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15 二学期と歩み

九月って暑いよね

九月。


夏休みが終わり、二学期が始まった。


久しぶりの制服、久しぶりの通学路。


校門をくぐると、夏休み明け特有の賑やかさが耳に入ってくる。


「おいすー」


教室に入って軽く手を上げる。


「おっ、成島!」


「ナルシー、おはよう」


何人かが返事を返してくれる。


いつもの教室。


いつもの空気。


席に着いて鞄を置くと、二見が駆け寄ってきた。


「成島ー!夏休みどうだった?海行った?山登った?彼女できた?」


「矢継ぎ早すぎるだろ。宿題やってただけだよ」


「えー、つまんねー!俺は海行ってきたぜ!日焼けやばいだろ?」


二見が腕を見せてくる。


確かに、少し黒くなっている気がする。


「いいな。俺も行けばよかった」


「だろー?来年は俺らみんなで行こうぜ!」


「ああ、考えとく」


軽く返していると、稲葉が席に座った。


「おはよう、稲葉。夏休みどうだった?」


「その俺は……佐々木さんとさ」


稲葉が少し照れくさそうに笑う。


「リア充め」


「ははは、悪いな」


そんな会話をしていると、チャイムが鳴った。


HRが始まる。


担任の先生が教壇に立ち、出欠を取り始める。


「音羽」


「……」


返事がない。


「音羽美玲」


「……」


やはり返事なし。


音羽は相変わらず遅刻だ。



二時間目の授業が始まって十分ほど経った頃。


教室の扉が静かに開いた。


「失礼します」


音羽が入ってくる。


教室内がざわつく。


「音羽か。遅刻だぞ」


「すみません」


音羽は悪びれた様子もなく、自分の席に座った。


相変わらずの遅刻魔だな。



三時間目が終わり、休み時間。


俺は席で教科書を片付けていると、後ろから声がかかった。


「成島くーん」


振り返ると、額賀がニヤニヤしながら立っていた。


——嫌な予感。


「どうした、額賀」


「いやぁ、夏休みの話聞きたくてさぁ」


「夏休み?宿題やってただけだけど」


「ふーん、そうなんだぁ。でもさぁ、花火大会行ったよねぇ?」


その瞬間、背筋が凍った。


「行ったけど、またどこでそんな話を?」


「いやぁ、とある情報筋から聞いちゃってねぇ」


額賀がさらにニヤニヤする。


「誰と行ったのぉ?」


「誰とって言われてもなぁ……その、友達と?」


「友達ねぇ。目撃情報だとぉ、女の子みたいだねぇ?」


「だ、だとしたらなんだよ」


額賀の目が、一瞬鋭くなった。


「成島くん、隠し事は良くないよぉ?」


「隠してない!本当に友達だって!」


——嘘じゃない。でも、全部本当でもない。


慌てて返すと、二見が飛びついてきた。


「マジかよ成島!女の子と花火大会!?いいなー!誰誰?」


「うるさいぞ、二見」


「えー、教えてくれよー!おっぱいおっきい?」


「誰がその質問で答えるんだよ!?」


「えー?じゃあ成島よりでかい?」


二見め、さっきから相手のサイズ感しか聞いてこねぇ!何がお前をそこまで駆り立てるんだ。


「言いません、あっちでコロたけの動画でも見てなさい」


「ちぇー、フット?フェイス?インザドア失敗じゃんね」


「ドア・イン・ザ・フェイスだよぉ。失敗しちゃったねぇ」


危ない!!適当な発言かと思ったら額賀が一枚噛んでやがった、二見で良かったぁ。


「おい、成島」


「どうした、道枝?」


「俺たちは見ている。それを忘れるな」


低く絞り出すような声で道枝は告げた。こいつはこいつでどうしたんだ!?マフィアかなんかなのか?



昼休み。


俺は購買でパンを買って、教室に戻った。


席に座って包装を開けていると、ふと視線を感じた。


顔を上げると、音羽がこちらを見ていた。


目が合う。


音羽が小さく会釈する。


俺も慌てて会釈を返す。


——なんだろう、この感じ。


音羽といると、妙に落ち着く。


でも、最近は胸が騒ぐ。


矛盾してるな、と思いながら、パンを齧った。



六時間目のHR。


担任の先生が教壇に立つ。


「さて、来月の体育祭についてだが」


その言葉に、教室がざわつく。


「各競技の選手を決めるぞ。挙手してけ」


先生が各競技を黒板に書き出し、希望者を募っていく。


俺は斜め先の音羽の方向をちらりと見て動向をチェックする。


何に入れてくる?


簡単そうなのがいいかもな。


そんなことを考えた瞬間、音羽が手を挙げているのが見えた。


——音羽は玉入れか。


それなら、俺もそっと手を挙げる。


すると、教室のあちこちから手が挙がった。


「お、多いな。えっと……」


先生が数を数える。


「多すぎだ。何人か別の競技に回ってくれ」


「えー」


教室から不満の声が漏れる。


「じゃあ、成島。お前、借り物競走に回ってくれ」


「え、なんで俺?」


「お前、人当たりいいし足速いだろ。借り物競走は走る距離長いから頼む」


「でも……」


音羽と一緒の競技に出るって約束したんですけど……とはとてもじゃないが言えない。


「成島、頼むぞ」


「……わかりました」


首を縦に振る以外の選択肢はなかった。


——せっかく音羽と約束したのに。


その想いを飲み込んで、俺は小さく息を吐いた。


ちらりと音羽を見ると、音羽もこちらを見ていた。


『残念ね』


音羽の唇が小さく動く。


顔が熱くなるのを感じる。なんだあの色っぽさは!?


音羽が寂しく思ってくれているのは嬉しいが、俺今耳まで真っ赤なんじゃないか?


それに、周りの視線が気になる。


特に反対側の席の道枝がとんでもない表情で俺を睨んでいる。


教室の酸素が薄くなったんじゃないかと思うほど息苦しいことこの上ない時間を過ごすことになった。



放課後。


帰り支度をしていると、稲葉が声をかけてきた。


「ナルシー、一緒に帰ろうぜ」


「ああ、頼む」


二人で教室を出る。


廊下を歩きながら、稲葉が口を開いた。


「なあ、ナルシー」


「ん?」


「音羽さんと、仲いいよな」


「そうかな?そう……かも?」


「いいことだと思うぞ。音羽さん、普段あんまり人と話さないし」


「そうだな」


「お前といる時、少し楽しそうに見える」


その言葉に、心臓が跳ねた。


「そ、そうか?」


「ああ。だから、大事にしてやれよ」


「……うん」


稲葉の言葉が、胸に響く。


大事にする。


そうだな。


音羽との関係を、大切にしたい。


駅まで歩きながら、俺はそう思った。


「そういえば、佐々木さんとはどう?」


話題を変える。


「ああ、順調だよ。最近は一緒に図書館で勉強したりしてる」


「いいな、リア充」


「ははは、お前もそのうちな」


「そうかねー?」


「そうだよ。お前、いい奴だし」


稲葉が笑う。


その笑顔に、少しだけ勇気をもらった気がした。


駅で電車通学組の稲葉と別れ、駅の裏手にある家へと歩く。


マンションにつき、エレベーターに乗りながら、今日のことを思い返す。


額賀の質問。


道枝の詰問。


そして、稲葉の言葉。


——大事にする、か。


そうだな。


音羽との時間を、大切にしよう。


スマホが振動した。


音羽からのメッセージ。


『土曜日の掃除、よろしくね』


画面を見て、少しだけ笑った。


『かしこまりました、ご予約通りに』


返信して、スマホをポケットにしまう。


駅のロータリーを抜け、我が家へ帰る。


二学期が、始まった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

二学期が始まりました、ここから秋の間に体育祭、中間テスト、文化祭、期末で冬ですよ!つまりすぎじゃね?

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