〜プロローグ〜
生暖かく見守って頂けると幸いです。
「・・・・・・懲りない連中だ。はぁ」
殺風景な荒野に吹く風に、ため息が攫われていく。
哀愁漂う疲れ切ったその声は、よく聞けばまだ年若い青年のそれだが、残念ながらこの荒野にはその事に気付ける程、彼に近寄れる者は存在しない。
竜麟を思わせる漆黒の鎧を纏い、素顔すら兜で隠すその青年は、ただ一人で立っていた。
彼から数百メートル離れた場所で相対する、万の軍勢。その全ての兵士の顔には、隠しきれない恐怖が滲み出ている。
「そんなに怖いなら、兵士になんてならなければ良いものを・・・・・・。まあ、悪いのは別にこいつらじゃ無いんだろうけど、国民より面子が大事な王宮なんて、さっさと内戦でもして打倒した方がよっぽど国の為だろうに」
と、青年がうんざりした様にその軍勢に顔を向けると、大将と思われる派手な甲冑を纏った男が一歩前に出た。
「ま、魔王ギブレイ! 今日こそ貴様を討ち取り、奪われた我らが故郷を取り戻してくれる!」
声を上ずらせながらも、荒野中に響き渡るよう必死でそう叫んだ男に向かって、青年もまた、よく通る低く厳かな声で返答する。
「貴殿等の覚悟、承知した。だがその命、無駄と分かって捧げに来たと言うのだ。せいぜい華々しく散らしてやろう」
「「「ひっ!?」」」
大将含め、兵士たちは圧倒的な覇気と共に放たれたその声に竦み上がる。
「・・・・・・ったく、こっちは毎回このくだりやるの地味に恥ずかしいんだぞ」
魔王と呼ばれたその青年は、軍勢に聞こえないよう小声で呟くと、ゆっくりと左腕を前にかざす。
「我が名の下に滅びの光を。『ジェノス・リヒト』!」
高らかにその魔法名を青年が叫んだ瞬間、軍勢は天から降り注いだ極光に目を焼かれながらも、統率された動きで一斉に臨戦態勢を取る。
しかし、それは何の意味も為さなかった。
「なっ・・・・・・!?」
絶句する指揮官を筆頭に、一人残らず呆けた顔を晒す兵士たち。
それも仕方が無い。何故なら彼らが踏み出すべき地面は、既に焦土と化していたのだから。
青年の放った魔法に焼き尽くされ、溶解し今も灼熱を放ち続ける地面を前にして、兵士たちはただただ立ち尽くす。
「その地を踏み越え我に剣を向けられる者が居るならかかって来い。この魔王ギブレイ直々に相手をしてくれよう」
「「「・・・・・・・」」」
圧倒的な力を目にした兵士たちの顔に浮かぶのは、怯えを通り越した絶望。
「・・・・・・わ、我々は充分に健闘した! た、退避だ! 退避ーっ!」
「「「おおおおおおおおおおっ!」」」
大将の指示のもと、一糸乱れず後退していく兵士たち。その顔は安堵で流れる涙に濡れていた。
「・・・・・はい。お疲れさん。はぁ〜〜〜」
誰も居なくなった荒野で、青年は一人、深いため息を吐き出すのだった。
ちょっと恥ずかしくなって前書き編集しましたw
以前から応援頂いている方、あまり気にしないで頂けると幸いですm(_ _)m




