あなたが、壊れないなら」


胸が、痛い。


世界は、選択を迫る。


でも今回は、

彼女が“俺を救おうとしている”。


扉は、静かに待っている。

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