友達。
この世界の地図を見ると太平洋に浮かぶ巨大な島を除いて以前いた世界とほぼ変わりはない。
因みに俺のいる日本列島、翻訳機で変換された呼び名はヤマト地区というらしい。
ヒロが俺に分かりやすいよう翻訳してくれているのだろう。
一応国として存在はするが、文明人により全ての国が統治されているので地区という表現がされている様である。
そしてこの学校はヤマト地区最大の学校であり、所謂小学校から高校まで入っていてその数は10万人を超えるそうだ。
中には商業施設も入っておりちょっとした街になっている。
で、大切な事らしいが文明人とヤマト人でクラスが別れている。
この学校に文明人自体はあまり居ないのだが、実質的支配者として君臨し、ヤマト人である学長でも手を焼いている……
「って事で合ってます?」
「うん、バッチリね。」
今発言したこの人が学長、名前はターミリアン。
日本語を理解していて、ヒロさんと古くからの友人。
背が俺より低く、小太りだ。
「で、問題なんだけどハルちゃんがさっき文明人やっつけちゃったでしょ?もー後始末大変なんだから。」
「すみません……」
「ま、スッキリしたからイイけど。僕らでも手が出せないから彼らやりたい放題でね。」
「でも、彼女放っておいたら死んでましたよ?それで良いんですか?」
「この世界では当たり前なんだ。」
「……」
「だからこそヒロは君をここに寄こしたんじゃないかな。」
「えっ?」
「さ、もうすぐお昼になっちゃうよ?クラスに行って自己紹介してきなさい。言葉は大丈夫?」
「一応練習しましたけど……それしか言えません。」
「ハルちゃんならきっと大丈夫。困ったらまたここに来なさい。今度は入る時全力出さないでね?門番が可哀想だから。」
「了解です。じゃ、行ってきます。ありがとうございました。」
「バイバーイ。」
……
「ふっふっふ、面白い子を連れてきたじゃないか、ヒロ。」
……
……
「良い人だったな。」
『ええ、親切でしたね。ハル様、教室はこちらです。』
「ここか、ちょっと緊張するな。」
『ハル様、ファイトっ。』
「……失礼します。」
教室に入るやいなや物凄い視線を感じる。
転校生だもんな、そりゃそうだ。
人数は50人くらいいるのかな。
で、この目の前にいるねーちゃんが担任か?
「学長から聞いてますよ、ホラ挨拶しましょう。皆さん、先程言った転校生です。」
「えー、転校生のハルです。訳あって言葉がまだうまく話せません。聞き取りは問題ないので気軽に話しかけて下さい。宜しく。」
深くお辞儀をした。
ガヤガヤと生徒達の談笑が聞こえる。
[なんだ2文字かー。 滅茶苦茶可愛くね? なんで話せないのかなー。 やべー可愛い。]
言いたい放題だな。
2文字ってなんだろう、あとでサクラに聞いてみるか。
「皆さん、ハルさんと仲良くして下さいね。ではお昼休みにしましょう。」
そう言うとチャイムのようなメロディが聞こえてきた。
この辺はどの世界でも共通なんだな。
『ハル様、完璧です。私感動しました……』
「大袈裟な。そうだ聞きたいことが──」
「あのっ、さっきはありがとう。」
あれ、この子……確か名前は
「ルイ?」
「覚えてくれてたんだね、ありがとう。」
「……」
「……」
いかん、会話にならない。
とりあえずニコニコしとくか。
「あっ、そっか言葉が上手く言えないんだったね。」
そうなんです……
ジェスチャーならいけるかな?
そう思い腹が減っていた俺はお腹を擦った。
「……お腹空いてる?一緒にご飯どうかな?」
「うん。」
……
……
ルイが連れてきてくれたここには飲食店がズラリと並んでいる。
学食の域を超えているな、これ。
「ハルさん何食べる?」
色々あって迷うな。
がっつり肉食べたいけどどうなんだろう。
『ハル様、ここはひとつ女性らしく』
(そうだな、そうするか。)
色々と悩んだがサンドイッチみたいな物と紅茶で済ますことにした。
「ハルさん、今日は助けてくれてありがとう。学長から連絡が来て私にも家族にも報復はないから大丈夫だって。」
報復……そうか、あんだけ蔓延ってるんだから普通に仕返ししてくるハズだよな。
って事は助けた気になってたけど取り返しのつかない事になってた可能性が……
「ごめんなさい。」
「なんでハルさんが謝るの?ハルさんは悪くない。悪いのは……ここじゃちょっと言えないね。」
そう言って彼女ははにかんでみせた。
なぜ彼女が狙われたのか。
色々と聞きたいことがあるが如何せん言葉が分からない。
「でもハルさん凄いよね。あんな雷見た事ないよ?同じ2文字なのに私とは大違い。」
2文字……
『ハル様、この世界では名前の文字数でその者の身分が別れていて、1文字から8文字まであります。」
(へー、そうなんだ。)
「それってもしかしてオーベイ?凄い……私初めて見た。」
「ん?」
『私の正式な呼び名です。世界で10台ほどしかないそうです。』
「ほえー……」
『私はハル様のオーベイ、ハル様にサクラと名付けてもらいました。ハル様は少々特殊な生まれで今日初めて外の世界へ出てきました。ですので言語が少々不慣れで、世界の情勢を全く理解していません。』
(結構言うね。)
『ですがそれ故にルイ様をお助けしたのです。私はハル様を昔から見てきました。ハル様はとてもお優しい方。どうかハル様を宜しくお願いします。』
(ん?昔からってどういう事?)
「ハルさんの事が本当に好きなんだね。こちらこそ宜しくお願いします。」
『他の方には私の存在は秘密にして下さい。ハル様が狙われてしまいますので。』
「うん、分かってる。大丈夫だよ。」
話せないとなんだか置いてけぼりをくらってる感がスゴイな。
「今日ね、あの人達に言い寄られたんだ。それでキスしようとしてきたから思わずビンタしちゃって……そしたら報復で狩りの授業の対象にされちゃって。だから私が悪いの。」
(……サクラ、ルイに───────って言って。)
『ルイ様、ハル様からです。ルイは悪くない。これから何かあったらすぐ私に言って。何回だって私が守るから。』
「ハルさん……」
(────)
『それからハルちゃんと呼んで、だそうです。』
「うん、分かったハルちゃん。」
「ルイ。」
「ん?」
「ルイは友達。」
「……うんっ!」
学校で友達一人出来ました。