表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

24 快気と回帰

結構難産だったかも?

風邪で休んで三日目。


ようやく熱が下がって、体も動くようになった。


「愛己、あなたもう大丈夫?」


母さんが、心配そうに覗き込んでくる。


「うん、もう平気」


「無理しないでね。来週から学校でしょ?」


「わかってる」


月曜日には学校に行ける。


美玲にも会える。


看病に来てくれたんだよな。


あの日のことは、正直よく覚えていない。


熱でぼーっとしてて、夢と現実の境目が曖昧だった。


美玲が来てくれて、額にタオルを乗せてくれて。


水を飲ませてくれた気がする。


それ以外は、ほとんど記憶がない。


でも、そばにいてくれたことだけは覚えている。



土曜日。


スマホを見ると、いつものグループメッセージが動いていた。


稲葉:「ナルシー大丈夫?」


二見:「生きてる?」


額賀:「死んでたら返信できないよぉ」


既読はついてるけど、俺は返信していなかった。


成島:「生きてる。来週から復帰する」


すぐに反応が来る。


稲葉:「よかった!」


二見:「成島復活!成島復活!」


額賀:「音羽さんが看病に行ったって聞いたけどぉ」


成島:「なんで知ってんの?」


額賀:「道枝から聞いたよぉ」


道枝、余計なことを。


二見:「マジで? こりゃいかんですよ」


稲葉:「音羽さんね、よかったなナルシー」


違うけど。


でも、否定する言葉が出てこない。


成島:「お前らの考えてるようなことはない」


額賀:「ふーん」


もういい。


スマホを置いて、ベッドに寝転がる。


——美玲、来てくれたんだよな。


ありがとう、ちゃんと言わないと。



月曜日。


久しぶりの学校。


教室に入ると、稲葉が手を振ってくる。


「ナルシー、復活おめでとう!」


「おう」


席に着くと、二見が近づいてくる。


「ボケても相方が居なくてさ?寂しかったぜー?」


「そりゃなぁ」


「回復祝いにギャグ百連発いくか?」


「先生が来てもやり続ける覚悟しろよ?」


二見が、ニヤニヤしながら自分の席に戻る。


授業が始まる。


数学。


ノートを取りながら、ふと思う。


——三日分の遅れ、美玲に教えてもらおうかな。


いや、自分で何とかできるか。


でも、口実になるな。


そんなことを考えていたら、先生に当てられた。


「成島、この問題解いてみろ」


「え、あ、はい」


焦って教科書を見る。


わからない。


「わかりません」


「あー、前の授業体調悪かったんだっけか。じゃあ後ろの席」


助かった。



昼休み。


購買でパンを買って、教室に戻る。


席に座ってパンを食べながら、窓の外を見る。


——美玲の料理、食べたいな。


そんなことを考えていると、額賀が話しかけてきた。


「成島くぅん」


「何だ、体調は本調子じゃないから尋問は拒否する」


「音羽さんの視線変わったよねぇ?」


「気のせいだろ」


「そうかなぁ温度が違わないかなぁ?」


額賀が、珍しく真顔だ。


「なんかこぉ、熱いというかぁ?それでいて粘っこいというかぁ?」


「お前は音羽さんの事をなんだと思ってるんだ?」


「まあいいんだけどぉ」


額賀が、自分の席に戻る。


そういえば、さっき廊下ですれ違ったとき、目が合った。


美玲が、小さく会釈してくれた。


いつもどおりのささやかな笑顔なのに。


そう言われると熱のある視線だったかも——流石に都合の良い妄想か。



放課後の廊下を歩いていると、美玲とすれ違った。


「あ、美玲さん」


「愛己くん」


美玲が、立ち止まる。


「体調は大丈夫?」


「うん、もう平気」


「よかった」


美玲が、微笑む。


——綺麗だな。


そう思った。


「あの、看病に来てくれて、ありがとう」


「どういたしまして」


「あんまり覚えてないんだけど」


「熱、高かったものね」


美玲が、少し笑う。


「でも、来てくれて嬉しかった」


「ふふ、そう」


美玲の笑顔。


胸が、温かくなる。


「じゃあ、また」


「うん、また」


美玲が、行ってしまう。


俺は、その場に立ち尽くしていた。


——土曜日が待ち遠しいな。



家に帰ると、母さんが夕飯を作っていた。


「おかえり」


「ただいま」


「今日は大丈夫だった?」


「うん」


部屋に戻って、ベッドに倒れ込む。


スマホを見る。


美玲とのLINE。


最後のやり取りは、先週の予定確認。


何か送ろうかと思ったけど、特に用事もない。


結局、スマホを置いた。


——土曜日、楽しみだな。


そう思って、宿題を始めた。



土曜日。


朝から少しドキドキしている。


今日は美玲のペントハウスで、掃除と勉強会。


昼過ぎ、ペントハウスへ向かう。


いつもの道。


エレベーターに乗りながら、教科書とノートが入ったバッグを確認する。


インターホンを押す。


「はい」


美玲の声。


——いい声だな。


「成島です」


「どうぞ」


ドアが開く。


部屋に入ると、美玲がリビングにいた。


「こんにちは」


「こんにちは、愛己くん」


美玲が、微笑む。


——可愛い。


そう思った瞬間、顔が熱くなる。


「今日もよろしくね」


「うん」


掃除を始める。


いつも通り、リビングから。


掃除機をかけながら、美玲の様子をチラッと見る。


キッチンで、何か準備をしている。


後ろ姿。


黒い髪が、ゆれる。


——綺麗だな。


そう思って、すぐに掃除に集中する。



掃除が終わった。


「お疲れ様」


美玲が、お茶を出してくれる。


「ありがとう」


二人で、ソファに座る。


いつもの距離。


でも、今日は近く感じる。


「愛己くん」


「ん?」


「もう、無理しないでね」


「うん」


美玲が、俺を見ている。


その目が、優しくて。


——好きだ。


そう思った。


「じゃあ、勉強始める?」


「うん」


美玲がノートを開く。


「今週はどこまで進んだ?」


「数学が、ちょっと遅れてる」


「わかった。じゃあそこから」


美玲が、丁寧に教えてくれる。


俺がわからないところを、何度も説明してくれる。


——やっぱり、美玲に教わるとわかりやすい。


一時間ほど勉強して、一区切りついた。


「今日はこのくらいでいいかな」


「ありがとう、助かった」


「ふふ、どういたしまして」


美玲が、キッチンに向かう。


「今日の料理、何?」


「いいポルチーニが手に入ったからポルチーニのリゾット」


「ポルチーニ?」


「イタリアで珍重されるキノコで香り高いいいキノコ」


「松茸的な?うまそう」


「ちょっと違うけど楽しみにしてて」


美玲が、キッチンで料理を始める。


しばらくすると、キノコのいい香りが漂ってくる。


——すごい香りだな。



リゾットができあがった。


「はい、どうぞ」


皿に盛られたリゾット。


茶色いポルチーニ茸が入っている。


一口食べる。


「うまい」


濃厚なキノコの香りとそれを包み込むチーズのまろやかさが、口の中に広がる。


「よかった」


美玲が、微笑む。


——この笑顔、もっと見ていたい。


食事が終わって、片付けを手伝う。


「ありがとう」


「どういたしまして」


そして、帰る時間。


「じゃあ、また」


「うん、また」


ドアを出る。


振り返ると、美玲が見送ってくれていた。


「気をつけて」


「うん」


エレベーターに乗る。


ドアが閉まる。


——すでに、寂しい。


帰り道、そんなことを考えていた。


音羽美玲。


綺麗で、優しくて、一緒にいると落ち着く。


——そばにいたい。


ふと、そう思った。


でも、それは特別なことじゃなくて。


いつもここにある、当たり前の気持ちだった。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

日常に帰ってきましたね。

クライマックスへ近づいていきます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ