表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/24

選択肢はずるい

世界の中心にある塔は、

いつ来ても「最終局面です」って顔をしている。


「……またここか」


「はい。分岐点専用施設です」


嫌な施設名だな。


円形の部屋。

床には魔法陣、壁には三つの扉。


一つ目の扉には、こう書かれていた。


《世界を完全に救う》


二つ目。


《彼女を完全に救う》


三つ目。


……何も書かれていない。


「おい」


「はい」


「三つ目、説明しろよ」


相棒は一拍置いた。


「説明すると、選びにくくなるので」


「ずるくない?」


「仕様です」


この世界、仕様って言えば何でも許されると思ってるだろ。


「一つ目は、もうほぼ達成してるんだろ」


「はい。多少の歪みはありますが、安定しています」


「二つ目は」


「彼女を“存在として”取り戻します」


一瞬、心臓が跳ねた。


「……代償は?」


「世界が崩れます」


即答。容赦なし。


「前作ルートですね」


「そう」


胃がきしむ。


「じゃあ三つ目は?」


相棒は、初めて言い淀んだ。


「……あなたが、救われます」


「は?」


意味が分からなかった。


「あなたは今、

 世界を救った“代償”を全部背負っています」


「覚えていること、忘れられないこと、

 選ばされた責任」


全部、俺の中にある。


「三つ目を選ぶと」


相棒は静かに続ける。


「あなたは、彼女のことを忘れます」


「……」


「前作も今作も、すべて」


頭が真っ白になる。


「それ、逃げじゃん」


「ええ」


否定しない。


「でも、それでも生きられる」


扉を見つめる。


一つ目は、すでに選んだようなもの。

二つ目は、選んだら全部壊れる。

三つ目は——


「俺だけ、楽になるやつじゃん」


「そうです」


「彼女は?」


「誰も覚えていないまま、

 痕跡だけが、いずれ消えます」


胸が痛い。


「……ひどいな、この物語」


「なろう系ですから」


さらっと言うな。


沈黙が落ちる。


「ちなみに」


相棒が、ぽつりと言う。


「三つ目を選んだ世界では、

 あなたは“何か足りない気がする”人生を送ります」


「最悪じゃん」


「でも、幸せそうですよ」


それが、一番残酷だった。


扉の前に立つ。


どれを選んでも、後悔する。

どれも、完全じゃない。


「……俺さ」


声が、震えた。


「前作のときより、ちゃんと考えてるよな」


「はい」


「成長したってこと?」


「いいえ」


相棒は首を振る。


「傷つくのが、上手くなっただけです」


その言葉が、胸に刺さる。


選択の時は、近い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ