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007 とあるサムライの剣術


「……後悔するなよ」


 黒尽くめの刺客達が、動く。


 その動作は素早く、そして音も無い。


 懐から取り出した短剣を逆手に構え、一瞬でラトラルとの距離を潰し、刃を振りかざす。


 急所は狙っていないのがわかる。


 依頼者が学院の純人間……貴族派閥なのだとしたら、先程の発言通り痛めつけるのが目的なのだろう。


 腕や足に、そこそこ後遺症の残る傷を負わせるつもりか。


「フッ」


 振るわれた刃を、ラトラルは最低限の身のこなしで回避した。


「ちっ!」


 攻撃を躱され、黒尽くめは覆面の奥で舌打ちをする。


「何してる」


 次の黒尽くめが、身を翻したラトラルの着地を狙い、攻撃を仕掛ける。


 だが、ラトラルはその攻撃も緩やかに躱す。


「こいつ……本当にただのガキか?」

「魔法学院の生徒だぞ。戦闘の訓練は積んでいると聞いているだろ」

「だが……」


 ラトラルの動きに、刺客達も驚いているようだ。


「……【(イニシエ)(コトワリ)】【■■■■】」


 一方、回避を行いながら、ラトラルは既に魔法の詠唱を開始していた。


 それに気付き、刺客達は詠唱を邪魔しようと更に攻撃の速度を速めてくる。


 だが、状況は変わらない。


 宙に飛び、地を転がり、的確に回避行動を行いながら、ラトラルは着実に詠唱を進める。


「【目覚メロ】【抗エ】【■■■】」


 通常であれば、これだけ派手な運動をしながらの詠唱は、息も集中も続かず不可能に近い。


 だが、ラトラルの体力の前では問題無かった。


「【暴食ノ牙】【創造】」


 ラトラルの手中で漆黒の反応光が瞬く。


 黒い瘴気を纏った刃――【魔法喰らい(ガラゲラノーツ)】が創造された。


「くっ……」

「なんだ、こいつ」


 刺客達も、流石に動揺を見せ始める。


 玄人染みた体捌きに、戦闘のプロである自分達を冷静に相手取る胆力。


 ただの学生ではないと、やっと気付いたのかもしれない。


(……なるほど)


 そんな彼等の一方で、ラトラルは自身を考察していた。


 今の自分の力量が、少しわかった。


魔法喰らい(ガラゲラノーツ)】の性能上、魔法相手には無類の強さを発揮する。


 しかし、魔法を使わない相手……強靱な身体能力を持つ魔獣や、目の前の刺客達のような相手にはただの白兵戦となる。


 だが、地道に積み上げてきた鍛錬。


 そして、伝説のエルフの追憶による影響で、直接戦闘能力も向上している。


 殺す気が無いとはいえ、おそらく戦闘のプロである、貴族の雇った刺客が全く問題にならないくらいに。


「ぐっ!?」

「ぐあっ!」


魔法喰らい(ガラゲラノーツ)】の峰打ちを腹部や肩に叩き込んでいく。


 一人、二人……黒尽くめの刺客達が、地面に膝をつく。


「引き上げてくれますか?」


 ラトラルは、距離を取って様子を伺っていた残りの黒尽くめ達に、刃先を向けてそう尋ねた。


「……おい」

「ああ」


 すると、刺客達は懐から何かを取り出す。


(……あれは)


 首元に光る、ペンダント式の魔法具。


 自動生成魔法具だ。


(……この人達も、自動生成魔法具を扱えるのか)


 いや、何もおかしくはない。


 自動生成魔法具の発展は目覚ましい。


 便利な技術が貴族だけではなく、純人間の様々な分野に出回り、応用されていても不思議では無い。


 裏稼業や、暗殺ギルドにだって。


「食らえ!」


 黒尽くめ達が魔法具を発動する。


 彼等の周囲に炎の塊や岩の塊が生み出され、それがラトラルへと投擲される。


 どうやら、彼等が使用しているのは第一世代の自動生成魔法具のようだ。


 即時模倣性はなく、シンプルな四大元素操作魔法しか使えない。


 流石に、最新のものまでは手にしてないらしい。


 まぁ、いずれにせよ――。


「ただの魔法が相手なら問題無い」


 ラトラルの【魔法喰らい(ガラゲラノーツ)】が、飛来した魔法攻撃を一閃で掻き消す。


 そして、絶句する黒尽くめ達から戦意を削り取るべく、剣を振り翳し躍り掛かった。




 ■ ■ ■




「……凄い」


 今日、何度この感想を口にした事だろう。


 貴族達の寄越した刺客達をも、全くものともしないラトラルの強さを前に、ハルカゼは驚嘆する。


 そして、同時に思う。


(……この人……)


 横に立つ、不審な男。


 ラトラルと刺客達の戦闘を眺め「おー、すっげ」等と、暢気な感想を口にしている、東方出身の男性。


 ラトラルの師匠――シロウ=ライゼン。


 ラトラルは、このダンジョンで彼に師事し、そして、あの驚異的な身体能力を手にしたと考えて間違いない。


(……この人、凄い人なのかも)


 ハルカゼは、グッと拳を握る。


 ラトラルは、夢のために、目標のために、全力で努力している。


 あらゆる手段を講じて。


 自分だって、強くなりたい。


 なら――答えは一つだ。


「シロウさん!」

「おわ、びっくりした。どうした? ハルカゼちゃん」

「お願いします!」


 いきなり大声を上げ、しかも頭を下げたハルカゼに、シロウはキョトンとした顔になる。


「あたしも、シロウさんの弟子にして下さい! あたしも、強くなりたいんです! 何でもします! ラトラルを鍛えたように、あたしも鍛えてください!」


 確固たる意思を込め、ハルカゼは懇願する。


 それに対し、シロウは「んー……」と、無精髭を摩りながら困ったように首を傾げた。


「いや、つっても俺、あいつに何か教えたことなんて一度もねぇよ」

「……へ?」


 シロウの言葉に、ハルカゼは頭を上げる。


「いや、やった事って言ったら、とりあえずダンジョンの深いところに連れて行って魔獣の中に放り込んでひたすら戦わせまくったくらいだな。外から食い物持ってきてもらうのと引き換えに弟子にはしたけど、ぶっちゃけ面倒くさかったし」

「め、面倒くさかった……」

「正直ビックリしてんのよ。まさか、あそこまで強くなるなんて……でも、まぁ、ある意味俺のお陰か? だとすると俺も結構凄くね?」


 真顔で自画自賛するシロウ。


「………」


 ハルカゼは言葉を失う。


 もしかしてこの人……本当は、ただのダメ人間なのでは?


 ラトラルは危険等級の高い魔獣に襲われていたところを助けてもらったと言っていたけど、それも偶然というか、何かの勘違いなのでは?


 実は、あんまり強くないんじゃ……。


「しかし、あいつすげぇな」


 ハルカゼの強まる疑心などどこ吹く風か、シロウはラトラルを見ながら言う。


「普通、一介の学生が刺客なんて仕向けられたらビビるんじゃねぇか? 殺さないとは言ってもよ。なのに冷静に応戦して。あんな肝が据わった奴だったっけ」

「………」


 確かに。


 ここ最近、ラトラルの精神が以前に比べて落ち着いているというか、どこか、大人びてるというか。


 ハルカゼも、そう感じていた。


 あの決闘の日からだ。


 個人的な印象の問題と言えばそれまでだが……。


 ラトラルには、他にも自分の知らない秘密があるんじゃ……。


「くそっ……何なんだ、こいつ……」

「引け! 引け!」


 ハルカゼがそんな風に考えている間に、決着が着いていた。


 手も足も出ず、片っ端から叩きのめされ、ラトラルとの実力差を理解したのだろう。


 黒尽くめの刺客達は、我先にと逃げていった。


「ふぅ……」


 刺客達の姿が消え去ったのを確認すると、ラトラルは一息吐く。


「終わったよ」


 そして、ハルカゼ達の元へと戻ってきた。


「まさか、僕に対する嫌がらせのためだけに刺客を雇うなんて……ビックリさせちゃって、ごめん」

「ビックリなんて……いや、なんていうか、色々と驚いてるけど。今はともかく――無事でよかった」


 そう、ハルカゼは負傷の無いラトラルに安堵する。


「……あと、ラトラル」

「うん?」

「この人、全然師匠じゃないじゃん!」


 ハルカゼは、シロウを指さし叫ぶ。


 流石に、そこをツッコまずにはいられない。


「全然何も教えてないじゃん! ラトラルを、ただ魔獣の群に放り込んで戦わせてただけだって! って事は、今の戦い方ってラトラルの我流じゃん! 全然師匠じゃないじゃん!」

「え!? で、でも、一応言われた通りにしてたら体は鍛えられたし、師匠は師匠じゃ……」

「騙されてるよ!」

「おいおい、ハルカゼちゃんいきなりどうした。さっきは自分も俺の弟子にして欲しいって言ってたくせに」

「シャラップ! その話は一旦保留! あなたは不審な点が多すぎる!」


 一転し、言い争いになるハルカゼとシロウ。


 そんな二人を困ったように笑いながら仲裁するラトラル。


 刺客達を退けた事で、どこか弛緩した空気が広まっていた。


 だが、忘れてはいけない。


 今ここは、ダンジョンの中だということを。


「――伏せて!」


 ラトラルが叫んだ。


 突然の大声に驚きながらも、ハルカゼもシロウも即座に身を屈める。


 三人の頭上を、空気を戦慄かせながら重厚な何かが通過していった。


 後方で轟音。


 見ると、地面に巨大な戦斧(バトルアックス)が突き刺さっている。


「な……!」


 今し方、自分達の頭上を通過したものの正体を知り、ハルカゼは驚く。


 そして、ラトラルの視線を追い、攻撃の主が何なのかも理解した。


 ズシ……ズシ……と、重い足音と共に、全身赤色の皮膚の巨躯が現れる。


 身の丈は二mを越える。


 腰回りを魔獣の毛皮で覆い、その上には岩のような上半身。


 口元から牙を覗かせ、額から角を生やした、凶悪な顔立ち。


「お……オグル!?」


 ダンジョンの魔獣には危険等級が設定されている。


 危険等級とは文字通り、遭遇した際に発生する被害率の高さを表わし……そのまま魔獣の強さに換算される。


 一番低いランクで五等級。


 そこから数が少なくなっていくに連れ、危険度は上がっていく。


 そして、このオグルの危険等級は二等級。


「おいおい、こいつは――」


 のんびり気味だったシロウも、流石に腰の得物に手を掛ける。


 その時だった。


「ゴォォッ!」


 シロウのすぐ近くの岩陰から、目の前に現れたものとは別の――“二体目”のオグルが飛び出し、シロウに殴り掛かる。


「危ない!」


 咄嗟、ハルカゼがシロウに飛び付く。


 ハルカゼに押され体勢を崩したことにより、二体目のオグルが振るった戦斧の一撃は、シロウのクシャクシャの髪を数本掠めただけに終わった。


「ハルカ――」


 ハルカゼとシロウに駆け寄ろうとするラトラル。


 が、ラトラルの前に最初のオグルが立ちはだかる。


「二体……いや……」


 ラトラルは周囲に視線を巡らせ、理解する。


 二体どころでは無かった。


 三体、四体、五体……続々と、オグルが増えていく。


「うそ……む、“群れ”?」


 ハルカゼは顔を青くする。


 魔獣の最も厄介な形態の一つが、群れ。


 単純な話、群れを構成する知能があるということは、連携、共同的行動を起こせるということ。


 個体時の等級など比較にならない程、危険度は上がる。


 上の階層で遭遇したブラッドラビットは、個体での危険等級は四等級だが、群れを成せば二等級。


 そして、オグルの危険等級は、“一体”で二等級。


 群れを成した際の危険度は――一等級を超える、“災害級”と化す。


「ラト――」


 複数のオグルが、ラトラルに襲い掛かる。


 それにより、彼の姿が消失する。


 分断された。


 ハルカゼの方にも、既に他のオグル達が接近してきている。


「【万象の素】【四柱の一角】【熾きよ】【盛れ】!」


 手短な詠唱で『火炎操作魔法』を発動。


 火球を周囲に浮遊されるのは集中力と魔力が必要なため、自身の掌の上という限定環境で生成維持する。


 右手の中に火球を練り、それを先頭のオグルに投げ付ける。


「シロウさん! あたしの後ろに!」

「やれやれ……さっきもそうだったけどよぉ、ハルカゼちゃんもしかして、俺の事守ろうとしてくれてる?」


 シロウの前に立ちはだかると、後ろからそんな気の抜けた声が聞こえてきた。


「正直、あなたの事は信用以前に、何も分かりません! わからない以上頼りにはしませんし……守ります!」

「……真面目だねぇ」


 そう溜息交じりの声。


「ゴォオオオオ!」


 戦斧を振り上げ、襲い掛かってくるオグル。


「流石に、こんな女の子に全部任せは男が廃るってもんでしょ」


 すっ――と、ハルカゼの前にシロウが歩み出た。


「ちょ、無闇に――」


 迂闊な行動に出たシロウに対し、慌てるハルカゼの視界の中で――シロウが、腰の得物を抜いた。


 流麗な波紋を描く、鈍色の長物――東方の武器の一種、“刀”。


 シロウは刀を構え、振り下ろされた戦斧を受け太刀……。


 否、違う。


 戦斧の攻撃は軌道を流され、シロウの真横の地面に深々と突き刺さった。


「グォッ」


 慌てて、戦斧を引き抜こうとするオグル。


「ふぅ」


 それよりも早く。


 シロウが刀を振り上げ、鋭い吐息を飛ばす。


 弧状の光だけを残し振り抜かれた刃が、オグルの丸太のような腕を叩き切った。


 一閃だった。


「え……」


 遅れて、空気に乗った衝撃が訪れる。


 地面に転がるオグルの首を見て、ハルカゼは絶句する。


 オグルの肉体は硬く、並大抵の人間の武器では薄皮を裂く程度しか効果が無いとも言われている。


 ゆえに、オグルを攻撃する際には急所である目や口の中なんかを狙うのだが……。


「オグルの腕を、一撃で……」

「ハルカゼ!」


 驚いていると、真横から声を掛けられた。


 振り向くとラトラルが立っていた。


「無事!?」

「う、うん、それより、ラトラルは……」

「何とか倒してきたよ」


 ラトラルの背後に、地面に倒れたオグルが二体見える。


 ……この短時間で、オグルを二体?


 目の前の男達が次々に起こしていく理解を越えた行動の数々に、思考が停止しかける。


「んだよ、まだまだいんじゃねぇか。おい、ラトラルちょっと来い」


 そんなハルカゼの一方、シロウがラトラルを呼ぶ。


「どうしました、師匠」

「いや、誤解を一個解いとこうと思ってよ」


 片腕を失ったオグルは自陣の奥へと下がっていった。


 残りのオグル達も、完全に警戒態勢でこちらの出方を探っている様子だ。


 そんな中、「そっちのハルカゼちゃんも聞いといてよ」――と、シロウは語り出す。


「俺がお前に剣術の教えを乞われた際、率直に言って、あの時のお前じゃ体が足らないと思った」

「体……ですか?」

「まぁ、運動能力とか気力とか耐久力とか……ともかく体にまつわる全部だ。だから、まずは短時間で手っ取り早く体を鍛える為に、お前を魔獣の中に突っ込ませた」

「なるほど、まずは肉体的に成長させる事を考えてくれてたんですね」

「で、その内、面倒くさくなった」

「……え?」


 ラトラルは、思わず声を漏らす。


「だってお前、すっげぇ元気だし、努力家だし、疲れとかまったく意に介さないし。このまま技術とか教えず放っておいても別に強くなるんじゃね? っていうか、技術を教えるのも結構面倒なんだよ。で、もうこのまんまでいいかって」

「……ええと、誤解を解くというのは?」

「いや、俺が何も教える気がないと思われてんだとしたら癪だろ?」


 ――結果的には一緒でしょ。


 ハルカゼとラトラルの頭に、同時にそんな言葉が過ぎった。


「って、思ってたんだけどよ」


 そこで、シロウはラトラルを一瞥する。


「今日、久しぶりにお前を見たら、単純な身体能力だけじゃなく、効率的な体捌きまで会得してた。理想以上に体が“完成”してる。今のお前くらいのポテンシャルなら、教えるのも楽そうだし、剣術を教えてやるよ」

「………」


 真面目なのか不真面目なのかよく分からない事を言った後、シロウは刀を構える。


「よく見とけ」


 言うと同時、シロウは一番手前のオグルとの間合いを潰す。


「ゴォ!」


 相手に選ばれたオグルも意を決したのか、戦斧を振り回し応戦する。


 こちらにまで風が来る、荒しのような攻め姿勢。


 だが、シロウはそんなオグルの攻撃を回避しながら、刀を振るっていく。


 一撃一撃は浅い傷しか作らない――撫で切りだ。


 だが、そんな攻撃を何重にも重ねていけば……着々と、オグルの体にダメージが蓄積されていくことになる。


 至る部位に傷が走り、血塗れとなる。


 更に、全力の攻撃を何発も躱され、オグルは息が上がっている。


 疲労が溜まり、集中力も鈍る。


 そして遂に、手が自身の血で濡れている事に気付かず、戦斧を取り落としてしまう。


「ここ」


 シロウが大きく刀を振りかぶり――そして、振り下ろす。


 致命の一閃は、意図も容易く会心の一撃と化す。


 オグルの首が、胴体を離れた。


「………」


 ハルカゼもラトラルも、見入っていた。


 相手を削り、自分は最低限の手数のみで勝負を決する。


 実に効率の良い、剣の戦い方だった。


「こいつらは相当硬い。だから、削って削って、致命の一撃をぶち込む。さっきお前が倒した二体よりも、もっと簡単に倒せるぜ」

「なるほど……了解しました、師匠」


 シロウが下がると、代わりにラトラルが前線に出る。


 そして、シロウと同じ方法で、オグルを効率的に倒していく。


 やがて――


「グァッ!」

「グァオッ! グァオッ!」


 次々に屠られていく仲間の姿を見て、残りのオグル達は戦意を喪失したのだろう。


 雄叫びを上げ、撤退していった。


「嘘……災害級の魔獣の群れを……退けた」


 オグルの群が現れたと理解した瞬間、正直、ハルカゼは生き延びるイメージが湧かなかった。


 気丈に振る舞っていたが、災害級という最悪のイメージが強く、心はどこか死さえ想定していた。


 だが――。


「ハァ、ハァ……」


 複数のオグルを次々に倒し終え、戻ってきたラトラル。


 深い呼吸を吐きながらも、彼は顔に手応えにも似た笑みを浮かべていた。


「どうでしたか、師匠!」

「うん、強くなりすぎ。お前に教える事はもう何もありません」

「ええ!? まだ一つしか教わってませんよ!?」


 岩に体重を預け、相変わらずの覇気の無い顔でそう言うシロウに、ラトラルがわたわたと纏わり付く。


 ハルカゼは、そんな光景を見詰める。


 ……今日は本当に、ラトラルに驚かされっぱなしだ。


 自分の知らない場所で、彼は学び、培い、成長していた。


 その種を植えていた。


 前例の無い魔法。


 強力な戦闘技術。


 それらを極め、ラトラルはどんどん強くなっていく。


 そして、率直に思う。


 このまま学院で、その力を遺憾なく発揮したら。


 もしかしたら本当に……彼の目指す魔法使いの最高峰。


《セレトロアの天球儀》に昇る事も、決して夢では無いかもしれない……と。


 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。


 今話を以て、一旦この小説は完結とさせていただきます。

 こちらの小説に関しまして、ご意見、ご感想などあればお送りいただけますと嬉しいです。

 現在、次回作も作成中ですので、今後の執筆の参考とさせていただきます。


 では、またどこかでお会いしましょうm(_ _)m

 ありがとうございました。

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