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僕のクラスの不登校が実はアイドルだった!  作者: M.H
二章 愉快な先輩たち
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26話『春乃は深夜に悩む』

「ふわぁ~……」


 春乃は口元に手を添えてあくびを漏らした。


 ようやく学校が終わると期待を持ち始める週末ももはや目前の木曜日。


 いつもあくびは出るのだが今のあくびは本当に寝てしまいたくなる時のあくびだった。


 授業の進みは遅く、すでに春乃は習得済みだった。聞く必要もない授業を真面目に聞いて時間を潰すのはもったいないと春乃は思いながら教科書をめくり、少し先の範囲を解き始めた。


 そんな春乃はひそかに塾に通いたいとか思ったりしていた。勉強は嫌いではない。親だってお金は出してくれる。知らないことを知るのは好きだ。遊びでも勉強でもなんでも。けどそんなことを口で言うのはなんだか恥ずかしくて言えない。そして夜中のことを思い出して熱をもつ。


 ――お兄ちゃんがいるから。


 けど残念なことに晴太はそんな言葉を聞き取ることはなかった。


 実はまだ春乃は進学先に悩んでいた。すでに夏休みも終わり、春が来て、冬が来て、受験が来る。月にしておよそ五か月。それだけしかない。


 進路担当の先生に勧められるのはもちろん首都圏域トップの学校。無謀な挑戦に思えるが手を伸ばせば届いてしまいそうだと春乃は思っていたりする。


 あとは両親と要相談。春乃は進学の話を一切両親に伝えていない。両親曰く好きにしたらいいとの事。


 そう考えているうちに授業は終わりを迎えた。


 ホームルームで進路系の話をしていた先生の話はほとんど聞いていない春乃。


 放課後、呑気に遊びの約束を交わす声が飛び交う教室内。ようやく解放されたとばかりに春乃は腕を伸ばす。


「春乃ーまたねー」


「あーうん。またねー」


 声の方に適当に反射的に手を振り返す。ちょっと前まで『仲の良かった友達』春乃は彼女らのために夜まで悩み、大して重要でもない進路調査の紙を前に呻いていたのだ。中学時代の友達なんて人生に影響など与えない。足は引っ張ってくれるが一緒に肩を並べて進むことはない。ありえない。


 きっと勉強が苦手な彼女らは今からカラオケやら、合コンやら行って、しまいには進学先に底辺高校を選び、高校についての文句をべらべらとしゃべって自己責任を取り巻く社会に責任転嫁するのだろう。春乃は複雑な心境になりながらカバンに教科書とノートを突っ込んだ。


 邪魔がなくなったんだ。むしろ喜ぶべきじゃないかと春乃は言い聞かせる。


「ね、ねぇ」


「なにー?」


 春乃がカバンを持ち上げたところで話しかけられ、肩の力を抜いて振り返る。


「べ、別に用事とかじゃないんだけどさぁ……し、進路決まった?」


「仮。だけどね一応決まったよ? それがどうかしたの?」


 彼は同じクラスの男子生徒。部活は確か野球だった気がする。もしかしたら違うかもしれないけど。春乃は彼、菊池管の坊主頭を見て思う。


「あ、えっと……そ、そうなんだ! どこ行くの? あ! いや、別に誰かに言いふらしたりするわけじゃないから! ほんと、ただ俺が個人的にー聞きたいだけっていうかー――」


「菊池! 何してんだよ! 部活遅れたら俺たちも怒られんだよ!」


「わ! わりぃ、今行くって! えっと……」


「行かなくていいの?」


「あ……わるい、この話の続きはまた今度」


 春乃はでかいリュックをもって教室を出て行った菊池をしばらく見届けた。


「続き。あるの。その話……」


 男子。バカだなぁ。と春乃はうんざりと思う。うるさいし。お兄ちゃんとは大違いだ。


 そう思いながら春乃は窓の外に広がる空に目を向けた。


 お昼ごろまでは太陽を見せていた青空には、分厚い鈍色がかかっていた。


 空は今にも雨を降らせようとしていた。



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