6話『進路の悩み』
春乃は難しい顔で対峙していた。机の上には一枚の紙。夏休み前に渡された進路希望の紙。
春乃はとりあえず、偏差値が、平均の学校、低い学校と三校挙げた。どれも春乃と『仲のいい友達』が行こうかと考えているところ。春乃としては知っている人が多い学校へ進学したいと考えていた。それが不純であるということも同時にわかっている。けれど知らない人の中で、一から友達を作っていくということに不安があった。春乃の学力であれば選択肢は広い。行けるなら上に行きたい。
でも友達が……一緒に行こうって。
春乃は悩んでいた。仲のいい友達と別の道を選ぶということは友達を裏切ること。
兄、晴太の通う学校は春乃の通う中学の生徒も多く進学先に選ぶ、偏差値は高くもなく低くもなく。でも、兄妹で同じ学校……。
「私、どうしたらいいんだろ」
春乃は欠伸をして、手元の紙をクリアファイルに戻した。焦って決めることはないと先生に言われた。
ブブッ――机の隅に置かれたスマホが春乃の悩みなど知ったことではないと、振動と同時に通知のポップアップを知らせた。トークグループの通知。
液晶には推している男性アイドルの画像。高校三年生らしい。爽やかなイケメン風の、いかにも年頃の女の子が好きそうな見た目だ。
結局半年後の将来設計も浮かばず、寝たのは午前二時を指そうとしていたころ。