〜鈍感魔王は鬼畜メイドに弄ばれる!?③〜
「ただいま・・・・・・」
俺は何とか魔王城での執務も夕方までに終わらせ、無駄に重い体と頭を引きずって屋敷に戻った。
「お帰りなさいませ。・・・? 本日は魔王城のみのご公務では無かったのですか?」
いつも通り深々とお辞儀をして出迎えてくれたソアヴェは、俺の様子を見ておおよその事情を察したようだ。・・・流石は、我が屋敷のメイド長だな。
「まあな。性懲りも無く、ナパの連中が攻め込んで来た。まあ、いつも通り特に苦も無く返り討ちにはしたんだが・・・・・いや、まあ、戦闘と執務を立て続けにこなしたから、少し疲れただけだ。そう言えば、ピナ姫はどうしている?」
あの残念な女将軍の事は伏せる事にした。・・・口に出すと、余計に疲れそうだからな。
「・・・・・・はぁ。ピナ様なら、今は湯浴みをされてますよ」
「お、おう。そうか」
んん? 何だろう・・・、話を逸らそうと何気無く問いかけただけのつもりなんだが、どこか不機嫌になった、か?
「お食事のご用意も出来ておりますが、如何なさいますか? ・・・一応、お茶の淹れ方をお教えする用意も出来てはおりますが」
「あ、ああ、そうだな。じゃあ先に夕食を貰おう」
「かしこまりました」
・・・う〜ん。いつも通りにも見えるが、やっぱり気のせいだろうか? でもなぁ・・・。
「ええっと、ソアヴェ? その、お前にも色々と負担をかけてすまないな。彼女の事もそうだが、いきなり茶の淹れ方を教えてくれなんて、やっぱり迷惑だったか?」
「っ! ・・・ふっ。別に、迷惑だなんて思っていませんよ。それに、ピナ様は誰かさんと違って素直で手が掛かりませんから、負担にもなっておりません」
「うっ!? そ、そうですか・・・」
何か機嫌は直ったっぽいが、いつも通りの毒舌も地味に心に刺さるんだよなぁ。
「それに、シャル様は主人なのですから、メイドに過ぎない私のご機嫌なんて伺う必要は無いのですよ」
「うぐっ・・・バ、バレてるし」
「当然です。何年あなたにお仕えしていると思っているんですか?」
「なら、良い加減俺の性格も分かってるだろ? メイドとか以前に、お前が機嫌悪そうだったり体調崩したら、心配になるんだよ」
「っ!?」
「それに、七年も一緒に暮らしていたら、もう家族みたいな物だろう?」
「っっ!? ・・・・・・ま、まあ、そうかも知れませけど」
んん〜? 何かいつもより声が小さいな・・・。もしかして、また余計な事を言ってしまったか?
・・・・・・嗚呼。でもそうか、そうだよな。
「悪い。俺なんかに、家族なんて口にする資格は無いよな。忘れてくれ」
「えっ!? い、いえ別に、そんな事思ってもおりませんが・・・」
「良いんだ。・・・さあ、今日の夕食は何だ? お前の作る食事と淹れてくれる茶は、俺の数少ない楽しみなんだ。疲れて腹も減ってるから、より一層美味く感じるだろうな」
そう言いながら、俺は足早に先へ進み、前を歩いていた彼女を追い越す。
顔を見られたく無かったのだ。今、自分がちゃんと笑えている自信が無かったから。
「あっ・・・・・・」
・・・・・・そうだ。長く共に暮らしているからと言って、何をおこがましい事を考えているんだ?
俺は、魔王だ。
幾万の血を流し、他者から奪う事でしか国を守れない、愚かで汚れた存在。
呪われたこの身に流れる血は、近しい者ほど傷つけずにはいられない。
・・・・・・何より、俺がこの手で殺したいと願って止まない者こそ、たった一人の、まだ家族と呼べる男なのだからな。
何げ無い一幕のつもりで書き始めましたが、最後に魔王様のちょっとシリアスなモノローグが入ってしまいました・・・。すいません。 作者の腕がまだまだ未熟故、予定通りになかなかキャラクターが動いてくれなかったりもするのですが、暖かく見守って頂けると幸いです。
・・・とか言いながらも、作者的には魔王様の厨二みが増して来てちょっとニヤニヤしていたりもしますw
厨二概念が苦手な方、或いはこの程度の厨二みじゃ物足りない目の肥えた皆さま、ごめんなさい。
 




