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ジェネリック・君

作者: ロック

ラブホテルの窓からから見える夜景は今日も綺麗だ。

君は、辛辣な現実を僕に言い過ぎだから、僕は接吻で君を黙らせ、僕はショートピースを吹かす。

君の仕事は、世間的には誉められたものではないが、それでも社会人的感覚が麻痺するほどの金額を稼いでるのは事実だ。


「ナツキ」

「なぁに?」

ナツキにハグをする。

「レンくん、私のこと大好き過ぎじゃん」

「ナツキは、俺のこと好きじゃないのかよ」

「大好きだよ」


脳死でこんな会話をしている、僕は前職の"名ばかり法人営業"で心を壊した。

企業に対し、高額なソフトウェアを売るという仕事で、契約後は既存顧客のサポートは、皆無と言って良いだろう。

高額な月給を稼いでる人もいたが、僕は基本給+残業代しか稼いでなかった。


職場内では浮いた存在で、そして顧客折衝において心を痛め、そして飲み会で個性は出せず、自分が大学院で学んだ研究についてや企業の有価証券報告書についての持論を語ろうとするならスルーされる。

ずっと僕は人に興味が持てず、自分の研究分野ばかりにフォーカスしていた。

負けることはない、俺は、社会的弱者ではない。

発達障害というハンデを抱えた僕はこの会社で成功してやる、発達障害が本来苦手とするコミュニケーションというのを反復によって改善させてやる…と思っていた。


だが、そんなことは現実的ではなかった。

結局、僕は職場で浮き、そして僕の女神であるトキエさんも結局は1人の低俗な凡人に過ぎなかった。

僕は自分の力を過信しているわけではない、僕は今は無気力となり部屋の片づけすらできない。

歪な理想が、僕を苦しめる。


〜歪な妄想の内訳〜


僕は出社し、まず同僚にOSの進化についてを一通り語ったあと、午前は顧客獲得に向けて業務を行う。

ランチは論文を読みながら、サンドイッチを頬張ると、隣にいるシースルーの髪型の同期が僕に「何を読んでるんですか?」と僕の論文に関心を示してくれる。

僕は、その論文に関するトピックを語る。

浮かれながら昼は、既存顧客のサポートを行い、そして資料を作成する。

仕事の途中、トキエ姫が僕にコーヒーを渡す。

「かっこいいですね、レンさん」

「グフフフありがとう君は、女神を彷彿とさせる美しさだよグフフフフフ」

「レンさんって面白い笑い方をするんですね。頭もいいし仕事もできるし、素敵です」

「そんな君には宇宙定数について今度教えてあげるよ」

「ありがとうございます!」

「逓信省の沿革についても興味ある?」

「興味あります!お話聞かせてください」

「ありがとう姫」


上司が僕を呼んでいる。

「なんでしょうか」

「今期も営業成績トップだね、君は優秀だよ。なんでこんなに契約を取れるのかい?」

「僕は、この会社で出世して、考古学の魅力を部下に伝えたいんだ」

「君の出世を楽しみにしてるよ」

「はい、上司」


仕事が終わり、自宅に帰り、シャワーを浴びその後はパルミジャーノ・レッジャーノを利用したカルボナーラを食べ、就寝する。

休日は大学に行き、論文を読んだり、喫茶店に行って論文を記述したり、たまに小説を書いたりする。

こんな日常を送る〜


「ねえ、レン」

「な、ナツキ?」

「何ぼーっとしてるの?」

過去、妄想、僕は様々な方向へ意識が向いていたようだ。

僕は、現実に愛してる女が目の前にいるのに、元大手アイドルのナツキと性行為を営んでいるというのに、ずっと悲観している。

「レンくんっていつも不思議だよね、ずっとポカーンとしてるし、元カノのこと考えてるんでしょ!?」

「あ、いや違うよ僕は、日本電信電話とAT&Tの違いはなんだろうって考えてただけだよ!」

「もう!また難しいこと考えてる!私の前では難しいこと考えないの!わかった?」

「うん…」


本来はもっと興奮するべきなんだろう、でも過去のことばかりに意識がいって、眼前の現実なんてどうでもよく感じるほどだ。

ナツキとは、前職を辞めてから1週間ほどでSNS上で知り合った。

たまたまナツキの裏垢を見つけ、趣味が合い、そのまま意気投合。

ナツキには当時付き合ってた男がいたけど、僕は彼女にイエスマンとして話を聞き続けたら…関係が深まった…というのであろうか。

もちろん僕の研究分野においてナツキは関心はない。

だから基本ナツキの話を聞き続けてる。

何故僕がこんなにもナツキを愛しているのか。


それはナツキが、僕が過去に溺愛した女性を彷彿とさせるからだ。

その方は、ミサと言い、僕の哲学や臨床心理学に関するトピックを興味がありそうに聞いてくれた。

彼女は僕が育った施設の職員だったが、ある日の帰宅途中に交通事故で帰らぬ人になった。

僕はずっと彼女と似た存在を追い求め続けた。そして出会ったナツキは、まさにジェネリック・ミサなんだ。

ただ、僕の哲学に関しては関心がないようで殆ど聞くことはない。むしろ僕の方が話を聞いている。

それでも僕はナツキを愛してる、そのミサのような笑顔を見せる君を…。


しばらくの性行為の後、ナツキは「じゃあまたね」と手を振り、彼女は大須のホテルを後にした。

俺は、大須の夜空を見上げた。

「ミサは、星座が好きだって言ってたな…」と俺は一言こぼした。


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