2文字。
「おー、すげー!なんだこの乗り物。」
タイヤのないバイクの様な形をしたその乗り物は宙を浮き飛び回れるらしい。
「ヴァンって言う乗り物だよ。これは観光用だから自動操縦なんだけど、競技用もあって人気のスポーツなの。」
「へー凄いな……二人乗り出来るの?」
「ちょっと狭いけど大丈夫だよ。こうして抱きつけば……ほらね?」
俺が前に乗りルイが後ろに座る。
まるで……
「恋人みたいだな、コレ。」
「……な、なんか照れちゃうね。」
振り向くとルイが照れくさそうにしている。
「保護用のゴーグルがあるんだ……どう?似合う?」
『素敵ですハル様。』
「……」
ルイが俺の顔を見つめてくる。
「ん?なんか顔についてる?」
「へっ?何でもないよ!何でも……」
目的地を設定して出発する。
前の世界でもバイクに乗っていたから分かるが、だいたい120キロくらいで空を走る。
「気持ちいいな、ルイ。」
「……うん。」
『ハル様、自動操縦を解除しました。そちらがアクセルで足元がブレーキです。あとは乗られていたバイクと一緒です。ちなみにオートマです。』
「お、気が利くじゃん。ん?……まぁいいや、いくぞルイ。」
「えっ?きゃっ……」
思い切りアクセルを吹かす。
バイクでも出したことがない速度だ。
「ハルちゃんどこへ行くの?」
「どこかなぁ……ちょっとドライブ付き合ってよ。怖い?」
「ううん……大丈夫。」
そう言ったルイは俺の体を強く抱きしめてきた。
『……!ハル様、警察です。』
振り向くと3台、同じような乗り物で追いかけてくる。
「……サクラ、どこか人が居なくて景色のいい所ない?」
『……こちらは如何でしょうか?』
「また山か。」
『川もありますよ?』
よーし……
(テレポート)
シュンッ!
……
……
「うーん、何にも無いな。」
かなり奥深い山の中だろうか。
近くには小さな川が流れている。
「ハルちゃんこれって……」
ルイが困った顔でこちらを見てくる。
「……ごめん、ルイもこんなの見たら引くよね。」
「ハルちゃん……」
「見ての通り普通じゃないんだ。普通ってのが何なのかはよくわからないけど……」
上手く言葉が出てこない。
するとルイが俺の手を握ってきた。
「さっきね、ハルちゃんがヴァンに乗ってた時カッコいいなって思ったの。」
「俺が?」
「……普通っていうのはその人の偏見だよ。私はハルちゃんは素敵な人だと思う。それで良いんじゃないかな?」
偏見……
「ルイ……ありがとう。」
そう言って俺は手を握り返す。
『ハル様、ハル様には私がいますよ!』
「お、おう。そうだな。」
するとルイが体を寄せ、イタズラっぽく言った。
「ダメー、私のハルちゃんだから。」
山の中で女子3人、ワイワイと過ごす。
『ハル様、そろそろ帰る時間です。』
「そっか、早いな。」
ヴァンに跨り支度をする。
「……ちょっと寄り道するか。」
そのままヴァンを浮上させ山々の上を飛んでいく。
広がる大自然と星空。
動力はよくわからないが音がしない為、風を切る音しか聞こえない。
「すげー……綺麗だな。」
「私こんな景色画像でしか見たことない。他の地区にも言った事がないし……」
「そうなの?」
「うん、私の家は2文字だから。」
「それって関係あるんだ?」
『ハル様、この世界は文明人によりあらゆる行動が規制、統制されています。ですから住む場所さえ決められた所でしか暮らせません。文字数が少ない者は決められた地区から出ることすらなりません。』
「なんだそれ滅茶苦茶だな。」
『文字数が多い者は文明人、またはそれに代々従う家系の方のみ。必然的に一般の方と力の差がついてしまうのです。』
「へー。」
『しかしながらここ1000年以上もの間、反乱もなく表向きは平和な世界が続いているのも事実です。』
「なるほどね……」
『武器などの製造も規制されてきたので今ではその存在すら忘れているでしょう。もっとも、文明人がどうかは知りませんが。』
「……何が正しいんだろうな。仮に文明人がいなくなったとしても、この世界は必ずしもいい方向に行くとは限らないのかな。」
『それはやはりハル様の目で見て確かめていくしかないでしょう。』
この世界の文明レベルが下がれば、今度はこの世界が飲み込まれてしまうかもしれない。
……難しいな。
『ハル様、ヒロ様から連絡です。』
「面倒だなー……とりあえず繋げて。」
《ちょっと、今どこにいるの!君に何かあったらと思うと心配で心配で……サクラ、どうなってんの!》
「今デート中なんだ、また後にしてくれよ。じゃ。」
《ちょっと、ね────……》
『遮断しました。』
「騒がしい爺さんだな。ごめんルイ、帰ろっか。」
「……うん。」
そう返事をしたルイは少しだけ強く抱きついた。
……
……
「と、言うわけで学校に到着。」
「凄い……一瞬なんだね。」
『フフン、それはもうハル様ですから。』
「ここで大丈夫だよ……今日はありがとう、ハルちゃんのおかげで私……」
「お互い様。何だかんだすげー楽しかった。じゃあこれ返してこないとだから行くね。」
『さて、どうやって返却しましょうか。』
「そうだなー……じゃ、ルイまた明日な。」
「うん……また明日。」
そう言ってルイは小さく手を降った。
……
「ハルちゃん、──。」
大自然から大都会へ。
この後俺はレンタル会社とヒロにこってり絞られた。




