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〜夢幻に寄り添うは・・・〜


嗚呼、また此処か・・・と、俺はすっかり慣れてしまった自身の内にある暗闇に身を委ねていた。


だが、今回は半ば予想していたので、特に慌てる事も無く、現状を受け入れている。


・・・・・・まあ、多分死ぬ事は無いだろう。()()()()()()()()()()とは言え、全て捧げた訳じゃ無い。


もっとも、意識を失う前にピナが言っていた様に、記憶や霊王の権能は無事では済まないかもしれないが、神を冒涜するかの如き試みだったんだ。代償としては安いくらいだろう。


暫しの間、微睡んだ後、果たして俺はどうなっているのか。


もし、記憶が無くなっていたとしても、きっとまた、俺はピナに一目惚れするだろうな。


そして、自分の立場を理解したら、また魔王として・・・・いやちょっと待て。今更だがそこの所は不安だな。

ピナもそうだが、ソアヴェや近しい物達はどうも俺を休ませようとするきらいがあるし、もしかしたら魔王だった事実を伏せて、普通の生活をさせようとするかもしれない。


とは言え、彼らはそうでも国民や俺に恨みのある者達が放っては置かないだろうから、そうそう平穏を謳歌出来るとは思えないが・・・・・まあ、なるようになるだろう。


今はこの心地良い暗闇をたゆたって、目が覚めるのを待つとするか。
















・・・・・・目、覚めないな。


いやいやいや。大丈夫大丈夫。ちゃんと肉体と魂の繋がりは魔力で補強したし。精霊達が早々霊王を見殺しにするとは思えないし。


きっと大丈夫だ!・・・・・・大丈夫、だよな?


『そういう詰めが甘い所も、ホント()()()にそっくりで嫌になっちゃうわ』


っ! お前は・・・・。


『お前とは何よ。貴方の事だから、もう私の正体には検討がついているんでしょう? シャンベル』


涼やかな声と共に、目の前に現れたその女は、酷く不機嫌そうだった。


シルクの様に煌きらめく長い白髪に、華奢な体躯。


そして・・・・()()()()()()()()()()


・・・・やっぱり、あの時見たのは夢じゃ無かったんだな。


『そうよ。私としては、複雑な心境だけどね。()()()貴方と会うということは、その魂が危険にさらされている何よりの証拠だし』


そうか・・・。これは、()()()()()()だったんだな。


という事は、お前、いや、貴方は・・・・俺の、母親なのか?


『ツーン』


割と意を決して尋ねたと言うのに、目の前の女は何故か俺から顔を背け、明後日の方を向いてしまう。


あれ? もしかして違ったのか??


『違わないわよ。でも、母親なんて他人行儀な呼び方する子には返事してあげませーん』


なっ!?・・・じ、じゃあ、何と呼べと?


『ママ』


断る!!


『ええ〜? 何でよ〜?』


いい年した男が母親をそんな呼び方出来るか! 恥ずかしいわ!


『むぅ〜。なによぅ。()()()()の事は今だに義母(かあ)様って呼んでるくせにぃ〜』


うぐっ!? そ、それは、幼い頃からそう呼んでいるんだから仕方がないだろう・・・・。


『ええ〜〜〜。・・・・まあいっか。散々放ったらかした私を、母親と呼んでくれるだけありがたいと思わなきゃね』


・・・その程度は当たり前だ。俺は貴方に、もう()()()()()()()()()()()()


それに、こうして再びここで会えたという事は・・・・・また、助けられてしまうんじゃないのか?


『助けられてしまう、だなんてそれこそ他人行儀よ。シャンベル?』


そうも言いたくなる。だってこれは、この魔法は、()()()()()()()()()()()()()()()()。そういう魔法なんだろ!?


『そんな事無い・・・・って言うつもりだったけど、流石は私の息子ね。やっぱ分かっちゃうか』


・・・術式のベースは、ピナが自身に施したそれと近いものだろう。同じ霊王なんだから、出来てもおかしく無い。


貴方はずっと、魂だけになって俺の中に居た。

そして、そのお陰で俺は、半分魔族であるにも関わらず、霊王の力で()()せずに済んでいた。


そうだろう?


『まあ、その役目はもう必要無いんだけどね。完全に霊王として覚醒出来たみたいだし。魔力回路ももう精霊魔法の行使に順応したみたいだから、よっぽどの事が無ければ自壊なんて起きないわ』


そうか・・・・・俺の優先順位がピナに届いたのは、セントヴァンを剥離したからだけじゃ無かったんだな。


『そういうこと。成長してくれたのは嬉しいけど、手が掛からなくなるのは、それはそれで寂しい気もするわ』


・・・・・・。


苦笑しながらも、どこか嬉しげな雰囲気を纏う彼女に、俺は何も言えなくなってしまう。


『ふふっ。その照れてる顔、あの人にそっくりよ?』


・・・・・・あの男から受け継いだ物なんて、この容姿と忌々しい呪われた体質だけだ。


『まあまあ。あの人がした事を考えれば腕一本じゃ足りないかもしれないけど、命だけは勘弁してあげて。・・・・半分は、私の責任でもあるし』


どういう意味だ?


『うんう。これは私たち親の事情。シャンベルは気にしなくて良いわ。さて、もっとお話していたいけど、そろそろ目覚めなきゃね。お姫様を、幸せにしてあげるんでしょ?』


・・・・・・貴方は、どうなるんだ? 今回はただ俺が死にかけたのとは訳が違う。もし、俺が支払うべきだった代償を、既に魂だけとなった貴方が支払おうとしているなら、それはっ。


『だから、気にしないで良いってば。元々もう死んでるんだし。と言うか・・・・・そばにいるべき時に居なかったんだもの。母親として、せめてこれくらいはさせて』


っっっ・・・・・・何で、何でだよっ。やっと顔を見て、言葉を交わせたのに、これが最後なんてあんまりだろ!


『シャンベル・・・・・ふふっ。ごめんね。笑っちゃダメなのに、貴方が私との別れを惜しんでくれていると思うと、何だか、嬉しくなっちゃうな』


当たり前だろ。貴方は俺の母親・・・・・・母さん、なんだからっ。



『っ!・・・・・ありがとう。ありがとう。ずっと、貴方にそう呼んで欲しかったの。愛してるわ。私の、私たちの可愛い息子。シャンベル。どうか貴方の未来が温かな幸せに満ちていますように』



泣き笑いのような顔で彼女がそう告げると、暗闇が光へと塗り替えられて行き、その姿が朧げに霞んでいく。



待ってくれ! 頼むから、あと少しだけ、母さん!




『さようなら。生まれてきてくれて、ありがとう』





その柔らかな声を最後に、母さんの姿は光の向こうに消えた。








相変わらずゆったり更新ですいません(^◇^;)


相変わらずシリアスなのかコメディなのかフワフワした感じで書かせて頂いてますが、楽しんで頂けていたら幸いです。


初めてお読み頂いた皆様、読み続けて下さってる神様、今話もお付き合い頂きありがとうございました。


次回もゆったり目にはなると思いますが、見放さないで頂ければ嬉しいです^ ^

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