〜距離感を掴めない魔王と姫君① 〜 お出迎え。
「ふう・・・・昨日の今日でまだ顔を合わせ辛いが、ソアヴェに任せたまま放っておくわけにもいかんしな」
ピナ姫を屋敷に迎えた明くる日、カベルネとグリュナー侯爵の出立を見送り、魔王城で一通り政務を終えてから、屋敷に彼女の様子を見に戻っていた。
「お、お帰りなさいませ。シャ・・・魔王様」
「おうっ!?」
だが、俺は屋敷の扉を開けた途端、その衝撃的な光景と予想外の事態に戸惑う事となった。
ピナ姫が、メイド服を着てドアの前に立っていたのだ。
もちろん、気配で扉の前に居ることは察していた。だが、まさかこの様な破壊力抜群の格好で、しかも、ちょっと頬を赤らめたりしながら恥ずかしそうにチラチラとこちらを見ながらお出迎え・・・だと?
姫君である彼女に合わせて設たのか、ソアヴェ達が着ている物よりもドレスに近いデザインで、艶やかな黒髪や真っ白な肌に良く映える、薄紫色の生地が彼女の美しさをより引き立てている。
端的に言って・・・・・・ドチャクソ可愛い!!!!!!
「あ、あの・・・?」
「へ? あ、ああ! わざわざ出迎えすまんな! ・・・でも、どうしたんだ? ソアヴェに何か妙な事でも吹き込まれたか?」
「い、いえ! その・・・魔王様には色々とお気遣い頂いているのに、何もお返し出来ないのも申し訳なくて、その・・・・・」
「そんな事は・・・ん?」
気のせいだろうか? 昨日は俺に対しての怯えが見え隠れしていた筈だが、今の彼女からはそれを感じない。
どちらかと言えば、戸惑っている様に見える。
「ま、まあ、ともかく、少しはこの屋敷に馴染んだ様で何よりだ。顔色も昨日より幾分か良くなったのではないか?」
「はい。とても美味しいお食事を頂いたり、温かいお風呂にゆっくりと浸からせて頂きました。・・・それに、ソアヴェさんから素敵なお話を聞かせて頂いたので」
「話? ・・・あいつ、一体何の話をしたんだ?」
「それは、な、内緒です!」
「んんっ!?」
こ、今度はさっきと比べ物にならないくらい恥じらってるぞ!? ソアヴェの奴、マジで何の話を!?
「そ、それはともかく! 魔王様、お昼のお食事は召し上がりましたか?」
「え? ああ、いや、まだだが」
「で、ではその・・・・・・よ、よろしければ、私の作った物を、召し上がっては頂けませんか?」
「・・・・・・・は?」
え? 今、この子何て言った? 私の作った物? え? それってつまりアレですか? 手料理って事?
「お、お嫌でしたらご無理にとは申しませんので!」
「いやいやいや! 決して嫌な訳では無いぞ! 寧ろ喜んで頂きたいと言うか! 独り占めして全部平らげてしまいたいと言うかだな!」
「へ? 独り、占め・・・?」
「あー!? いや! ともかく、折角作ってくれたと言うのだから、是非食させて貰おう! うん!」
「そ、そうですか・・・ではその、食堂にご用意しておりますが、すぐに召し上がられますか? それとも、先にお風呂に入られますか?」
「がはっ!?」
こ、これは!? ・・・・・・まさか、まさかあの伝説の、「お風呂にしますか? ご飯にしますか? それとも、ワ・タ・シ?」と言う奴か!?
て、んな訳無いだろ! 落ち着け! 冷静になるんだ魔王シャンベル・ギブレイ!
「ま、魔王様!? どうされたのですか!? まさか、お身体の具合が悪いのですか!?」
「い、いや、大丈夫だ! ちょっと頭は大丈夫じゃないかもしれないが大丈夫! 気にするな!」
「は、はぁ・・・」
「え、ええと、風呂は城に行く前に入ったから、食事を頂く事にしよう!」
「わ、分かりました。・・・ではその、食堂に参りましょう」
「う、うむ!」
・・・にしても、いきなり食事の用意なんて、本当にソアヴェは何を話したんだ? でも・・・・・・グッジョブ!!!
さあさあ。遂に魔王と姫君のイチャイチャし切れないイチャイチャが始まりますよ! 多分!www
 




