〜二人の決意〜
「あ、あの、お味は如何でしょう?」
まるで手作業の様に淡々と食事を口に運ぶ俺に、ピナ姫は問いかけてくる。
「え? ああ・・・美味いよ」
頭の中は考え事ばかりで、味なんてろくに分かってもいないのに、俺は相変わらず作り笑顔を貼り付けて、そんな風に嘯いた。
「そう、ですか・・・・・・」
「・・・・・・ピナ姫、少し聞いても良いか?」
食事の手を止め、俺は思い切って、自分から彼女に声をかける。考えてばかりいた所で、らちが開かないと思ったのだ。
覚悟をする為にも、彼女に確認すべき事柄は幾つかある。
「は、はい。何でしょう?」
「もし思い出すのが辛かったり、言いたくなければ構わないのだが・・・その、お前は母国の王族達の事を、どう思っている?」
「・・・何故、その様な事を?」
「えっと、まあその、今俺の配下が、使者としてバルドーに赴いていてな。色々と交渉中だとは思うのだが、今まで交流の無かった国だから、少し心配なんだ」
嘘は言っていないが、全てお為ごかしだ。・・・まったく。魔王になってからこの七年と少しで成長した事と言えば、口先だけが無駄に動く様になった事くらいだな。
「なるほど。・・・・・申し訳ありません。お話ししたいのですが、実は、私が国王にお会いしたのは、使者としての命を受けた一度切りで、それ以外に会話をしたことも無いのです」
「え・・・?」
「第四王女と伝えられたので、少なくとも三人の姉は居るのだと思いますが、会ったことは一度もありません」
「で、では、今のバルドーの情勢についても、何も知らないのか?」
「・・・・・はい。お力になれず、申し訳ありません」
「っ・・・・・・」
何て事だ・・・。幾ら隔離していたからと言って、会話をしないどころか家族構成すら教えず自分の子を育てる親が居るのか?
だが、彼女に嘘を言っている様子は微塵も無いし、『眼』を凝らしても、感情や思考を抑制する類の魔法や、精霊が宿る魔法具を身に付けている気配も無い。
「つまり、国王以外、血縁者の顔は誰も知らない、という事なのだな?」
「・・・はい」
「そうか・・・・・・ふぅ」
・・・彼女にとって、それが良い事なのかは分からないが、少なくとも、俺が連中を手に掛けるその時が来たとしても、躊躇う理由は一つ減った。
バルドーの王族達。彼らが我が国ブルガーニュをその悪意に巻き込もうと言うのなら、俺は、容赦無くこの手で滅ぼそう。それが、魔王シャンベル・ギブレイとしての俺の責務なのだから。
「・・・あの、シャ、シャル様!」
「ん? ど、どうしたんだよ。そんな勢いこんで」
「その、私は未熟で、会話にも不慣れで、お役に立たない事の方が多いかも知れませんが・・・」
「おい、いきなり何を・・・?」
「き、聞くことだけなら出来ます! だから、その、ずっと泣きそうなお顔をされている理由を、良ければお話しくださいませんか?」
「っ!?」
俺が、泣きそうな顔をしている、だと・・・?
「な、何を言っているんだ? 別に、そんな顔はしていないだろう。今だってほら、こうして笑って・・・」
「いえ、シャル様は、お帰りになってからずっと、泣きそうな顔をしておられます! ・・・・・・どうしてかは分かりませんが、あなた様の今のお顔を見ていると、胸が締め付けられる様に、ずきずきと痛むのです。でもきっとそれは、私なんかよりずっと、シャル様が痛みに耐えてらっしゃるからだと、そう、感じて・・・・・・」
そう言って、彼女は胸を押さえながら、その頬に一雫の透き通った涙を流した。
「ピナ姫・・・・・・」
何と声をかけて良いか分からず、俺はただただ彼女を見つめて戸惑う事しか出来ない。
と、そこへ何故か、慣れ親しんだ気配が近づき、ノックもせずに食堂の扉を開けた。
「失礼致します」
「ソアヴェ・・・?」
彼女は入って来るなり俺とピナ姫を交互に見ると、表情を変えぬまま淡々と口を開く。
「・・・・・お茶の用意が出来ております。休憩室にお越し下さい」
うう、シリアス回が続いて書いてる自分が辛い・・・・・。早く二人をイチャイチャさせたいと思いつつも、外す事の出来ないパートなので、読んで下さっている皆様には共に耐えて頂けると幸いです。
そんな訳で、頼りになるメイド長、すかさず登場して頂きました! 次回は期せずして二人にお茶して貰うことになりましたが、暗いだけのお話にならないよう頑張って書きますので、読んで頂けると嬉しいです!
読んで下さった皆様、また、ブックマーク頂いた神様、今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m




