表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

無色って……バグでは?

ルミナは森を出て五分で後悔していた。


 「……やっぱり見なかったことにすればよかったのでは?」


 さっき触れた“影”。

 誰かがいたような、いなかったような、

 でも確実に心だけ置いていかれた感じ。


 ああいうの、大体ロクなことにならない。


 「普通さぁ、ファンタジー世界ってもっとこう……

 ドラゴンとか! 魔法学園とか! あるでしょ!」


 なのに自分が引き当てるのは、

 存在が未ロードみたいな少女とか、

 感情だけ残ってるバグっぽい影とか。


 不具合ガチャが渋すぎる。


 ルミナは道端の石に腰掛け、

 持っていたパンをちぎった。


 その瞬間。


 パンが、ほんのり淡い黄色に光った。


 「……あ、はいはい。出ますよね、色」


 彼女の能力は単純だ。

 触れたもの、近くにあるものに“色”が宿る。


 便利そうに聞こえるが、

 現実はこうだ。


 ・洗濯物が勝手にカラフル

 ・食べ物が妙に美味しそうになる(味は普通)

 ・隠密行動が致命的に向いてない


 「地味に嫌なんだよなぁこれ……」


 愚痴りながらパンを食べていると、

 不意に、背後がひんやりした。


 ――いる。


 振り返る。


 ……何もいない。


 「…………」


 「……いや、いるでしょ今の」


 空気だけが、少しだけ重い。

 まるで、誰かが“見ている”感覚。


 「……ねえ」


 また、声をかけてしまう。


 返事はない。


 でも、さっきよりはっきりと

 **“そこにある孤独”**を感じた。


 「……無色ってさ」


 ルミナは、少しだけ真剣な声で呟いた。


 「世界の仕様ミスじゃない?」


 本来あるはずのものが、

 削除されて、取り残されて、

 それでも消えきれなかった。


 そんな感じがした。


 ――前にも、似た存在がいた気がする。


 名前は思い出せない。

 顔も、声も、もう曖昧。


 けれど。


 「……置いていかれるの、嫌だよね」


 ルミナの足元に、

 ほんの小さな色が落ちた。


 灰色だった地面に、

 淡い水色が滲む。


 それは、救いと呼ぶにはあまりにも小さく。

 けれど確かに――


 無色の少女の“存在”が、

 一瞬だけ、世界に認識された証だった。


 「……うん」


 ルミナは立ち上がる。


 「バグならさ、修正するしかないじゃん」


 軽口の奥に、

 まだ自分でも気づいていない覚悟を滲ませて。


 その日、世界はほんの少しだけ、

 仕様通りじゃなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ