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4 レオリック視点 さくらとの出会い

 ―――レオリックの視点





 森の入り口に到着する。

 東の森は日が差し込むと美しいが、薄暗くなると一気に不気味な雰囲気が漂う場所だ。特にヴァーグのようなモンスターが潜んでいるとなれば、一層の警戒が必要だ。


「慎重に進もう、キーラン」


 俺は声を低くし、キーランに合図を送った。彼も頷き、鋭い目つきで周囲を警戒しながら歩を進める。


 森の中は静寂に包まれており、足元の枯れ葉がカサカサと音を立てる。キーランは鼻をひくつかせ、何かを感じ取っているようだった。


「レオリック、何かの匂いがする……」


 キーランが耳を立て、周囲を見渡す。その瞬間、彼の表情が一変した。


「こっちだ! ヴァーグと、何かよくわからない匂いがする!」


 彼は一気に走り出し、俺も急いで後を追った。キーランは犬の獣人なため、人間の俺より足が速い。距離が開かないように走りながら、剣を手にもつ。


 キーランに先導され森の奥へと進むと、そこにはヴァーグと、少女がいた。ヴァーグの鋭い牙が光って見える。獰猛な目が光り、低く唸り声を上げながら少女に迫っている。少女は立ちすくみ動けないでいるようだ。


「シャアアアアァア!」



 小動物の威嚇が聞こえる。

 まだなにかいるのか?!と思ったが、よく見てみると少女の前に小さな黒い生き物が見える。


「……猫?」


 キーランが呟く。

 ヴァーグは威嚇した猫に照準を変えたようだ。そしてその猫に向かって牙を剥き出し跳んだ。


 すると、その猫が黄色く光る。ヴァーグはその光に当たり跳ね返されたようだ。


「魔法?」


 キーランが驚き目を見開く。



 太古の昔、この世界エルシアの大地は壮大な魔法の力に満ち溢れていた。

 ある日、強大な力をもつ魔法使いが実験を行った結果、魔法が制御不能に陥り、爆発的なエネルギーが解放された。このエネルギーは、森や山々を通り抜け、世界中の動物に影響を及ぼし、異常な進化を引き起こす原因となった。

 動物たちはそのエネルギーの力によって肉体が強化され、人間の姿を取るようになり、知性を持つようになった。それが獣人の誕生の始まりと聞いている。


 獣人は耳やしっぽといった動物特有の特徴が残っており、その変化前の動物としての能力も受け継がれている。

 例えばキーランは犬の獣人であり、嗅覚が優れ足も速い。高い回復力を持ち、寒さや暑さに対する耐性も高い。

 レストード村のギルドマスターのグレイフは狼の獣人であり、強靭な体躯に加え夜目も効く。高い敏捷性と力を持ち、戦闘に特化している。


 そして、全ての獣人には魔力がない。その理由は諸説あるが、エネルギーを受けても変化しない動物も多く存在し、その場合はもともと魔力をもっていないこと。魔力をもっていた動物はエネルギーの影響を受け体が変化し、その時に魔力を使い果たしたと言われる説が濃厚だ。


 かといって変化前の動物としての体をもつものは珍しい訳ではない。ドワーフの王国がある遠くの大地では、動物としての姿を保ったままの犬や猫などの動物が住んでいるという。そうした動物たちがこちらの大陸に進出し、根付いているのだ。


 変化前の動物たちに関しては会話ができないので詳しくは語られていない。魔力を持っているのではないか、というのも推察でしかない。

 そのため、目の前の黒猫が魔法を使ったということに驚いたのだ。


 ヴァーグも驚いたのか、戸惑ったように後ずさりをしている。

 これは、チャンスだ。


「伏せろ!!!!」


 俺は剣を構え、大声で目の前の少女に叫ぶと、ヴァーグ目掛け剣を放った。一直線に飛んでいった剣はヴァーグの腹に突き刺さる。


「ギャア!!」


 ヴァーグの叫び声が響く。腹を貫いたため、致命傷だ。ヴァーグはヨロヨロと歩きかけたが、そのまま横倒しに倒れた。


「大丈夫か?」


 ふぅ、と息をつき、声をかける。少女は放心したように立ち尽くしていたが、慌てて返事をした。


「だ、大丈夫です……」


 消え入りそうな少女の声に不安が残る。


「……怪我はない?」


 同じように不安を感じたのか、猫を見ていたキーランが俺の横に並び少女に声をかけた。

 すると、少女はキーランを見た瞬間、目をまんまると見開き凝視をした。


「……?」


 キーランは思い切り眉をしかめながら少女を見ている。

 キーランはわからなそうだが、俺はこの反応を知っているぞ。人間の領土で集落といった閉ざされた村などでは未だに獣人を見たこともない者がいる。


「獣人を見るのは初めてかい?」


 目を見開き、口も開けっ放しの少女の顔を見て思わず噴き出してしまった。

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