7 魔力
朝の光が差し込む宿屋の一室。さくらは緊張しながらも期待を胸に準備を進めていた。くーちゃんと共にレオリックとキーランが待つロビーへと降りると、二人は既に支度を整えていた。
「おはよう、さくらとくーちゃん。準備はいいか?」
レオリックが微笑みかけてくれる。
「はい、行きましょう。」
私は力強く頷いた。
三人は宿屋を出て、冒険者ギルドへと向かう。街の通りは活気に満ちており、さまざまな店が並んでいる。ギルドの建物は他の建物に比べて大きく、威厳のある佇まいだった。
ギルドの扉を開けると、中には多くの冒険者たちが忙しそうに動き回っていた。正面のカウンターには、耳と尻尾のある人が立っていた。
私はその人を見るなり、息をのんでしまった。
彼は堂々とした体格を持つ狼の獣人で、鋭い目つきと灰色の耳と尻尾が印象的だった。その姿は力強く、並々ならぬオーラを放っているように見える。
「こんにちは、グレイフ」
レオリックが挨拶すると、その横でキーランも片手を上げている・
「よう、レオリック、キーラン。その隣のお嬢さんは……」
グレイフと呼ばれた方が目を細めて私を見る。
「彼女はさくらといいます。昨日、東の森で出会ったんです。」
レオリックが紹介をしてくれた。
「森で?」
グレイフが興味深そうに尋ねる。
「はい。ヴァーグに襲われているところを助けたんです。昨日グレイフが言っていたヴァーグだと思うんですが」
「なるほど、大変な状況だったな。しかし、無事で何よりだ。」
グレイフが頷く。
「それで、グレイフ。彼女のことなんですが……」
レオリックが本題に入る。昨日の夕食の後、冒険者ギルドのギルドマスターに事情を話し、協力を仰ごうと話が決まったのだ。
「なるほど。冒険者登録は良いと思うぜ。そういう事情があるなら、なおさらな」
グレイフは頷くと私を手招きする。
「こちらの水晶に手をかざしてくれ。」
グレイフは大きな透明な水晶を取り出し、カウンターの上に置く。
私は緊張しながらも、グレイフの指示に従って水晶に手をかざした。
そうすると、水晶が淡い光を放ち始めた。次第にその光は強くなり、黄色くまばゆく光を帯びる。
「これは……すごい。さくら、君にはかなりの魔力があるようだ。」
グレイフが驚いた様子で言った。
「魔力……私に?」
私は信じられない気持ちで水晶を見つめる。
「そうだ。魔力を持つ者は珍しいことではないが、さくらのように強い魔力を持つ者は稀だ」
レオリックとキーランも驚いた表情でさくらを見つめていた。
「さくら、すごいじゃないか」
レオリックが、まるで自分のことのように嬉しそうに声をかけてくれる。
「さくらの魔力は黄色なんだね」
キーランが水晶を見ながら言う。
「色?」
「そうだよ。魔力の色は人によって違うんだ」
レオリックはそういうと、手を伸ばし水晶に手をかざす。すると、水晶は今度は薄く水色の光でゆらゆらと小さく光りはじめた。
「わぁ……!」
「僕は魔力0」
そう言ってキーランが水晶に手をかざす。だけど、水晶は何も反応しなかった。
「まぁ、獣人だからな」
グレイフとキーランが二人そろってため息をつく。
獣人は魔力がないんだ……?
いや、でもでも、私に魔力って!
自分に魔力があるなんて信じられない。
アニメや漫画で見たような魔法を私が使うことができるんだろうか?!
先ほどまで感じていた緊張や不安がどこかに飛んで行って、今はドキドキとワクワクでいっぱいだ。
それに、重そうな剣や盾をもたなくても、魔法が使えるなら木の棒みたいなのでいけるんじゃ?
魔法で戦うなら、私にも冒険者がつとまるかもしれない!
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