女々しくて。
朝の学校は非常に活気的である。
これはどの平行世界でも同じなのかな。
昨日何があった、彼氏彼女とどこへ行った。
お気に入りの番組、ブランド。
学生はどこも学生だ。
「今更中学生始めるとは夢にも思わなかったな。」
『その制服も良くお似合いですよ。』
「うーん、いい感じかな?まず自分が女の子だってのが理解出来ないけど。」
『ハル様はハル様です。女性であろうが男性であろうがそれは変わりません。』
「そうかな?サクラが言うなら──」
「ハルちゃんおはよー!」
ルイがニコニコとこちらへやってきた。
「ルイ、おはよ。」
「昨日────見た?面白かったよね。」
テレビ番組かな?
といってもこの世界、チャンネル数がとんでもなく多い。
個人でもチャンネルを持てるので何を見ていいのやら。
「ごめん、そういうの疎くて見てない。」
「そっか、そうなんだ……えっ!?今凄く流暢に話さなかった?」
「あー……うん、練習したから。」
「一日でそんなに上達するんだ……スゴイなぁハルちゃんは。」
ごめんなさい、ズルしました。
体にチップを埋め込んだなんて言えないよね。
「今日は判定の日だよね、緊張するー。」
「判定?」
「そっかハルちゃん聞いてないんだ。年に3回、力の判定テストがあるの。今日が今年第1回目なんだよ。」
「へー、そんなのがあるんだ。」
なんか面倒な予感しかしないな。
中の下くらいでコントロール出来れば目立たなくていいんだけど。
『ハル様、全力でやりましょう。』
……
……
「では各自着替えてドームに集合するように。遅れないでね。」
担任のねーちゃんの一声で皆準備に入った。
「ルイ、ドームって何?」
「そういう施設があってそこで判定テストをするんだよ。この学校の偉い人が上からいっぱい見てくるから凄く緊張しちゃうんだ。」
そう言ったルイの体は震えていた。
……
……
「またでっかい建物だなこりゃ……」
吹き抜け型のドームなのだが大きすぎる。
「ルイ、凄いねこれ……ルイ?」
俯向いているルイは、手足が震え足元も覚束ない。
「ごめんね、緊張しちゃって。2年生からはEランク以下は強制退学なの。私自信なくて……」
……大丈夫だよ、なんて無責任な事も言えない。
どうしたらいいものか。
……
……
「それでは今から判定テストを始める。科目は4つ。念動力の大小細、身体能力、特技、最大量だ。分かっているがEランク以下は退学だ、しっかりとやるように。では開始。」
なるほど、エリアに別れていて好きなところからやっていいのか。
「ルイ、どれからやる?」
「……い、言われた順番でやろうかな。」
ルイ大丈夫かな……
……
「ここでは念動力の判定を行う。3つに別れているので空いている所から始めなさい。」
ふーん、見た感じあの大きいオブジェらしきものを持ち上げるのが大ってやつか。
高さと時間で測っているんだろうな。
で、小は米粒みたいな玉を別の場所に移せって事か。
最後に糸みたいなのを穴に差し込むのが細だな。
ルイが心配だけどまずは自分の事だよな。
と言っても、補助機能のおかげでうまくイメージさえすればなんとかなり、各項目を卒なくこなす。
ルイは緊張のせいか上手く行かない様子だった。
……
……
「ここでは身体能力を判定する。逃げ回る小型ロボットを捕まえるんだ。身体強化以外の力は使わないように。」
宙に浮かぶ掌サイズの球体ロボットを掴みさえすれば良い訳か。
しかし皆様子見でなかなかやろうとしない。
仕方ない、俺からやってみるか。
「51番ハル、お願いします。」
そう言った瞬間ロボットは物凄いスピードで俺の横を通過、しようとしたのだがつい体が反応してしまい素手でキャッチ。
開始僅か1秒である。
[ザワザワ…… すげー 見た今の? あいつあれが見えたのかな? マグレでしょ 俺出来ないよ]
(やべーやっちまった……)
場が騒然としたのでそそくさと次の判定に移ることにした。
……
……
「はいはい、ここでは特技を見せてもらうよ。各自好きな力、得意な力を見せてね。」
あー、ルイとはぐれちゃったな。
特技ってなんだろう、雷でも落とせばいいのかな。
いや、多分目立つしそれはやめるか。
(サクラ、どうすればいいかな。)
『……』
サクラが反応しない。
壊れた?そんな事ないよな……何か出れない理由があるのかな。
そう思って上を見上げるとドーム上部にある部屋から何人もの人がこちらを見ていた。
さっきルイが言ってた偉い人ってやつだろう。
望遠して見てみると学長もいる。
あ、こっちに気がついて手を振ってる。
いやいや、この距離で見えてるのバレちゃマズいでしょ。
そう思い腕を降ろしたまま小さく手を降った。
特技……あまり目立たないっていうとあれしかないよな。
「次、51番。」
(テレポート。)
シュンッ
試験官の隣へとテレポートする。
これ、結構得意かもしれない。
「え?……なに今の?」
唖然とした顔で試験官が聞いてきた。
「テレポートですけど……」
[テレポートってなに? お伽噺じゃないの? どういう理屈なのかな アイツヤバい奴 可愛いよな 自信なくなるわ……]
もしかしてテレポートってのは普通じゃない代物なのかな……?
サクラがいないと何も分からない。
この空間でただ一人浮いた存在。
深く意識した事もなかったが、ここは俺がいた日本とは違う。
俺を知っている奴は誰もいない。
ここにきて感じる孤独感。
爺ちゃん婆ちゃん心配してるかな。
仕事放置してきちゃったけど大丈夫かな。
……なんか女々しいな俺。
いや、今は女だったっけ。
誰か知ってる人に会いたいな……
「ハルちゃん、大丈夫?」
「ルイ……」
ルイはそのまま俺の手を引っ張ってトイレに連れていった。
……
……
「私自分の事ばっかりでハルちゃんの事気にできなかった……なんだか凄い騒ぎになってるから見に行ったらハルちゃんが中心にいて……一人にしちゃってごめんね。」
そう言ってルイは俺を抱きしめてくれた。
そっか、俺は……
「寂しかったんだ。ルイもサクラもいなくて、知らない所で……」
「ごめんね、ハルちゃん。」
しばらくルイの温もりを感じていた。
「ううん、ルイは悪くない。ありがとう。それより戻らないと……」
「私はもういいの。」
「えっ?」
「まだ一つ終わってないけど、やっても結果は同じだし……いつも通りやれば何にも問題無かったんだけど……ダメね、本番に弱いから。」
そう言いながらルイの頬に涙が垂れた。
「ルイ……ちょっと手を出して。」
「?……こう?」
さっきルイに抱きしめてもらって分かった事がある。
ルイの体に流れる何かを感じ取る事が出来た。
恐らく気の流れみたいなものだと思う。
そして特にルイの手から感じた。
もしかしたらだけど……そこから俺の力をわけてあげられるかもしれない。
「ルイ、手袋の中に手が入るかな?」
「ちょっと狭いけど……これでどうかな?」
俺の手からルイの手に力を流していくイメージをする。
思った通り、ルイの中にどんどん流れていく。
「えっ?ハルちゃん、これ……」
「ルイが俺の事抱きしめてくれたから。そのお礼。あと1つ残ってるんでしょ?ホラ、行こ。」
「ふふっ。」
ルイが不意に微笑む。
「ん?」
「何でもないよ、行こう。」
いざ最後の審判へ。




