16話『スカートの長さは』
志良衣澄。三年三組。身長158センチ。凛と整ったシャープな顔立ち。出るところは出ている引っ込むところは引っ込んでいる大人なスタイル。容姿端麗、頭脳明晰。一見して非の打ちどころもなければ、そもそも近寄りがたい雰囲気のある生徒。
「うわ、また志良が勝手に……」
スッと立ち上がった志良を見て男子生徒のひとりがそうつぶやく。
二週間後に控えた文化祭の出し物についての話し合い。
現在、志良が在籍するクラスでは出し物についての話し合いが行われていたのだが、なかなか案が出ず進行が滞っていた。
司会進行も苦笑いを浮かべたまま思案していた。
そこで唯一立ち上がったのが志良。この無駄に過ぎる時間に痺れを切らしたのだろう。
第一候補か第三候補まで『食事処・甘味処』と書いた。文化祭風に言うならカフェとかそういった感じになるのだろう。
「これで文句はなかろう、文化祭と言えばこれに限る――うむ……女子はメイドのコスプレでもしたらいいさ……もちろん私は着ないのだが――」
話し合いに関係ない言葉を交わしていた女子生徒は「チッ」と、肘ついて寝ようとしていた男子生徒はしっかり目を開いた。
「よしそれで行こう!」
「どうせこれ以上の案は出ないんだ!」
男子からあがる声に志良はひとつ満足に頷き、時雨三兄妹の長女である時雨円華は恐る恐る多数決を取る。
「では今から――」
「――決まりか。ということだ委員長」
カウントを取ろうとした円華は食い気味に言う志良に腰を引く。
「あ……えっと、とりあえず多数決を……」
男子生徒が七割ほどの教室。多数決の結果は言わずもがなで賛成が上回る。
相変らず教卓の隣でフンと満足げに鼻を鳴らす志良だった。ちなみに彼女は委員長でもなければ、この文化祭を陰から支える実行委員会でもない。
志良はこうして三年三組の男女間に亀裂を作ったのだった。
とはいえ、亀裂なんて大したものではない。一ヶ月もたてば自然と修復されているものだ。「ふつうは」だけど。志良が一年の頃、あらぬ噂を流されたが……今ではそのことについて言う人はいない。
「志良さん」
「ん?」
角席の志良に語気を強めて話しかけた女子生徒。志良は本から顔を上げて声の主をしっかりと見る。
「コスプレとか何考えてんの! 女子は皆『嫌』って言ってんの」
志良は拳を顎先に当て、視線を足元へシフトする。つやつやと白い太もも。折りに折りミニスカート状態。そんな格好が出来るのになぜ嫌なのかと志良は考えた。
「君はなぜスカートを短くする?」
「はぁ? 何いきなり。そんなの、こっちの方がかわいいからに決まってんじゃん」
志良はニヤリ笑い、ガシッと女子生徒の肩を掴んだ。
「なら、もっとかわいいのがある……」
困惑しながらその手を振り払った女子生徒はガルルと威嚇するのだった。
その挑戦を受けて立つと志良は目を眇めた。




