〜元魔王と???〜
「おうおう。随分と威勢の良いことだ」
薄暗い部屋に、男の愉快げな声が響く。
蝋燭の揺らめく明かりに照らされたその横顔は、涼しげな相貌でありながら、口元に浮かべる笑みは獰猛な獣の如きそれだった。
側から見れば、男は片目を瞑って独り言をこぼしているだけだが、その瞼の裏に映っているのは、彼の眷属がその目で見た光景だ。
哄笑を上げながら、自分を殺すと宣言する息子の様子を見届けた男は、そこで眷属と共有していた視界を閉じ、手に持っていたグラスを傾け酒を煽る。
「にしても、まだあの程度とはな。予想以上に期待外れだ。・・・・・・なぁ? お前もそう思うだろ?」
男の問いかけに応じたのは、従者の様に自分の背後に控える、白銀の鎧を纏った小柄な騎士だ。
「私は、あの卑劣な魔王に期待などしていないので」
「ははっ! それもそうか。悪い悪い。聞いた俺が馬鹿だったよ。これから‘‘勇者’’になるお前に聞くことじゃなかったな。ククッ」
酒に酔えるほどやわな身体でも無いにも関わらず、男はどこまでも愉快そうに笑う。
「あの偽物を殺せるなら、‘‘勇者’’だろうが‘‘魔王’’だろうが、私は何にでもなってみせます」
鎧兜で顔が隠れていても、騎士の声音からは憎悪と殺意が漏れ出ていた。
「ああ、そうだよな? あの偽物に奪われた、お前の大切なあいつを取り戻すためには、奴を・・・魔王シャンベル・ギブレイを殺すしか無い」
「はい。必ずや、この手で奴を葬り、お兄様を取り返します」
「期待しているぞ。愛しき我が娘よ。・・・・・・ククッ、ハッハッハッハッ!」
堪え切れないと言わんばかりに大声で笑い出したその男を、鎧の騎士はただただ静かに見つめ続けていた。
何だかフラグが乱立して参りました。果たして作者は全てを回収できるのか!?
・・・まあ、その辺も込みで生暖かく見守って頂けると幸いですw
短い回だったので後書きも短めにしときます。
今話も皆様、お付き合い頂きありがとうございました!




