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僕のクラスの不登校が実はアイドルだった!  作者: M.H
二章 愉快な先輩たち
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14話『卵』

 磐木が目を覚ましたのは約四十分経って。いきなり吐き気を催した磐木に袋を渡した。黒くて中身が見えないのが幸い。つられて吐きたくなってしまう。


「大丈夫か?」


「お星さまが……」


「結構重症だな。時間、大丈夫か?」


「うーん、一応遅れるかもしれないって連絡しておく……はぁ」


 とりあえず水を飲みリフレッシュ……とはいかない。いまだ味覚障害が残っている気がする。山椒強力すぎる。


「でもすごい、未知の体験した感じ」


「自分が食べられるものを作れ、ってんだよな」


「もしかしたら私たちとは違うものを食べて――」


「――いいや、味覚はしっかりあるって……」


「あ、そうか……」


 それから磐木は何かを納得したように立ち上がり、よろめきながらも昇降口でローファーに履き替える。


「肩くらいなら貸そうか」


「いいよ、大丈夫」


 校内を走っていた小島が運悪く絡んできた。そして近所の面倒くさい老人風に言う。


「お、これはこれは。部活も用事もない生徒が随分と遅い時間におかえりたぁ……さては~イイいことでもしてたな?」


「楽しいこと……ね、今度お前にも味わわせてやるよ、親友のよしみでな?」


「マジかよ! やっぱ、持つべきは親友だな」


 爽やかな笑顔で肩を叩き、ランニングに戻った小島。バス停に到着。


「とりあえず、あの先輩に誘われたら絶対逃げる。捕まったら人体実験待ったなし」


「でもほら、悪い人じゃないんだと思うよ? 祝ってくれるって言ってたし……それに! あんな大きなケーキ作るの大変だよ、うん」


「磐木はケーキとか作るの?」


「んー、でも最近は作ってないかなぁ」


「ほう、そうなんだ」


 磐木が作ったケーキ。食べてみたい。絶対おいしいに決まっている。先輩と比べたらすべてがおいしく感じる。たとえ妹の手料理でも。


 バス停でバスが来るまで他愛のない会話をする。


「じゃ、明日卵焼きね!」


「おう、卵焼きね」


 新しい暗号みたいだ。卵焼き……かわいいじゃん。今日の晩飯は卵焼きで決まりだ。


 晴太はキッチンに立ち、さっそく夕飯の準備を始める。


 ようやくまともになった味覚は水を飲んで『水』と喜んだ。


 そしてできたのは親子丼、トマトオムレツ、卵の野菜炒め、卵スープ。ついでに半熟ゆで卵をめんつゆに沈めて味付け卵。


「何に目覚めたの?」


「卵の可能性に気が付いたんだよ」


「まぁ、確かに割となんでも卵って合うけど……ことごとく卵だね……好きだからいいんだけどさ……飽きるよ」


 春乃は基本的に雑食だからなんでも食べる。


「どうだ、卵料理は」


「おいしい」


「だろ? やっぱ卵最高だよな」


「……卵を信仰する宗教なんてあるっけ? ちょっと飽きてきたかも」


「さぁ、知らん。というか信仰したら卵食えないんじゃないか?」


「さぁ」


 春乃は卵スープがお気に召したようでお代わり。そんでもって「ふとっちゃう」とか言っていた。春乃は全体的に細い、もう少し肉をつけないと、と晴太が言ったとき普通に怒られた。


 それからいつものように適当にテレビなんかを見ながら食器を洗っているとメールが来た。時刻は二十一時ちょうど。アプリの通知だろうかと思ってポップアップを見たらなぜか咳込んだ。肺炎かも知れない。メールの主は磐木だった。


『こんばんは ごめんね遅くに(泣) 卵焼きの味付けは何がいい? だしかお砂糖(鶏・ひよこ・卵)』


「おすすめのがいいかな」


『おすすめ? 私は甘い方が好き』


「じゃぁ、甘いので」


 ちなみに春乃は弁当に入れるなら甘いのにしろとうるさい。例外だけどツナなんか入れてやるとその日一日上機嫌、地雷を踏んでも不発に終わる。


 晴太はピクニック前日の小学生のように落ち着きがなく夜も眠りにはなかなかつけなかった。


 理由は大体磐木なのだが、背中に感触、手に感触。仕方がない、お世話になるか……。しばらくして晴太はぐっすりと眠りに落ちた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ようやくまともになった味覚は水を飲んで『水』と喜んだ。 [一言] ヘレン・ケラー思い出した
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