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〜距離感を掴めない魔王と姫君③〜 名。/上


「「・・・・・・」」


 ピナ姫と俺は食事の後片付けを済ませ、休憩室へと二人で赴いた。・・・・・・のだが、昨日の焼き増しの様に、俺達は茶が運ばれて来るまでの間、無言で向かい合っていた。


 因みに、どうして『ピナ姫と俺は』、なのかと言うと、彼女は片付けも一人で済ませようとしていたのだが、流石に客人に食事の支度をさせておいてそこまで甘える訳にはいかないので、俺がやる、と申し出た所、激しく遠慮され、折衷案として二人で片付ける事にしたのだ。


 ・・・正直、死ぬほど楽しかった。『二人で食事の後片付けをする』という、まるで一般民の夫婦の様なイベントが、あんなにも心躍る時間だとは。


 自分の中にこんな感情があったなんて・・・何だか、むず痒いやら恥ずかしいやら、どんな顔をして良いのか分からない。


 まあ、その結果いつもの仏頂面になって、ろくに世間話をする事も出来ていない訳だが・・・・・・・。


「・・・あ、あの、シャ・・・魔王様」


「ど、どうした?」


「あ、えっと・・・何でも、無いです」


「そう、か・・・?」


「「・・・・・・」」


 な、何だったんだ今のは? 何か、俺に聞きたい事でもあるのだろうか?


「お待たせ致しました」


 と、俺たちが再び気まずい沈黙に陥った所に、ソアヴェが茶と菓子を運んで来た。


「・・・なあソアヴェ。昨日も思ったんだが、お前、いつもより茶の用意が遅く無いか? いつもなら俺が休憩室に入ってすぐ持って来るだろ?」


 まさかとは思うが、こいつ、俺がピナ姫を前にして戸惑っている所をどこからか盗み見て楽しんでるんじゃないだろうな?


「気のせいです。二人分だからいつもより手間がかかっているだけでは? ・・・・・・プフッ」


「おい! 今絶対笑ったろ!」


「何の事でしょう? と言うか、お話しの相手は私では無く、ピナ様では?」


「くっ!? わ、分かっている! 分かっているが・・・・・・・」


 そもそも、理由も無く女性と茶を飲みながら会話なんて、幼少期に義母や妹としたのが最後だぞ!?


「・・・・・シャ、シャル様!」


「あ、ああ、どうしたピナ、ひ・・・め?」


 ん? 今何か、呼び方が・・・・・?


「い、いきなり申し訳ありません! ・・・ですが、その、私も魔王様の事をシャル様とお呼びしたく・・・・・・ダメ、でしょうか?」


「・・・・・・」


 え? 何? どゆこと? シャルって、彼女が、俺の事を? 今だけじゃ無くて? これからずっと? 


「あ、あの・・・?」


「・・・・・・()い」


「へ?」


「え? ああ! いやその、よ、()いと言ったのだ! ま、まああれだな、暫くはこの屋敷に滞在して貰う訳だし、ソアヴェ達と違う呼び方と言うのも、何かと話辛かろうしな!」


 自分でも何を言っているのか良く分からないが、ともかく彼女が名で呼んでくれると言うのだから、是非も無し!


「・・・あ、ありがとうございます」


「べ、別に礼を言う様な事では無いだろう? 名など、好きに呼べば良い」


「・・・・・・その様な許しを与えて下さったのは、シャル様が初めてです」


 その微笑みは、嬉しげでありながらもやはり儚くて、俺はまた、どうしようも無く目を奪われるのだった。



サブタイトルがちょっとややこしい感じになってしまいましたがご容赦を^^;

じっくり描きたい部分だったので、ナンバリングしていながらも上下に分けさせて頂きました。


たまに政治したり、今後バトルなんかもある予定ですが、メインはやはりこの二人の穏やかな時間を描いて行きたいと思っているので、楽しんで頂ければ幸いです!

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