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19 準備と策謀

遅刻しました。

ごめんなさい。

昼休み。


教室で弁当を開くと、稲葉と二見が隣に座ってきた。


「成島ー、稲葉の佐々木さんが作ってくれた愛妻弁当が美味すぎて泣いた」


おかずを貰った二見が苦しげに言う。一応慰めておくべきか。


「泣くな二見よ、お裾分けもらえただけありがたいと思え」


「絶対惚気の代わりなんだ!こんなの!」


「そうに決まってるだろ、惚気だよ」


稲葉がニヤニヤする。はー!恋愛がうまくいってるからってムカつくな!おい!!


「いいなー、俺も彼女欲しいわ」


二見が大げさにため息をつく。


「お前、先週も同じこと言ってただろ」


「言ってたけど、本気で欲しいんだって」


そんな会話をしながら、弁当を食べる。


「そういえばさ」


二見が急に声を落とした。


「成島、最近音羽さんと喋ってんじゃん」


「は?まぁ、うん」


「体育祭の時もそうだけど、最近教室でも普通に話してるよな」


稲葉も同意するように頷く。


「ああ、確かに。前は全然話してなかったのに」


「別に、普通に話してるだけじゃんね」


「普通に話してるだけ、ねえ」


二見がニヤニヤする。


「何だよその顔」


「いや、別に。ただ音羽さんって基本誰とも喋らないじゃん。それが成島とは普通に話してるって、結構すごくね?」


「そうか?」


「そうだよ。音羽さん、クラスの女子とも最近やっと話すようになったくらいだし」


稲葉が言う。


「俺はつらーい掃除を乗り越えたからな」


「あぁ、あの例の?」


「そうそう。あと最近は音羽に勉強とか教えてもらっててさ」


「マジで? すげーじゃん」


二見が目を丸くする。


「だから最近成績上がったのか」


稲葉が納得したように言う。


「まあな」


「いいなー、俺も教えてもらいたいわ」


「掃除するか?インクやら石膏やらでベタベタのアトリエ」


「嫌かも!」


笑いながら、弁当を食べ続ける。


でも、心の中では少しドキドキしていた。


音羽と喋っていることが周りから見てもわかるくらい、俺たちの距離は変化をしているんだ。


それを突きつけられたような気がする。



六時間目、普段ならホームルームの時間だ。


担任が教室に入ってすぐに告げた。


「よし、今日は文化祭の出し物を決めるぞ」


「おー!」


クラス全体が、一気に盛り上がる。


「じゃあ、何かやりたいことある人、手を挙げてー」


何人かが手を挙げる。


「お化け屋敷やりたい!」


「やっぱ文化祭といえば劇でしょ!」


「カフェがいいな」


色んな意見が飛び交う。


「確かに!せっかくだからなんか飲食やりたいよね」


女子の一人が言った。


「飲食かぁ。でも、何作る?」


「どうせ模擬店やるなら絶対売り上げナンバーワン狙いたいよね」


「たこ焼きとか?」


「焼きそば?」


色んな案が出る中で、音羽が手を挙げた。


「カレーはどう?」


教室が一瞬静まる。


音羽が自分から発言するのは、珍しい。


「カレー?」


「ええ。匂いで人を呼べるし、嫌いな人は少ないわ」


音羽が淡々と言う。


「確かに、カレーの匂いって食欲そそるよな」


「でも、カレーって他のクラスもやりそうじゃない?」


「回転率下がるとナンバーワンいける?」


そんな声が上がる中で、俺は手を挙げた。


「カフェのコーヒーみたいに、カップで提供して、落書きしたスリーブ巻けばお祭りっぽくない?」


「お、成島たまにはいいこと言うじゃん!」


「それなら食べ歩きもできるし」


「スリーブに絵描くの楽しそう!」


一気に盛り上がる。


「コスプレしようよ!絶対楽しい!」


「装飾も凝ろうぜ!」


「BGMはどうする?」


色んなアイデアが飛び交う。


「じゃあ、カレー屋でいいか?」


担任が聞く。


「いいでーす!」


クラス全体が賛成みたいだ、いいパスを出せたのでははないだろうか。


「よし、じゃあカレーに決定!」


実行委員が黒板に「カレー」と書く。



「じゃあ、具体的に詰めていくぞ。まず、場所はどうする?」


「教室?」


「でも、教室だとカップにする意味なくない?」


「廊下使えないかな?」


「廊下で提供して、教室は調理スペースにする?」


「それいいかも!」


「でも、廊下って許可いるんじゃない?」


「先生、廊下使えます?」


担任が少し考える。


「廊下は使えるけど、通路は確保しないとな。受付用の机一つ分出るのは許可されてるけど、それ以上は安全管理上駄目だ」


「じゃあ、机並べてバーカウンターみたいにしてみる?」


「次、カレーの種類は?」


「そりゃビーフでしょ」


「カレーと言ったらチキンカレー」


「ポークもキーマもあるんですけど!」


徐々に教室の雰囲気がピリついていくのを感じる。


「辛さは?」


「甘口じゃないと無理!」


「絶対辛口だろうが!」


「中辛も欲しくない?」


「ここは激辛一択でしょ!文化祭だよ?」


あちらこちらで対立は激化していく……なんとか話を変えないと!


「そうだ!みんなトッピングはどうする?」


「チーズ!」


「生卵!」


「生物は禁止だぞ」


「福神漬け!」


先生からの注意は飛んだが、先ほどまでとは違ってワイワイと意見が飛び交う。


「ちょっと待って、整理しよう」


実行委員が黒板に書き始める。


「カレーの種類:ビーフ、チキン、キーマ。辛さ:甘口、中辛、辛口。トッピング:チーズ、ゆで卵、福神漬け。上がってる案これでいいか?」


「いいでーす!」


「おい、ポークカレーしれっと外してんじゃねぇぞ」


「でも、これ全部作るの大変じゃない?」


「確かに……」


「中のオペレーション決まるまでは全部作る想定でやろうよ」


「じゃあ、そうしよう」


みんなで少しずつ意見を修正していく。いい感じだ


「次、装飾はどうする?」


「教室の正面と机だけなら時間かからないし凝ったインドぽい感じ!」


「布とか飾る?レースのやつとか?」


「ぱっと見でわかりやすい商品の値札とかいるよね?」


「提灯とか?」


「いいね!」


「BGMは?」


「ロックでしょ、日本をインドに!」


「するなよ!あー、ボリウッドっぽいやつがいいんじゃない?」


「誰か探してきて!」


「おっけ、ディグッとく!」


「コスプレは?」


「サリーとか?」


「好きなの着ればいいんじゃない?」


「ネットで探せばあるんじゃない?」


「予算は?」


「それ、先生に聞かないと」


「予算は一万円までだ」


担任が言う。


「マジで!?」


「じゃあ、衣裳持ち寄りでやりたいやつはやろう」


「材料費どれくらいかかる?」


「カレーの材料、結構かかりそう」


「でも、大量に作るから安く済むかも」


「誰か計算して!」


「任せろ!」


「じゃあ、役割分担だな」


実行委員が黒板に書きだす、だいぶ詰まってきたな。


「レシピ担当、調理担当、買い出し担当、装飾担当、BGM担当、コスプレ担当、スリーブデザイン担当、当日オペレーション担当……」


「多いな!」


「でも、全部必要だよね」


「じゃあ、順番に決めていくぞ。まず、レシピ担当音羽さん、お願いできる?」


「わ、私?……わかったわ」


実行委員のえげつない無茶振りに音羽が頷く。


「やったー!」


「調理担当は?」


「俺やる!」


「私も!」


そんなこんなでその後も次々と役割が決まっていった。


「了解!」


「じゃあ、これで決定だな」


担任が黒板を見る。


「あとは、準備期間だな。文化祭は二週間後だから、それまでに全部やらないと」


「やばいよね、時間ないって!」


「でも、若人の君たちが協力すればいける!次回のホームルームで進捗確認するぞ」


「教師の横暴だ!中間終わり次第始めるべきだった!」


罵声を浴びながら淡々と担任がホームルームを終える。



教室はまだざわついていた。


「やること多すぎるな」


「でも、楽しみ!」


「カレー、美味しくできるかな」


「音羽さんのレシピなら大丈夫でしょ!」


ワイワイと話す中で、音羽が俺の隣に来た。


「やること山積みね」


小さな声で、俺にだけ聞こえるように言う。


「頑張るしかないねー」


俺もできるだけ自然体に返す。


音羽が小さく笑った。


「ええ。頑張りましょう」


その声と共に窓から爽やかな風が吹いて音羽の黒髪を揺らした。

最後までお読みいただきありがとうございます。

小中高の文化祭は全て劇を行うものでした。

そもそも演劇部なので部活の方が忙しくクラス関係なかったのですが……他校の模擬店羨ましかったなぁ

まじでカレーはテロでしたずっとカレーの匂いが漂ってて昼前にはカレーを求めて彷徨うゾンビになっていました。

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