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〜いきなりお泊まり!? 童貞魔王にはハードルが高過ぎる!〜


「きょ、今日からここがお前の住む屋敷だ」

 

「・・・・・・はい。魔王様」


 一先ず俺は、文句を垂れる配下共を黙らせ、ピナ姫を自分の屋敷に連れ帰った。


 本来なら使者の類は魔王城の客間に泊めるのが常なのだが、あの様子だと同盟に不服のある配下が彼女を暗殺しようと馬鹿な真似を起すかもしれないからだ。


 実を言うと、このような事は初めてでは無い。今までも似たような形で人質として送られて来た使者を、直接尋問するとか適当な理由を付けて屋敷に匿っていた事はある。もっとも、大抵は奴らの目を盗んでさっさと逃してやるのだが・・・・・・今回は少々、その、ほんの少しだけ長く置いてみようかと思う。


 いや、だって、なあ? あれだろ? いきなり女の子一人外に放り出すとか危ないし、国に送り返すにしても何かしら口実作ってあげないと、もしかしたら帰ってから酷い目に遭わされかもしれないし?


 断じて個人的な感情から来るアレとかじゃないぞ? いや確かに可愛いけど。めっちゃ可愛いけど。何この大きな瞳。宝石? だとしたらめっちゃ高いんじゃない? 国家資産で足りる?


「あの、魔王様?」


「ん? な、何だ? ああ、屋敷の中なら自由にして貰って構わないぞ。風呂も食事も、給仕の者が控えているから好きな時に頼むと良い」


 無表情ながら、恐らくまだ怯えがあるのだろう。必死で抑えていると思われる震える声で問いかけてくる彼女に、俺は少し早口になりながらも努めて明るい声で返事をする。・・・・・・明るく、なってるよな?


「その様な贅沢・・・・・・・(めかけ)の身には余る施しでございます」


「は? 妾?」


 どう見ても生娘にしか見えない清楚な彼女の口から、とんでもない言葉が飛び出し、俺は思わず間抜けな顔で問い返す。



「私の様な端くれの姫は、どうか給仕の方よりも粗雑に扱い下さい。私に何があっても、我が国が魔王様に牙剥く様な事は今後決してございませんので」


「ま、待て待て待て!? 何を言っているんだ!? 俺は別に、お前を妾にするつもりも、こき使うつもりも無いぞ!」


「・・・・・・そう、ですよね。私では、妾にして頂くのも分不相応という物」


「何でそうなる!? いや違うぞピナ姫! そういう意味じゃない!」


「・・・? ですが、ここは魔王様のお妾方を囲っていらっしゃるお屋敷では? 王妃様が魔王城にいらっしゃるから、私をここにお連れになったのではと・・・・・・」


「え? ああ、そういう事か・・・・・・」


 確かに、交渉の道具として嫁がされ、いきなり王城から連れ出されれば、そういう勘違いをしてもおかしくは無い、か。・・・・・・それにしても、この子は何でこんなに卑屈なんだ?


「それは勘違いだ。ピナ姫。俺はまだ妃を迎えてはいない。魔王城にお前を置かなかったのは、単に俺の側にいた方が安全だと判断したからだ」


「魔王様の、お側に? ですが、魔王様は・・・・・・」


「俺が住んでいるのも、この屋敷なんだよ。魔王城には形ばかりの寝室と、執務室、そして玉座の間があるだけで、他の部屋は客間と配下共の居室に使わせている。ピナ姫は、我が国の内政について、どの程度知っている?」


「・・・・・・恐れながら申し上げますと、力による支配を信条とする、武闘派の国家であると」


 今まで以上に怯えを滲ませるピナ姫の様子に、俺は肩を竦めつつ、軽く笑い声を上げてみる。


「ははっ。随分とマシな言い方をしてくれる。・・・・・・っと、そうか。いつまでもこんな格好だから、余計に怖がらせてしまうのだな。・・・・・・ロクサス。ご苦労だった。今日はもう休め」


 鎧姿のままだと気づいた俺は、()()()()()()()()()()そう呟く。


 すると、鎧が一瞬だけ強い光を放ち、そのまま微細な粒子となって空気に溶ける様に消えて行った。

 後には、黒一色のシャツと同色のズボンを履いた青年姿の俺が立っているだけだ。


「っ!?」


「驚かせたか? すまない。これが俺の本来の姿なんだ。・・・・・・ふ、普通過ぎて、幻滅させたかな?」


 突然の事に目を丸くするピナ姫に、俺は下手くそな苦笑いを浮かべて出来るだけ柔らかく話しかけてみた。・・・・・・最後の方にどもってしまったのは、人族から見て俺の容姿がどう写るのか、自信が無かったからだ。


 いやだって、鎧を纏わずに人族と接する事なんてまず無いし。よく目にする人族の兵士達の容姿から察するに、耳が少し尖っている事以外は彼らの平均的なそれと大差無いとは思うのだが・・・・・・。


「い、いえ。決してその様な事は。・・・・・・ただ、その、想像していたよりもお若く見えたので」


「ああ、そういう・・・・・・。良かった。別におかしい訳では無いのだな」


「え?」


「い、いや! 何でも無い! こんな所で立ち話もなんだし、続きは茶でも飲みながら話そう!」


「は、はぁ・・・・・・」


 戸惑うピナ姫を促して、俺は自室の隣にある休憩室兼客間へと彼女を案内した。・・・・・・ん? 自室?


 いや、ちょっと待て。冷静に考えたら俺、今日彼女と同じ屋根の下で寝るのか?


 部屋はもちろん分けるにしても、それって・・・・・・実質お泊まり!?


内心焦りまくりつつも必死でスマートな魔王を演じる彼をお楽しみ頂ければ幸いです。・・・・・・スマートな魔王w

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