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僕のクラスの不登校が実はアイドルだった!  作者: M.H
二章 愉快な先輩たち
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18話『鶏・卵』

 そして放課後。磐木はレッスンのため不参加。律儀に参加してしまったためはじまった料理研究会。今年も『部』になれなかった同好会。きっとこの学年一杯で潰える同好会だ。


「さて晴太君、いったい私に何を教えてくれるんだ?」


 ワクワクと瞳を輝かせて伺う志良。彼女は両手に包丁を持っていて怖い。それとなんだか近い。


 晴太は横にそっと離れ、感情を殺してたんぱくに答える。


「料理」


「それは知っている! 何を作るのかと訊いているんだ……バカにしてるな?」


 志良はむすっと憤りを示し、包丁をスローイング……せずに置いた。


「まぁ、まずは卵焼きでも作りますか。これさえ上手に作れたらなんでも作れるっていうくらいだし……それにしても卵しか食ってないな」


 次に晴太が目を向けると志良は白色と茶色の卵を交互に指に挟んで大道芸のように構えていた。ジャグリングでも披露してくれるのだろうか、ならばやめてほしい、僕は今すぐ帰る。


「とりあえず危ないから置いて」


「……すまない――あ」


「人の言うこと聞いてもこれか……」


 平らな調理台に置いたせいでコロコロと自分勝手に卵は転がり「人間に食われるくらいなら!」と投身を選んだ。卵のくせして立派に自我をもったらしい。


 さすがに落ちてしまった卵は食べられない。


「気にしたって仕方ないですよ、卵なんて僕だって落とすことあるんですから」


 最後に落としたのはいつだろう、たぶん小学生くらい。


「つい……興奮してしまった……晴太君が居るからかもな」


 うつむき加減にぼそぼそ言う志良。よく聞こえないが一応反省しているのだろうと晴太は解釈した。本気で学びたいなら正直料理教室にでも通った方が何倍もいい。


「とりあえず卵を割って……」


「ふん。玉の扱いにはなれている。この程度造作もない」


 志良は片手で卵を割る。器用なものだと感心するが肝心なのは味だ。ドヤ顔で褒めてほしそうだが褒めない。褒めたらつけあがるだけだ。


 卵を四つ溶き、目の前に置かれた砂糖と塩。


「先輩は触らなくていいです。見てください、目で覚えてくださいね」


「私がやらないと意味がない――」


 激辛ソースとかあとよくわからない言語のパウダーを指に挟む志良に晴太は叫ぶ。


「――いうこと聞いてください」


「……わかった」


 食い下がるかと思ったがおとなしくしてくれた。晴太は砂糖と大匙二杯、塩を小さじ一杯。そして混ぜる。あとは焼くだけ。そこから先は志良に任せる。そもそもの話、志良に足りないのは味覚であって調理の技術は足りている。焼くのだってうまかった。しっかり均一な厚さで巻かれていく卵焼き。


「これでとりあえず完成」


「では味見を……そうだったな、まずは私が……」


 一応晴太の言葉を覚えているらしい。


「うん、先輩が作ったとは思えない味だ。もちろん味付けは僕だからだな」


「……」


 そんな晴太のクソほどな感想に志良は反応を示さない。怒ったかと心配になる晴太はそっと顔を覗くと。


「うぐぅ……ぐず」


 泣いていた。


「先輩……」


「私が、こんなにおいしく作れるなんて――!」


「まぁ、とりあえず、絶対にアレンジとして余計なスパイスは加えない。そうすればとりあえず人が食べられる味にはなりますよ」


「うむ、心得ておこう。それで次は何を教えてくれるんだ? 今の私は知識を欲している!」


 やる気に満ちた志良は完全下校の時間まで帰らせてはくれなかった。仕方がないので夕食はここで作った。


「ねぇ、なんか最近卵料理多くない?」


「世間は空前の卵ブームなんだよ」


「それどこの世間の話?」


「学校だな」


「高校って不思議だね」


「楽しみだろ?」


 晴太の言葉に春乃は「鶏に呪われてそう」とそっけなく返す。

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