選ばれる側と、消される側
カイルは、呼ばれた。
それは、公式なものだった。
「世界調整局」
この世界において、
“歪み”を正す組織。
彼らは、優しかった。
「君は、正常だ」
白衣の男が言う。
「感情も、記憶も、問題ない」
「……それで?」
「だからこそ、選ばれた」
机の上に、書類が置かれる。
《協力要請》
対象:
――異物化個体(名称欠損)
カイルは、理解した。
それが、ルミナのことだと。
◆
「彼女は、世界を不安定にする」
「悪意はないが、危険だ」
「排除、もしくは隔離が必要」
淡々とした説明。
感情は、ない。
「……拒否したら?」
白衣の男は、微笑んだ。
「君も、記録から外れる」
それは、脅しではない。
事実だ。
◆
夜。
カイルは、ルミナに何も言わなかった。
言えなかった。
無色の少女は、気づいていた。
「……来たね」
「……うん」
「選ばせるんだ」
少女の声は、静かだった。
「前の世界でも、そうだった」
誰かが“残るために”、
誰かを切る。
ルミナは、微笑った。
少しだけ。
「……ねえ、カイル」
「なんだ」
「もし私が消えたらさ」
言葉を選ぶ。
「それでも、生きて」
カイルは、拳を握りしめた。
「選ばせるな」
「世界は、そういうものだよ」
ルミナの声は、
もう少しで、届かなくなりそうだった。
◆
その夜、無色の少女が言った。
「ここから先は、
誰かが裏切らないと、進まない」
それは予言ではない。
歴史の繰り返しだった。
世界は、
選ばれる側を用意する。
そして、
消される側を、静かに決める。
次に削られるのは――
名前だけじゃない。




