23 看病と海
日中に投稿できたぁ
アラームが鳴ったのかどうか、定かではない。
目が覚めた瞬間、体が鉛のように重く、自分のものじゃないみたいだった。
頭は、鈍器で殴られたようにガンガンと痛む。
喉は、昨日とは比べ物にならないほど焼けるようにヒリヒリしていた。
「愛己、遅刻するわよ?」
母さんが、急に視界に入ってきた。顔が、いつもよりやけに大きく見える。
「これは熱あるわよ。38度は超えてるわね、多分」
「……マジで」
自分の声が、喉の奥で潰れて、か細い音にしかならない。
「とりあえず今日は病院行きね。学校には連絡しておくから」
「わかった」
意識を保つのが億劫で、すぐにまた、重たい瞼を閉じた。
♢
一体、どれほどの時間が経ったのだろう。
途中母に送られ病院へ行ったがそれも定かじゃない。
部屋の暗さから、まだ昼なのだろうか。それとももう夕方? 時間の感覚が、生ぬるい膜に包まれたように曖昧だ。
体は相変わらず重い。頭の中は、熱で思考がまとまらない。
部屋の外から、遠くの出来事のように母さんの声が聞こえてきた。
「あら、いらっしゃい」
誰か来た。
「こんにちは。音羽美玲と申します」
——音羽さん?
起きなきゃ。でも体が動かない。
「まあ、愛己のお友達? 彼女だったりする? わざわざありがとう」
「いえ。愛己くんが休んでると聞いて、心配で」
「今、自室で寝てるの。ちょっと熱があって」
「そうなんですか」
「よかったら、見てきてあげて。私、これから夕飯の買い物行こうと思ってたから」
「いいんですか?」
「ええ、でも風邪が移っちゃいけないから長居は厳禁よ? 愛己の部屋は奥側の左手の個室だから」
「はい。ありがとうございます」
足音が近づく。
♢
ドアが開く。
「愛己くん?」
美玲の声だ。
起きなきゃ。でも目が開かない。
「……寝てるのね」
足音が近づいてくる。ベッドの横で止まった。
「愛己くん、大丈夫?」
額に、冷たいものが触れる。美玲の手だ。
「熱、かなり高い。昨日の掃除で無理させたかな? ちゃんと休んで」
掃除? ああ、昨日……。
よく思い出せない。
「愛己くん」
——美玲さん。
なんとか目を開けた。視界がぼやける。
「……美玲さん?」
「あ、起きた?」
美玲の顔が、ぼんやりと見える。
「タオル……持ってきて」
「わかった、タオルね」
美玲が立ち上がる。
♢
美玲が、濡れタオルを持って戻ってきた。
「はい」
額に乗せてくれる。冷たくて気持ちいい。
「ふふ、よかった」
美玲が笑ってる。優しい笑顔だ。
「水、飲む?」
「うん」
美玲が頭を支えてくれる。
ペットボトルから水を飲む。喉が少し楽になった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
美玲が、ベッドの横に座る。
「薬は飲んだ?」
「朝……飲んだ。たぶん」
「そっか」
頭がぼーっとする。考えがまとまらない。
でも、美玲がいてくれる。それだけで、少し安心する。
「美玲さん」
「何?」
「ありがとう。来てくれて」
「どういたしまして」
「美玲さん……好き」
あれ。何言ってんだ、俺。
口が勝手に動いた。
「……知ってる」
美玲が、何か言った。
聞き間違い?
頭がうまく働かない。
目を閉じる。
「ちゃんと寝てね」
美玲の声が近い。
手が布団を直してくれる。
顔が、すごく近い気がする。
息が、止まる。
苦しい。
目を開けられない。
♢
海だ。
深い海の中で、体が沈んでいる。
息ができない。
苦しい。
何度も浮かぼうとする。
でも、波が顔を覆う。
息が吸えない。
また沈む。
溺れる。
苦しい。
♢
目が覚めた。
部屋は暗くなっていた。もう夜なのか。
「愛己、起きた?」
母さんの声。
「母さん……?」
「ええ。お友達、帰ったわよ」
「……誰?」
頭がまだぼんやりしている。
「音羽ちゃんよ。ずっと看病してくれてたわ」
ああ、美玲さん。
来てくれたんだ。
でも、何を話したっけ。
思い出せない。
顔が近かった記憶だけが、妙にはっきりしている。
あと、海の夢。
溺れた夢。
「お粥作ったわよ。食べられる?」
「うん」
母さんが、お粥を持ってきてくれた。
ゆっくり食べながら、美玲のことを考える。
——明日、学校行けるかな。
美玲に会いたい。
でも、少し怖い。
何を話したのか、思い出せないから。
何か、大切なことを言った気がする。
——まあ、いいか。
そう思って、もう一度目を閉じた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
夜勤明け眠い。
成島並みに意識がうつらうつらしてる。
誤字脱字あったら教えて。




