39話『???』
「いえ、大丈夫です。あと最後に、ひとつだけ……」
「なに?」
「先輩。私、アイドル辞めるかもしれません」
「……知ってるよ。だから告白したんだ……。見たよ画像、あれって」
「……ふふ」
磐木はあきらめたように微笑む。けれどそれはどこか決めたような笑顔だ。
「私の、初恋の相手ですよ」
「でも、うちの事務所、明確には恋愛禁止してないよね」
「まぁ、バレないようにって念を押されましたね」
「バレたから辞めろって?」
「まぁ、そういう決まりなので」
しばらくの沈黙ののち、東吾は訊く。
「で、俺に頼みたいことって何?」
「私、真面目なんで、せっかくアイドルやめるなら真面目な真剣な熱い恋がしたいんです……だから見定めてほしいんです、彼が、私にふさわしいか。私のことを真剣に想ってくれた先輩なら見定めて、くれますよね」
「……具体的には?」
「私と村川くんの仲を邪魔してください。私は頃合いを見て想いを……伝えるつもりです……勇気が、あればですけど」
「なんの意味が?」
「恋愛には障害が付きものなんじゃないんですか?」
苦い顔をしながらも承諾した東吾と別れた夜。
「こまるんだよねぇ、ほんとに。次回のライブがラストライブ、卒業ライブになるから、自分の口でメンバーに言えるか? 言えないならこちらから伝えよう」
「いえ、大丈夫です。私の口から伝えます……」
磐木は震える脚を叩いた。やけに明るい廊下は遠く、レッスンルームの扉を前に呼吸を整える。細長い小窓から覗くルーム内はピリッとしていた。
私が規約を破ったことをすでにみんな知っている。
けど、優しかった、口ではとても優しく言ってくれる。
泣いてもくれた。その涙の意図はわからないけれど。今は考えないで、素直に表面だけを汲み取ることにした。
「ごめんね、ほんとうに、ごめんね――」
卒業ライブは十二月二十四日予定。




