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僕のクラスの不登校が実はアイドルだった!  作者: M.H
二章 愉快な先輩たち
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31話『予兆』

 昨日のことはすべて夢だった。そう絶望的な気分にさせてくれる月曜日の朝。


 月曜日が悪いわけじゃない、日曜日が休みなのが悪い、月曜日も休みに……。そうくだらないことを考えられるほど頭は覚め、晴太は歯を磨いていた。


 じっと鏡から視線を感じる。春乃はむすっとしていた。いつもの事。晴太はいつものように洗面所を抜けようとした。


「別にいい」


 春乃は晴太がいるにもかかわらず、クリアピンクの歯ブラシに手を伸ばした。


 そして春乃は晴太が隣にいるにもかかわらずシャコシャコ音を立て始めた。


 あるひとつの考察が晴太の脳裏に浮かんだ。もしかして春乃は寝ぼけていて晴太のことを有名若手俳優と勘違いしているのではないかと。そんな考察で腑に落ちた晴太だった。


 晴太は一足先にうがいをしてキッチンへといつも通り向かう。


 いつも通りの時間にテーブルについた春乃と食卓を囲み、晴太は洗い物をしようと袖をまくる。


「ごちそうさま」


「何してんの?」


「見てわかんないの」


「さぁ」


「手伝うよ」


 なんという事か春乃は自分が食べた皿をひょいと持ち上げ、洗い始めた。晴太は心配そうな顔をして春乃を見る。


「なぁ……何かあったのか? 心配事か? お兄ちゃん、聞くぞ?」


「別にそんなんじゃないし……あーもう! いいでしょなんでも、ただ手伝いたくなっただけ」


 さっさと手早く洗う春乃を見て晴太はひそかに、今日は雨かもなぁ、傘持ってかないと、と思ったのだった。


「それはたぶん反抗期が終わったんじゃない?」


「磐木は反抗期とかあった?」


「……それ、きくのダメだよ? でもうち両親甘い人だから、反抗したいな、って思ったことはないかな」


「そっか」


 晴太の反抗期は小学生くらいの頃、でも両親は仕事が遅く文句を言っても適当にあしらわれそのうちに反抗期は過ぎた。代わりに妹、春乃の反抗期は長かったと思う。常に不機嫌そうで、親と目が合ったら速攻でバトル。一方的に文句を言うだけ。「じゃま」「メシマズ」「近くにいないで」等。


「村川くんは? どうなの反抗期。真っ盛り?」


 楽しそうな顔で訊く磐木。『ダメ』なのではないのだろうか。


「きくのダメなんじゃないの?」


「それは女子限定です」


「はぁ。反抗期はないかな」


「へー、両親甘い人?」


「どうなんだろ」


「……?」


 磐木はどういうこと? と首を傾げる。


「親とあんま話さないから喧嘩とかしないんだよ、だから反抗するにも反抗できないでしょ」


「なるほどね、兄妹喧嘩は?」


「毎日一回は喧嘩。でもそんなん挨拶みたいなもんだよ」


「えー、挨拶が喧嘩? なんか面白そう」


「磐木って兄妹とか居る?」


「まぁ、姉が。けど年が離れてるから喧嘩はないかな……ちょっと憧れかも」


 磐木の姉、さぞかし美形なのだろうと晴太は想いを馳せてみる。チャイムが鳴り授業が始まる。


 お昼になり、一時的に学業から解放された生徒の喧騒が校内には満ちていた。


 浮かれた空気に水を差すように催した晴太はトイレへと駆け込んだ。


「おまたせー……」


 晴太の机には二つの弁当箱、磐木の弁当箱は蓋を閉じていた。


「磐木ならさっき先輩と出てったけど? それも! あの『皇帝』とな」


 ニヤニヤと楽しそうな男子生徒から情報提供を受け、晴太はしばらく席で待っていた。それから約十分、晴太は「こんな学校にそんな強そうな存在があるのか」と思いながら待っていると、磐木がいつもと変わらぬ顔で戻ってきた。


「やー、ごめん。もうこんな時間だ早く食べないと――あ」


 磐木はへらへらとしながら席に座り、さっと掴んだ箸を指から滑らせた。カランカランと箸が跳ねる音が教室に短く反響した。


「おとしちゃった、洗ってこないと……」


「何かあった?」


「――え! な、なにもないない、何もないよ! 洗ってくるね!」


 磐木は頬に手を添えてパタパタと走って箸を洗いに行った。

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