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〜涙と、涙〜


「・・・・・・とまあ、そんな事があって、俺は魔王の座に着いたんだ」


「っっっ・・・!」


 俺の話を聞き終えたピナ姫は、ぽろぽろと清らかな滴を幾つもを(こぼ)し、口に手を当てて必死に嗚咽(おえつ)を堪えていた。


 ・・・また、泣かせてしまったな。けれど、他者の心に寄り添い過ぎてしまう彼女がこの話を聞けば、きっと涙を流すと俺は何となく分かっていた。


 それでも、そんな彼女だからこそ、俺は聞いて欲しかったのかもしれない。


「それから、俺は今日に至るまで反発を受けながらも力で血の気の多い配下たちを黙らせ、強引に新たな法を制定したり、悪しき慣習や文化を無理やり叩き潰して来た。・・・・・・もう想像は付くと思うが、その過程でもこの手は数多(あまた)の血に汚れている」


「っ・・・・・・はい」


「だからこそ、俺は魔王で在り続けなければならない。背負った罪の分だけ、己を戒める義務がある。・・・と、思っているのだがな。それでもピナ姫。お前は、俺にこの屋敷では()()()()()()に戻っても良いと、そう言ってくれるのか?」


 涙こそ流してはいない物の、その時俺が彼女に向けた顔は、きっと泣き笑いの様な無様なそれだっただろう。


 けれど、ピナ姫は笑うでも怯えるでも無く、初めて共に茶を飲んだ時にそうした様に、手を伸ばしてそっと俺の頬に触れた。


「それでも、です。・・・・・・シャル様の行いが正しいのか間違っているのか、私に断じることは出来ません。あなた様が仰るように、命を奪うことは、きっと大罪なのでしょう。けれど、シャル様がその手を汚さなければ、救われなかった方もたくさん居るのだと思います。・・・・・・それに、妹君やお義母様は、きっとシャル様が苦しむ事を望んではいないはずです」


「っ・・・!」


 俺は今度こそ堪え切れなくなり、自分の目元を手で覆う。


「このお屋敷には、お二人との思い出が詰まっているのでしょう? なら、せめて、せめてここにいらっしゃる間は、魔王である事を忘れても、良いのでは無いでしょうか?」


「ピナ姫・・・・・・」


「・・・いえ、()()()()()()()()()()。シャル様。このお屋敷にいらっしゃる間は、魔王シャンベル・ギブレイ様では無く、シャル様としてお過ごし下さい。望みがあるなら言えと申されたのはあなた様です。私のお願い、聞いて頂けますか?」


「っ・・・・・・ありがとう。ありがとう。()()


 そう言って、濡れた瞳のまま微笑んだ彼女の手を取った俺は、暫くの間(すが)るように、その手を握りしめ続けた。

イチャイチャ、と言うにはシリアスみが抜け切らない回にはなってしまいましたが、この章のフィナーレとして、どうしても描いておきたいシーンだったのでご容赦下さい^^;


でも、遂に魔王様が姫君を呼び捨てにしました! 呼び捨てですよ呼び捨て!(←アホ)


次章はちょこちょこバトルなんかを描きつつも、ほのぼの日常パート多めにする予定ですので(あくまで予定ですが・・・)、末長くお付き合い頂けると嬉しいです!


ちょっと暗めな章になってしまいましたが、お読み頂いだ皆様ありがとうございました! 

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