〜お世話され慣れていない姫とお世話したいメイド長③〜
「こちらが大浴場でございます。お部屋にも小さな湯浴み場はありますが、折角なので本日はこちらをお使い下さい」
「わぁ・・・・・・」
食事を終え、地下にある大浴場にピナ様をご案内すると、その威容を目の当たりにした途端彼女は感嘆のため息を漏らした。・・・分かるなぁ。私も初めてここに連れてこられた時は、暫く開いた口が塞がらなかった。
広々とした空間は、全て艶やかに磨かれた石で造られており、幾つもの小川のような水路からは、不思議と癒される香りがするお湯が流れ込んでいる。
派手な彫刻などは置かれていなくとも、清潔感と温かな光に満たされたこの空間は、美しいという他無い。
「さ、ピナ様。脱衣所はこちらです」
「あ、はい・・・・・・えっと、もしかして、ソアヴェさんもご一緒に?」
「もちろんでございます。私はピナ様のお世話を仰せつかっておりますので。お背中を流させて頂きます」
まあぶっちゃけ、お客人をもてなすのにそこまでした事なんて今まで無いけど。こんな可愛い子の背中を流せる機会なんて早々無いし。
・・・・・それに、後であのヘタレ魔王様に自慢して煽るのも楽しそうだし、ね。
「そんな! だ、大丈夫です! 母国ではいつも、自分の世話は自分でしておりましたので・・・・・」
「いえいえいえ。これもメイドの務め。それとも、ピナ様は私と湯浴みをするのはお嫌でございますか?」
「い、いえ、決してそのような・・・・・・・」
「では、参りましょう。さあさあ、そうと決まればドレスをお脱ぎ下さい。お手伝いさせて頂きますからね」
「え!? そ、それは流石に自分で出来ますから!」
「まあまあ、遠慮なさらずに。・・・うふふ」
食事をしたお陰か、先程までより幾分かお元気になったようで何より。
「うぅぅ・・・」
「あら! ・・・まあまあ、やっぱり綺麗なお身体ですね」
スルスルとドレスを脱がして行くと、白く華奢な肩や、折れてしまいそうなほど細い腰が露わになる。
お胸も大きくは無いけれど、綺麗な形でしっかりと主張している。
・・・・・・でも、充実した食事を摂っている王族や貴族なら、本来もっと肉付きは良い筈よね。
「あ、あまり見ないで下さい。この様な貧相な身体・・・」
「そんな事はありませんよ。それに、毎日このお屋敷で食事をしていれば、嫌でももっとお肉が付きますから。昔の私もそうでしたし」
自分もメイド服を脱ぎ、タオルを身体に巻いてから、ピナ様を浴場へと促す。
「・・・・・・肉付き」
私の身体、主に胸に視線を注ぎながら、彼女はぽそりと何かを呟く。
「ん? どうかされましたか?」
「い、いえ! えっと、ソアヴェ様はもともと、魔王様にお仕えする家系の方では無いのですか?」
「ああ、そう言えば、その話をしておりませんでしたね・・・」
私は鏡台の前に彼女を座らせ、石鹸を泡立てながらゆっくりと口を開く。
「私は、いえ、この屋敷に仕えている者達は皆、もともと貧民街の孤児だったのです」
「え・・・・・・」
「驚かれますよね。・・・もう七年も前になります。あれは、シャル様が魔王の玉座に着かれて、まだ間も無い頃の事で・・・・・・」
ピナ様の身体を洗いながら、私は懐かしくも愛おしい、我らが魔王様との出逢いを語る事にした。
次回は回想ですが、やっと魔王様が出てきそうですね。・・・・・・肉付きw




