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18 中間テストと変わらぬ日常

執筆まぢむり、最近バーレーン料理を頂きました

体育祭の翌週。


月曜日の朝、俺はいつもより早めに学校に着いた。


「おはよー、ナルシー」


稲葉が入ってきた。


「稲葉早くね、おはよう」


「佐々木さんの委員会の活動があったらしくて一緒に登校したからさ」


「ああ、彼女ファーストだもんな」


そう答えながら、俺の頭には音羽の手の柔らかさがよぎる。


頭を振り煩悩を取り払う、人の恋仲を聞いて自分の好きな人を思い浮かべるのは我ながらあまりにも思春期すぎる。


やがて音羽が教室に入ってきた。遅刻をしていないとは珍しい。


目が合うと、音羽は小さく微笑んだ。


「おはよう、成島くん」


「お、おはよう」


いつもと変わらない。それだけで、少しホッとした。



ホームルームが始まった。


「えー、体育祭お疲れ様。次は中間テストだ。二週間後だから、しっかり勉強しとけよ」


「えー」


「特に二見、お前は前回よりも頑張らないとな」


担任が笑いながら言う。


——中間テスト、か。


前回は音羽に教えてもらい、点数が上がった。


今回も、勉強会は続けるんだろうか?それならば前回よりも、いい結果を出したい。


そう強く思った。



特に何かを話し合うこともなく、当たり前のように音羽の家で勉強会をすることになった。


「今日は何から始める?」


「数学かな。この範囲がよくわからなくて」


「見せて」


音羽が俺のノートを覗き込む。なんかやたら近い。顔から漂うシャンプーの匂いに、一瞬意識が散る。


「ここは、こう考えればいいのよ」


音羽が説明を始める。その声は優しく、難しい問題もすんなりと頭に入ってくる。


「わかった。ありがとう」


「ふふ、どういたしまして」


音羽が微笑む。


それから、勉強会は火曜日、木曜日、土曜日の週に三回のペースで続いた。


俺が勉強に集中できたのは、もちろん音羽の教え方が丁寧で分かりやすいからだが、もう一つ理由があった。


——音羽に、いい結果を見せたい。


その一心で、数学を解き、英単語を覚え、国語を読み込んだ。この努力は、点数を上げるためだけでなく、認められたいという密かな動機に支えられていた。



中間テスト当日。


「おはよう」


「おはよう、成島くん」


「準備、大丈夫か?」


「ええ。成島くんは?」


「まあ、何とか」


音羽の口元が緩む。


「頑張ってね」


「ああ。音羽も」


そして三日間のテストが終わった。


「終わったー!成島カラオケ行かねー?」


「もう無理やり切った、寝る」


クラス全体が、嵐が過ぎ去ったような解放感に包まれる。俺もまた、張り詰めていた糸が切れるのを感じた。



一週間後。テストが返ってきた。


点数はめちゃくちゃ上がっている。


「成島、すげーじゃん!」


「マジで上がってる!」


クラスメイトが声をかけてくる中で、音羽が俺のテストを覗き込んでいた。


「成島くん、すごいわね」


彼女が静かに言った後、俺は周りの声を無視して音羽にだけ目を向ける。


「音羽のおかげだよ。ありがとう」


「ふふ、どういたしまして」


音羽の表情が、ぱっと明るくなる。俺はその笑顔を見て、クラスで一番の点数を取った時よりもずっと大きな達成感を感じた。——よかった。



放課後。音羽の家で、いつもの掃除をしていた。


「成島くん、本当によく頑張ったわね」


「まあな。音羽が教えてくれたおかげだ」


「私は教えただけよ。頑張ったのは成島くんだもの」


「次も、教えてくれるか?」


「もちろん」


音羽が即答する。


「ありがとう」


「ふふ、お礼なんていいのに」


音羽の頬がほんのり染まる。


掃除が終わり、音羽がキッチンに向かう。


「今日は、マチュブースを作るわ」


「マチュ……何?」


「マチュブース。バーレーンの料理よ。中東の、ペルシャ湾に面した島国ね」


音羽がキッチンに入っていく。


しばらくして、スパイスの混ざった、普段とは違う複雑で香ばしい匂いが漂ってくる。食欲をそそる。


「成島くん、できたわよ」


テーブルに座ると、音羽が料理を持ってきた。黄金色の米の上に、ほろほろの鶏肉が乗っている。


「これが、マチュブース?」


「ええ。米と鶏肉を、カルダモンやサフランなどのスパイスで炊き込んだものね」


さらに、赤いソースが入った小皿とライムが並ぶ。


「こっちは、ダッカスっていう、トマトベースのソースよ。これと絞ったライムをかけて味を変えながら食べるのがおすすめなの」


「へえ。すげー本格的だな」


「ふふ。でも、成島くんがスパイス料理に慣れてないと思って、ライムを多めに使ってさっぱり食べられるように、あと、辛味もかなり抑えてある。本場の味はもっと強烈だけど、初めて食べる人でも食べやすいようにしてあるから」


「ありがとう、音羽。いただきます」


一口食べる。——美味い。スパイスの香りとライムの爽やかな酸味が口いっぱいに広がる。


「すごい爽やかで食べやすい。美味しいなこのマチュ……グース?」


「マチュブース」


音羽が嬉しそうに笑う。


「音羽って、色んな国の料理作るよな」


「自分が色んな味を知って、食べる人には自分の料理で色んな味を知ってほしいの」


「すごいな」


「ふふ、ありがとう」



食事が終わり、片付けをする。


「今日も、ありがとうな」


「ふふ、どういたしまして」


「じゃあ、また火曜日な」


「ええ。また火曜日」


音羽が手を振る。


俺も手を振り返して、音羽の家を出た。


いつもの日常が変わらず続いていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

少しづつ周りに隠さなくしていこうと企んでた心と進展しねぇって心の心が二つあります。

あと四話ぐらいでプロット的には終わるつもりですが、おわるかな??

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