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僕のクラスの不登校が実はアイドルだった!  作者: M.H
一章 アイドル
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11話『間接キッス?』

 晴太はこう思った「二人で一緒に教室に入るとなんか、それカップルっぽくね!」と。


「なになにどういう関係なの」とかそんなことをひそやかに話されているのかなとか思うとなんだかわくわく愉悦感。


 ホームルームが丁度良く始まり。特に長ったらしい話もなくすぐに終わった。そのおかげで一限が始まるまで少し時間がある。


「ねぇねぇ磐木さん? 磐木さんと村川君ってどういう関係なの?」


 藪から棒に話しかけてきたのは同じクラスの櫻木舞彩。割と顔立ちの良い女子だ。磐木とあまり話していた印象はない。そんな彼女の後ろから見る生徒たちの好奇の視線。


「私と村川くん? 友達だよ? ね」


 優しい笑顔を向けてくる磐木にデレデレと答えてしまった。鼻の下とかきっと伸びていると思う。


「お、おう、そうだね、そう、友達 あはははは――」


 呂律が回らない。しっかりしろ、これじゃそこらの隅にたまる埃みたいなオタク以下だ、好きな物や事になると饒舌にしゃべられるのがうらやましい。


「友達? ただの?」


 顎の先に人差し指を添えて首を傾げる女子生徒に、


「うん! 友達!」


 満面の笑顔でそう言い切ってしまった磐木。それは少し晴太には残念だった。異性間で友達と宣言されるのは明らかな距離置き。絶対これ以上来ないでという……超えてはいけない線。ただ天然が現れただけだと言ってほしいと晴太は願う。


「ふーん、そうなんだ。友達…………わかった変な事訊いてごめんね~」


 約一分、憮然と起立硬直していた櫻木は納得したような顔をして、そっち側の生徒たちの方へと戻っていった。けれど何だろう。この空気は。からかったりするような空気ではなくてもう少し別の……。結局よくわからず始業のチャイムが響いた。


「何だったんだろうね?」


「……トモダチ……ナンダロ」


「どうしたの? 具合悪い?」


 晴太は晴れ晴れとした笑顔で首を横にゆっくりと振る。


 それから今日も特に何もなくお昼が来た。弁当を広げ、磐木と向かい合わせに。


 その光景はやはり、友達というより恋人同士に見えなくないか? これは友達がやること? 晴太はそう思わない。けれど現実は『友達』という不動の地位をいただいた。


「あれ、本当に友達か?」


「絶対それ以上、あれはきっとそうだ……恋人ってバレたくないから隠してんだ」


 そんな馬鹿な男子の会話が聞こえた。視線を向けるとシュッと体の向きを変え、へたくそな口笛を吹いた。ヒュシューというかさついた唇の音。けどそう見えていたのなら、晴太はうれしく思う。


 けれど噂の渦中の磐木は全く気にも留めず「卵焼きおいひー」と顔が言っていた。きっと十年以内にテレビに出て食リポを任されているはずだ。需要はある。


 特に下心なく、そんな幸せそうな磐木を見ていると怪訝に眉を寄せたのだ。当然晴太は自分が何かしてしまったかと慌てて記憶をめぐる。ムっと閉じた口が開かれた。


「そんな欲しそうに見たってあげないよ。私だって譲れないよ!」


 ムスッと上目遣いに抗議の声を上げたがかわいく感じてしまう。怒る仕事には向いていなさそうだ。


「おう、あれが恋人の軋轢――」「修羅場か」


 またさっきの男子だ。


 睨みを利かせるがそのころには背を向けていた。


「……そんなに。欲しいの?」


 卵焼きを半分ほど食べて、口の中から無くなってそう訊く磐木は申し訳なさそうな顔を浮かべていた。どうやら晴太が怒ったのだと勘違いしたらしい。


「いや、別にいいよ」


「……ほんと? おいしいんだよ?」


「……でも、ほら……食べかけだから……なんというか」


「あ、そういう事かごめんね、汚いよね」


 磐木は口を堅く結んで少し悲しそうにうつむいた。


「サイテイダ」「アレハリエナイ」「イワキサンカワイソウ」「カンセツキスッッ――」


 なんだろう、なぜなのだろう。晴太はいつの間にか矢面に立たされていた。グサリと黒い感情が投げられている。


「ち、違うんだよ。そういう事じゃなくて…………じゃぁ、ウインナー食べる? 好きだったよな確か……」


 数名の生徒の視線の中。晴太の言葉に磐木はゆっくりと顔を上げて言う。


「ウインナー……いいの?」


「いいよいいよ、ほら、二つでもやるよ」


 弁当を少し押し出し「やるからお願いだからそんな悲しい顔見せないでくださいよ」と晴太は心の底から思う。


 磐木はウインナーを摘まみ上げ、幸せそうな顔をする。咀嚼するたびに無差別にその幸せだという気持ちを振りまくのだった。


 おかげで晴太に向けられた殺意の波動は落ち着きを取り戻した。男子生徒数名も理性を何とか取り返したらしい。みんな泥になればいいのに。


「明日! お礼に卵焼き焼いてきてあげるね!」


「楽しみにしてるよ……ありがとう」


「悔しい」と男子数名がなぜか袖で目元を押さえていた。なんなんだ、アイツらは。何があったんだ、一体。晴太には一切わからなかった。


 ようやく磐木がとてもかわいい女子だと、周りが遅れて気付いたのだ。


 磐木は半分になった卵焼きをパクと食べた。晴太は「食べておけばよかった」と少しばかり後悔した。



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