〜お疲れ魔王とWメイド?③〜
「はぁ〜〜〜〜〜〜」
なみなみと湯が溢れる浴槽にどかりと腰を下ろした俺は、身体に染み渡る温もりの分だけ、ここ数日で溜まりに溜まっていた疲れを吐き出した。
まあ、魔力や体力的にはピナのおかげですこぶる調子が良いので、主に気疲れなのだが。それでも、温かい湯は身体だけでなく心まで解きほぐす様に、俺を包み込んでくれている。
「・・・・・・にしても、結局ピナとソアヴェのあの格好は何だったのだろうか?」
暫く湯に浸かって癒された俺は、少しだけ心に余裕が出来たのか、気づけば先ほど放棄した思考を再開していた。
まあ、微かに聞こえたピナの言葉にもあった様に、十中八九ここ最近気を張り詰めていた俺を労うために、彼女たちなりに考えて行動してくれたのだろうが、ソアヴェの態度は明らかに悪ふざけも多分に含まれていたし、存外、それほど心配はかけずに済んだのかもしれない。
「とは言え、やっぱり気を使わせてるんだろうな・・・・・・」
「いえいえ。私たちのご奉仕が始まるのはこれからですよ」
「は? 一体何を言って・・・って、どぅわあああああああっ!? お、おま、どうして浴場の中まで入って来てるんだ!? と言うか何でまだその格好なんだよ!?」
独り言のつもりだった呟きに返された思わぬ言葉に振り向くと、そこには先ほどの露出の激しいドレスにエプロンという刺激的な格好のままのソアヴェが、当たり前の様な顔をして正座していた。
・・・いくら風呂に浸かって気が緩んでいたとは言え、俺が全く気配を悟れなかった、だと? こいつ、いつの間にここまで気配を消すのが上手くなってたんだ?
「何でと言われましても、これが今日の私たちの正装なので」
「いや、そんな『は? 何言ってんのこの人?』、みたいな顔されても、こっちは全く意味不明なんだが・・・」
「・・・ああ、そう言うことですか。全く、そうならそうと早く言って下されば良いものを」
「え?」
ソアヴェは何を思ったのか、おもむろに自分の背中へ手を回すと、するりとエプロンの紐をほどいた。
当然、そうなると彼女は、その美しい曲線を描く脚と強烈な存在感の胸元を激しく露出させている、艶かしいドレス姿となり、しかも湯気のせいで湿ったのか、うっすらと透けて下着まで見えてしまいそうに・・・・・・っておいおいおいおいっ!?
「ちょっ!? 待っ!? 何で突然脱ぎだしたんだ!?」
「シャル様が仰ったのでは無いですか。何でまだそんな格好なんだと。つまり、浴場では服を脱げ、と言うご命令ですよね?」
「それどこの暴君!? そんな訳無いだろ! いいからもっと肌の隠れる服を着てくれ! ん? いや、そもそも男湯にお前がいることがおかしいだろ! 早く出ていけ!」
当然だが、浴場は男性用と女性用で別々だ。日によって入れ替えることはあっても、混浴の制度などうちの屋敷にありはしない。
「・・・・・・私の身体では、ご不満ですか? では、恥ずかしがって入り口で立ち往生しているピナ様を力づくで連れて参ります」
「そんなこと一言も言って無いよね!? と言うかピナに何させようとしてんだ!」
あからさまに悲しげな表情で入り口に向かおうとしたソアヴェを、俺は全力で止めにかかる!
「きゃっ!?」
「へ? うおっ!?」
だが、思わず立ち上がった勢いのまま彼女の腕を掴んでしまい、しかも不注意のあまり足を滑らせて後ろ向きに倒れてしまった!
「っ、ソアヴェ!? 大丈夫か!?」
「・・・・・・は、はい」
俺に引きずり込まれるようにして浴槽に落ちてしまった彼女は、ずぶ濡れになった自分の身体をかき抱きながら、俯いたまま小さく頷いた。・・・良かった。怪我とかは無さそうだな。
「あ、あの、シャル様?」
「ん? どうした? もしかして、やっぱりどこか痛めたか!?」
「いえ、そうでは無くて! その・・・・・・」
「っ!?」
ソアヴェはつい先ほどまでの落ち着き払っていた態度が嘘の様に、何故か急にもじもじと身を縮める。
心なしか、頬も先ほどより赤く、それこそピナのような恥じらう姿に、俺は思わずドキりと鼓動が早まった。
「・・・・・・あ、当たっているのですが」
「当たってって、何がだ?」
「だから、その、シャル様の・・・・・が、私の・・・っ」
「え・・・・・・・あ、ああああああああああっ!?」
あまりに混乱し過ぎて状況を全く把握出来ていなかった俺は、今の自分と彼女の体制、そしてどうしようも無く伝わってくる温かく柔らかな感触を今更に意識して、浴場どころか屋敷中に響く様な絶叫を迸らせた。
俺の膝が、彼女の股の間に食い込んでいたのだ。
簡潔に説明すると、今ソアヴェは、俺の膝の上に馬乗りになっている様な状態なのである。
「す、すすすすまないっ!?」
「んんっ! シャ、シャル様、そんな急に抜こうとしたら・・・あっ・・・・」
「へ、変な声を出さないでくれ!?」
どうにか彼女の股の間から脚を抜こうとするも、体重が乗っているせいで上手く動けず、余計に彼女の・・・その、あ、あれな部分と接触してしまい、俺は慌てふためいて声を裏返しながら必死にもがいた。
「ひゃっ!? ちょ、シャ、シャル様ぁ・・・」
「っっっっっっっ!? ・・・・・・・・あ・・・」
どんどん熱を帯びていくソアヴェの声に、俺はますます頭が沸騰し、徐々に視界がぼやけて行く。
「え? シャル様? シャル様っ!?」
そして、彼女のその声が耳に届いたのを最後に、意識が遠のいていき、視界が真っ暗に染まった。
・・・せ、攻め過ぎましたかね? まあ、大丈夫だよね! きっと!
敢えて今回はコメント少なめにさせて頂きます。・・・まあ、うん、アレなんでw
悪ふざけにいつもお付き合い頂いている皆様、今回初めてお読み下さった皆様、すいません。ありがとうございます。
つ、次のお話はもっと真面目に書くから! 多分!




