チャラ。
「おや、今日は早いんだね。」
ヒロがにこやかにコーヒーを淹れている。
モーニングコーヒーはヒロの日課だ。
「あんまりギリギリに行っても目立つからな。なるべく普通にしたいんだよ。」
「ふーん、コーヒー飲む?」
「貰おっかな。」
コーヒーを啜る。
朝といったら仕事の事で頭が一杯だった。
こういった余裕が大事なのかな。
「いやー落ち着くな。」
『ハル様、せっかく早起きをしたのですから、準備しましょう。』
「まぁもうちょっとゆっくり……」
……
「やばい時間がない!」
『ハル様ブラジャーを!』
女ってのは面倒だ。
「じゃ、行ってくる。」
バタン!
……
「やれやれ……」
……
……
「結局ギリギリだな。」
『明日は頑張りましょう!』
時間一杯で教室に入る。
さっきまで聞こえた騒ぎ声は静まり返り視線は俺へと向けられた。
居心地が悪いのでそそくさとルイの近くへと向かう。
「おはようルイ、なにこの雰囲気は。」
「ハルちゃん見てないの?あ、そっか貰ってないんだ。」
「ん?何を?」
そこへ担任のねーちゃん先生が入ってきた。
俺を見て手招きしている。
「ハルさん、これ渡してなかったよね?はい、どうぞ。」
そう言って渡されたのはリストバンドのような物だった。
「ルイ、何これ?」
「生徒専用の端末だよ。それで色々と見れるの。ほら、ここを押すと……」
リストバンドの上に画面が浮かび上がる。
「なんだかサクラみたいだな。」
『ふふん、私の下位互換もいいところです。』
「それでほら、ここを押すとね……」
画面に何かが表示される。これは……
「判定テスト……全生徒結果?」
「昨日の判定テストの結果なんだけど……ここ見て。」
するとルイは画面の1番上を指差した。
「中等部2年ハル、俺の名前だ。」
「ね?首席だよ、ハルちゃんが。」
「……まぁそれは仕方ないとして何で皆こんなによそよそしいの?」
「ハルちゃんから下の名前見て、皆文字数多いでしょ?」
名前を見ると5文字や6文字など長ったるい名前しかない。
「ははーん、こいつら皆文明人か。」
すると教室にいる全員が一斉にコチラを向いた。
「あー……これは禁止ワードかな?」
ルイが頷いてる。
「一般のクラスの子が上位にくるなんてまずないし……ハルちゃんきっと目をつけられちゃう。」
「面倒だな……」
その後も学校の皆がよそよそしかった。
関わりたくないのだろう。
でも……
「なぁ、ルイ。」
「ん?」
「俺といるとルイまで相手にしてもらえなくなっちゃうだろ?それはよくないよ。だから一緒にいない方が……」
「私も一緒だよ?あの人達に目をつけられて何事もなく戻ってきたんだから。私に関わりたくないんだよ、皆。」
「そっか……じゃあ一緒だな、俺たち。」
「ふふっ、そうだね。」
『いーなー、私もハブられたい。』
「何言ってんだよ、まったく。」
なんてはしゃいでいた時だった。
「よぉキミが首席ちゃんかな?」
不意に声をかけられる。
「……誰、アンタ?」
「キミたちとは住む世界が違う者ですよ、首席ちゃん。」
「あぁ、文明人ね。で、その文明人様が団体で何か用でも?ご飯食べてるんだけど。」
ざっと見ても20人はいる。ん?
よく見ると1番後ろにゲスが見えた。
「ちょっとその可愛い面を借りたくてね。付いてきてもらえるかな?」
「嫌だよ、面倒くさい。昼飯の邪魔すんなよ。」
「可愛い顔してキツイこと言うね、キミ。おい、お前ら。」
すると奴らはルイの手を掴み人質にとった。
「この子がどうなってもいいのかな?」
「おい!汚い手を離せ。その子は関係ないだろ。」
「キミのお友達でしょ?関係あるじゃない。」
「……ついていけばいいんだろ?だったらその子を離せ。」
「ん、それでよし。」
「ハルちゃん!」
「すぐ戻ってくるよ、じゃ。」
……
……
連れてこられた場所はどの教室からも見える所であった。
[おいなんか外でやってるぞ あの子首席じゃん 見せしめに皆に見える所でやるのかしら あの子可哀想]
「で、何の用?」
「なに、ちょっとしたゲームさ。この昼休み中までキミが生きていればキミの勝ち。どう?単純でしょ?」
「単純すぎて欠伸がでるな。」
「但し、キミは一切手足を動かしてはいけない。10秒待ってやる。キミの最後の10秒だ。」
全く、ゲスの仲間はゲスだな。
俺は腕を組みそのままその場で待った。
「舐めやがって……お前ら行け!!」
一斉にこちらに向かってくる。
手足を動かせないならそのまま移動するしかない。
シュンッ!
「な、消えた?」
「ほら、こっちだ。」
シュンッ!
このまま時間まで遊んでいればいい。
ん?ゲスとリーダー格の男がなにやら揉めている。
「お前が2度もやられるからコチラの面子を守る為に来たんだぞ?どう責任とるつもりなんだ!」
「それは俺が弱いからであって貴方達は関係ないんじゃ……」
「テメェこの野郎!」
そう言ってゲスを殴り蹴っている。
……
シュンッ!
ゲスの前にテレポートをする。
「おいリーダーさん、俺が目当てなんだろ?殴ってみろよ。」
「いい度胸だ。」
そう言って何発もいれてくる。
「おい、お前なんで……」
ゲスが俺に聞いてくる。
「この前腕を折っちゃっただろ?あれ、ごめんね。だからこれでチャラな。」
間髪いれず殴ってくる。
10発、20発……もう数え切れないほどだ。
「ハァハァ……」
「何?もう終わり?」
『自己修復機能終わりました。ハル様にお怪我はありません。もっともあの程度の力では大した傷ではありませんでしたが。』
「まぁそう言うな。なぁゲス、なんでお前はさっき俺を襲ってこなかったんだ?」
「……男ならタイマンだろ。俺には文明人の誇りがある。」
「……でもお前狩りしてたろ?」
「あれは仕方ないだろ!習わしなんだ。」
「ふーん……おい、俺の服掴んでろ。」
「えっ?……うぉっ!?」
シュンッ
ゲスをつれて少し離れた所へ。
「ゲス、お前はゲスだ。俺の友達を傷つけたゲスだ。で、アイツらはゲスなんかじゃない。ただのゴミ野郎だ。」
「お前……」
「俺の手袋を取ってくれ。」
「こ、こうか?」
瞬間地響きが聞こえてきた。
「見てろゲス、何が正しくて何を信じるのかを。」
『やっちゃえハル様!』
首席、反撃開始。




