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僕のクラスの不登校が実はアイドルだった!  作者: M.H
二章 愉快な先輩たち
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17話『絆・友情 そして愛情』

「どれだけおいしそうな食べ物があっても絶対に……口に入れたら駄目だからな? 昨日みたいに倒れるぞ」


「う、うん……でもなんか申し訳ない気持ちだよ」


 しみじみと優しい女の子だと晴太は思う。口に入れた瞬間吐き捨てる自信がある晴太は心がないのかもしれないと不安になり胸に手を当て、熱と鼓動を感じて「僕には人の心があるんだ」と安堵した。


 そしてそっと戸に手をかけて横にガラガラと引かれていく。


 晴太は目が合った。涙を湛え『助けて』と口が動く。心臓が掴まれたような苦しさを感じた。


「失礼しま――した……」


 戸を勢いよく閉じた。晴太は大事に至る前に激しく閉じた。


「ど、どうしたの? 顔色悪いよ」


「帰ろう。ここにいたら僕らまで共犯者にされてしまう! 早くここから――」


「おや、晴太君。まさか二日連続で会いに来てくれるなんて、とうとう答えは出たという事かな……」


 訳の分からないトラウマを掘り返すように言う志良はおや? と磐木に視線を向ける。どうやら磐木は逃げ遅れたらしい。


「磐木を食うつもりですか! あのひとみたいに!」


「……食う? 私はカニバリズムになど興味はない」


 志良はさもおかしそうにハハとわらう。食べるなら脳みそでも食べたらいい。君の脳みそを食べたい。まるでサイコパスになった。それにこんな腐った脳など要らない。


 結局晴太と磐木は調理実習室に入り、誤解が解かれた。


 どうやら晴太が見たものは志良のクラスメイトの女子生徒で、生着替え中だったらしい。油や塩を塗り込んで油で揚げるのかと思っていた晴太は一安心。


「へー、先輩のクラスは食事処ですか……は?」


 卵とツナとトマトとチーズでおかずを作っていたところ、ぺらぺらと話していた志良の声を右から左へと流していた晴太は聞き逃すことが出来なかった。


 ちなみに晴太のクラスの出し物はお化け屋敷だった。


「ちなみに誰が調理担当で?」


「もちろん私だが?」


 晴太は顔を強烈にしかめた。レモンを始めて食べた赤ちゃんよりひどい形相だ『卍』みたいだ。すると志良は心外そうに息を吐き、箸で磐木お手製の卵焼きを持ち上げて頬張る。


「――これはなんと美味な……で? なんだ、私が料理できないとでも? 失敬な」


「いや! 出来んでしょ!」


 そう本気で晴太が言うと志良は薄々わかっているよ、みたいな悟った顔を見せて頬杖を突いた。そのはかなげな表情はどこかのバーにいるOLのような、妖艶雰な囲気を醸していた。ちょっとドキッとした晴太だった。けれど卵焼きを頬張ると居酒屋に一転した。


「実は最近、思うようになったんだ、もしかして私は料理下手なんじゃないか、ってな」


 気だるそうに息を吐く。そして卵焼き(だし巻き)を口に運んだ。やはり居酒屋……。


 晴太は「何をいまさら」と小さくこぼした。器用にフライパンを前後に動かし、オムライスの形を整えお皿に載せた。切ってみると断面からトロッと半熟がこぼれだす。


「でも先輩の作ったケーキとか外見は良いじゃないですか!」


「ありがとう、磐木君。でも大事なのはそこじゃない……中身なのだよ」


 晴太は志良のモルモットにされていた「影で震える先輩」に切り分けたオムライスを渡してみた。


 湛えた涙を指で拭い、弱い笑みを浮かべ受け取ってくれた。なぜかメイド服だった。ゴシックなスカートから流れる太ももとふくらはぎ、とてもイイと晴太は思った。


 あまり見ていると立っていられなくなりそうだったので早めに着席した。


「とりあえず先輩は自分の味覚を使う方が良いと思いますよ、人の味覚を実験台に使うのは絶対に、やめた方が良いです。そのうち事件に発展しかねない」


 晴太は大きめの弁当箱に押し込められた二つの卵焼きに箸を伸ばし、甘い方を口に運んだ。磐木の卵焼きは絶品だった。見た目もよし、味もよし。磐木が作ったという付加価値のおかげで200パーセントましに感じる。けれど半分以上この先輩が食ってしまった。


「それで晴太君。お願いがあるんだ。この私に、料理を教えてはくれないか!」


「……先輩……」


「なんでもする!」


「……先輩、人の言うことに耳を貸さないじゃないですか」


「貸す! カラダも貸そう! ……いや、捧げても構わない……」


 晴太は助けを求めるように隣に座る磐木を見た。角度的に視界に膨らみが……。すぐさま視線を首辺りに持ち上げた。


「村川くん、先輩は成長したいんだよ! その手助けを出来るのは村川くんしかないんだよ!」


「なんでそっち側なの? 毒でも盛られた?」


「盛られてないよー」


「残念ながら私でも毒は仕入れられないよ……」


 晴太は改まって、割と真剣な顔つきの志良に対峙する。整った大人の女性という顔立ちは意外と怖く、先に折れたのはもちろん晴太だ。


 志良が悪意を持っているわけではないことを晴太はしっかりと知っている。


「わかりました、教えますよ……けど、絶対に言うこと聞いて」


 ガシッと謎に握手が、一方的な絆が交わされた。



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